トンネル抜けたら別世界。見知らぬ土地で俺は友人探しの旅に出る。

「心霊スポットに行ってみないか?」

 始まりは大学時代からの友人中野のそんな一言だった。

 何故に心霊スポット?

 自慢ではないが俺には霊感など全くないし、そもそも心霊現象そのものを信じていないし興味もない。
 大学を卒業してからブラックではないけれどもホワイトとも言い切れないそれこそ日本に掃いて捨てるほど存在するグレーな会社に就職し、休日になれば幼なじみである木嶋海斗と共に過ごすか、偶に会う数少ないい大学時代の友人、もしくは同じ会社の知人達と余暇を過ごしたりと山も谷もない日常を繰り返していた平凡な社会人4年生。


 栗田相馬26歳未婚彼女なし。

 それが俺だ。

 そんな俺と──ついでに一緒にいた海斗に向かって放たれた中野総悟の何気ない誘いに、俺はいつものように特に深く考える事なく頷き、海斗もそれに同意した。

 しかし、この時の俺達は知らなかった。

 ──この安易な決断が、人生を左右する大きな分岐点だったという事に──
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