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前編
39夢 (ショーン視点)
しおりを挟む城の方で凄い魔力を感じ、城へ向かうと浄化し終えていた。外からは見えない様にしていたものの、あの魔力は鋭い者なら気づくだろう。
「これだけの浄化……ハルしかいない。ハルは大丈夫か?」
私は心配し、慌てて国王であるルーデンの元へ行った。すると、そこにはハルやジル殿下の姿はなく、城中が戸惑っている様だった。無理もない。
「ルーデン、ハルはどうした?」
「あ、あぁ、ショーンか。ハル君ならジルが連れて行ったぞ。恐らくギリギリまで魔力を使ってしまったのだろう」
やはりか。ジル殿下が居るのなら問題ないとは思うが……気になる。
「ショーン。ハル君は……何者だ?神の使いか何かか?あれだけ神聖な浄化は初めてだぞ」
「……ちゃんと私の息子だ。だが、もしかしたらハルは神に愛されているのかもしれん。この事が教会側に知られては面倒だ。城の者にも外に漏れないように伝えておいてくれ」
ルーデンは当たり前だと言わんばかりに、力強く頷いた。
「私はそろそろハルの所へ行くぞ。ジル殿下の部屋か?」
「あぁ、そうだ。迷わずに行けよ」
私はルーデンにそう言われ、すぐにハルの元へと向かった。
コンコン
「失礼、私だ」
ジル殿下は扉を開け、中に入るよう言われた。
「ジル殿下、ハルの事で迷惑をかけた。すまない」
「いえ、大丈夫ですよ、それにハルは私の婚約者ですし」
本当にジル殿下はハルの事が好きだな。きっと私よりもジル殿下の方がハルを愛しているだろう。私はどうしても、息子だという感覚が抜けないからな。
「それより、ショーンさん。お話があります」
ジル殿下は改まって私に向き直り、言葉を続けた。
「実は私、昨日はいろいろありまして……ハルを抱いていないのです。今日もハルと過ごしてもいいでしょうか」
「そのいろいろってのを聞かせてくれれば仕方ない。それに、ジル殿下が優先だからな」
ジル殿下は、少し考えると口を開いた。
「あまり詳しくは話せません。ハルとの約束ですから……ただ、ショーンさんもご存知だと思いますが、ハルが寝ている時の魔力について全て聞きました」
……ジル殿下は聞いたのか。確かに私も気になってはいたが、聞く勇気がない。それに、今のジル殿下の様子からすると、あまりいい事ではないのだろう。きっとハルは無意識ではなく、故意的に魔力を使っている。
「そうか。ジル殿下は聞いたんだな。……私はどうしても聞く勇気がない。だから私は聞かない事にする。ジル殿下も、私が気づいている事はハルに話さないでくれると嬉しい」
「それは約束します……それに、きっと聞いてしまったら……ショーンさんはショックを受けるだけでは済まないかと」
そんなにか……ジル殿下が気持ちを隠しきれていない事からも想像はしていたが。どれだけ大きな問題なんだ。
「そう言われると気にはなるな……」
「やめていおいた方がいいかと……それに、私がハルを守りますので、安心して下さい。荷が重いですが、やれる事は全てやります」
そうか……ジル殿下は本当にハルの婚約者なんだな。少し寂しい気もするが、私も子離れする時がくるのか。
「ショーンさん……私はショーンさんとハルの事を認めていますので、ショーンさんとハルがお互いを求めている限り、私にあまり遠慮はしないで下さい。確かに、私はハルを独り占めしたいと思っています。ですが、ハルが悲しい思いをしたり、私との婚約を認めてくれたショーンさんが、辛い思いをするのは見たくありません」
本当にジル殿下は立派だな。これでは私の方が子供のようだ。
「ありがとうジル殿下。私は先に逝くが、ジル殿下が居れば安心だな」
「そんな事はまだまだ先の話ですよ。ハルの為にも長生きして下さい」
「あぁ、頑張るよ」
私はそう言って、ハルの頭を撫でた後、仕事をする為、騎士団に戻った。
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