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メアリー十六歳

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「メアリー、学校に遅刻しちゃうよ」
「ま、待ってパパ・・・」


メアリーはプラチナブロンドの髪を一つにまとめる。学校には化粧をしていく女性が多いのだが、メアリーのクルリとした睫毛に大きな瞳、そしてピンク色に染まる頬に化粧などいらなかった。


「帰りも良い子で待っておくんだよ」
「・・・もうパパに迎えにきてもらう学生なんていないよ」
「うちのルールはルールだよ、メアリー」
「はぁぁい」


母が亡くなって三年が経とうとしていた。再婚してからも浪費家であった母は、伯爵夫人であった時と同じようにドレスやアクセサリーを購入していた。ある日部屋から母の金切り声が聞こえてきたのを覚えている。


『あなたがもっと稼いでこないから悪いのよ!!貴方の顔が気に入って再婚してあげたけど、本当顔だけだったわ』


そう言って母はあまり家に帰ってこなくなった。暫くして母が異国の愛人と旅行に出掛け、目的地への道中で盗賊に襲われあっけなく亡くなってしまったそうだ。メアリーは呆れて涙も出なかった。



(それからずっとパパと二人きり。でも私はパパさえいればいいもの)


母は闇金からお金を借りていたようで、高そうだった絵や宝石を売り払い侍女や使用人たちに退職金を支払った。なんとかお金を絞りだし、ほどんどの借金を返すことができたのだが、残ったのは二人きりにしては少し広い王都の家だけであった。掃除洗濯は業者に任せており、それ以外の家事はリチャードが行っている。メアリーも簡単な家事を手伝っていた。


「おはよー!!メアリー。今日も愛しのパパのお見送り?」
「おはよう、エレナ。うん、そうなの」


国立ブリスター学園は貴族と平民が平等に学習できる場所である。メアリーの友人であるエレナは商家の娘で平民だ。栗色の髪にセンスの良いバレッタを付けており、赤くセクシーな口紅が似合っている。


「メアリーはいつまでたってもお子さまだもの、パパも心配するのは当たり前ね」
「むっ、もう子供じゃないわ」


平民は徒歩で、貴族は馬車に乗って学校に行くのだが、親がついてくることはない。しかしリチャードはどれだけ忙しくてもメアリーを学校に馬車で送り、下校後も送っていく。きちんと家に送り届けた後で仕事に戻ることも多々あるのだ。



(ほんっと、いつまでも子供扱いなんだから)


メアリーは頬を膨らました。その顔を見てエレナはメアリーの頬を摘まみ、グリグリと動かした。


「こんな可愛く頬膨らますなんてやっぱりお子さまですよぉ~うりゃうりゃ」
「ひゃぁ、ひゃめてよぉ~」


メアリーは身長は140cmで止まってしまい、胸も成長することはなかった。目の前にいるエレナの豊満な胸を何度羨ましがったか分からない。


「ほ~ら、可愛いお人形さん。機嫌直して。キャンディあげるから」
「子供じゃないんだから、飴なんかで釣られないわよ!!」


メアリーはそう言いながら口にほりこまれたスティックのついたキャンディを舐めた。


「あれ、これおいひぃ」
「ふっふっふ、うちの新作のキャンディよ。美味しいでしょう」


エレナに新作であるキャンディの話を聞いていると、強い香水の匂いますが鼻についた。


「あら、よく平民とお友達でいれるわねぇ。さすが平民生まれの父親を持つメアリーさんですわ」


そこにいたのはいつもメアリーを何故か敵視する伯爵家のキャサリンであった。
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