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~ 二 ~ チーム・ラオ始動!

第三十八話

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 誰かに背中を突っつかれた。

「キャン‼」
 びっくりして声をあげてしまう……少しチビった。

「ご、ごめん! そんなに驚くとは思わなかった……」
 振り向くとボブカット、丸いメガネの少女が立っている。

「エスカフローネさん⁉」

 やはりガスリー家のファミリーカラーである緑のドレスをまとっていた。しかし、デザインはニーニャのモノとかなり違う。それぞれ、メイド達に合わせてオーダーメイドされているのだ。


「同じ年齢なんだし、『さん』付けはやめましょ? 私もニーニャって呼ぶから」

 屈託のない笑顔に、ニーニャは「はあ……」と気の抜けた返事をする。

「今日はお互い頑張りましょう!」

 そう言って手を差し伸べるので、ニーニャも慌てて手を出す。

「あ、はい」

 それにしても、レース前だというのにエスカフローネは普段通りの表情だ。

「エスカフローネさ……は、緊張しないのですか? 私はもうガチガチで――」
 苦笑いのニーニャに、エスカフローネも笑みで返す。

「実は私も――」
「――えっ?」

「もう、さっきから喉がからっからなの。誰かと話をして緊張をまぎらわしたいと思って、知っている人を探していたら、ニーニャの姿が見えたので声かけちゃった。迷惑だった?」

 砕けた表情で話すので、ニーニャも気持ちが楽になる。

「迷惑だなんて、そんな……こちらこそ、声をかけてもらってうれしいです」

「そう? だったらヨカッタ! それにしてもニーニャかわいい! とっても似合ってる!」

 私はどうかな――と、一回りするエスカフローネ。なんか、いつもの落ち着いた彼女と違い、今日は少しテンションが高い。

「とってもカワイイです!」

 そうめるとエスカフローネも満面の笑みを見せる。その表情はやっぱり十五歳の少女だ。


 ドンッ!


「きゃっ!」

 また背中を押されてバランスを崩すニーニャ。振り返ると――

「シュテフィさん?」

 そう、シュテフィ・アウグスト。ニーニャの父親から爵位を奪った家の娘だ。

「知り合い?」
「えっ? ええ、まあ……」
 苦笑いのニーニャ。

 シュテフィはブツブツとつぶやきながら、その場を離れようとするので、エスカフローネが――

「ちょっと、ぶつかってきて謝りもしないの?」
 と怒るのだが、シュテフィはちょっと振り向いただけで、そのまま行ってしまう。

「何? なんか感じが悪い」
 腹のムシが収まらないという表情のエスカフローネをニーニャがなだめる。

「きっと、緊張しているんですよ」

 そう、みんな緊張してるんだ――そう思った時、何か忘れていることに気付く。

(ん? 緊張?)
 少し考えて――

「――あっ!」
「な、何⁉」

「トイレ行くの忘れてた!」
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