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前篇
交わる(5)*
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「イク、ぅ、いっちゃ、ぅ、から、待っ……ふ」
かくかくと震える指でくん、と髪を引っ張って哀願するも、舌使いはさらに激しくなるばかりだ。
「ね、が……はなし、てぇっ、はなし、でるぅ、あっあ、ぁあ……も、で、ちゃ……ッ」
アレクシスの頭の動きに合わせて、自然と腰も上下にくねくねと揺れてしまう。
これ以上はもう駄目だ……耐え、られない。
「あ……ぁあ……あっ、ぁあ、ァ、……ッ」
視界がチカチカと明滅する。腰もガクガクと痙攣して、天井に向かって高く突き出してしまった。
ひと際大きな音を立てて吸い付かれて、ついに前の前が真っ白に弾けた。
「……ッ──ふ……ん~っ……ぅ、ん」
強烈な吐精感に、右に、左に頭を振る。汗と黒髪がシーツに散った。びゅくびゅくと、吸われている音がする。最後の一滴を絞り取るまで、アレクシスは唇を離さなかった。
伸び切った体が徐々に弛緩し、背後のシーツに全体重が吸い込まれていく。
「は、はぁ、あ……」
うねる舌は最後にちゅくりと音を立て、リョウヤの昂ぶりを心ゆくまで堪能してから、離れていった。
リョウヤはというと、遠くて近い天井を凝視しながら呆然としていた。ぜぇはぁと、全力疾走したかのようなリョウヤの荒い息だけが、部屋中に響き渡る。
出して、しまった。よりにもよって、アレクシスの口の中に。
ひくひくと痙攣する膝の間で、アレクシスが自らの手のひらに、とろりと白濁を吐き出すのが見えた。
手を握ったり、開いたり、無骨な指の先で擦ったりして、粘つく白濁を伸ばしている。手に付着している体液の量からも、半分以上は飲み下したということが見て取れた。
垂らしたリョウヤの白を凝視しているアレクシスには、表情がなかった。ただそれは決して冷たい眼差しなどではなくて、何かを考えこんでいるような顔に見えた。
「のん、だ……の?」
「ああ」
ああ、じゃない、ああじゃ。
けれども快楽の余韻に舌まで痺れているし、とてつもない解放感と疲労感に、指の先を動かすことも億劫だった。
だから一番聞きたかったことをとりあえず、聞いた。
「くるった、の……か?」
「……言うにことかいてそれか?」
今のは、葉巻煙草を吸っている時の表情に似ている。リョウヤも精液の味は知っている。散々マティアスに口に突っ込まれて嚥下させられたし、何よりマティアスにキスされた際に、彼の口内に残っていた自分のものを注ぎ込まれたからだ。
酷い味だった。苦くて青臭くて、たとえ自分のであっても二度と飲みたくない。
「だって、まずく、ない……?」
「酷い味だ」
だろうな。言葉通り、アレクシスはかなり不味いものを飲んでしまったみたいな顔をしていた。一刻も早くウィスキーごと流し込んでしまいたい、なんて思ってそうだ。
当たり前だ。甘さのある蜜液と比べて、精液はリョウヤの味そのものなのだから。
「なんてものを出すんだ」
「いや、俺の……せーじゃ、ねー……」
出したくて出したわけじゃない。それに、離してってちゃんと言ったのに。精液なんて、多少の個体差はあれどどれもクソ不味いに決まっている。アレクシスのだって、そこらへんの野草をかき集めて中途半端に出汁をとった生煮えの汁、みたいな味をしているに違ない。絶対美味しくない、断言できる。
それなのにどうして、あえて飲んでみようなんて思ったんだろう。
霞み始めた視界をぎゅっと瞬かせ、ぽやぽやとした思考のまま、再度問う。
「ね、え、な……ん、で……?」
さっきから胸を舐めてきたり手袋を取って触れてきたり、咥えたりしゃぶったり、挙句の果てには、彼の言う「なんてもの」を飲んだり。
わけのわからないことばかりだ。
「ねぇ」
「……ねえねえと、うるさいな」
かくかくと震える指でくん、と髪を引っ張って哀願するも、舌使いはさらに激しくなるばかりだ。
「ね、が……はなし、てぇっ、はなし、でるぅ、あっあ、ぁあ……も、で、ちゃ……ッ」
アレクシスの頭の動きに合わせて、自然と腰も上下にくねくねと揺れてしまう。
これ以上はもう駄目だ……耐え、られない。
「あ……ぁあ……あっ、ぁあ、ァ、……ッ」
視界がチカチカと明滅する。腰もガクガクと痙攣して、天井に向かって高く突き出してしまった。
ひと際大きな音を立てて吸い付かれて、ついに前の前が真っ白に弾けた。
「……ッ──ふ……ん~っ……ぅ、ん」
強烈な吐精感に、右に、左に頭を振る。汗と黒髪がシーツに散った。びゅくびゅくと、吸われている音がする。最後の一滴を絞り取るまで、アレクシスは唇を離さなかった。
伸び切った体が徐々に弛緩し、背後のシーツに全体重が吸い込まれていく。
「は、はぁ、あ……」
うねる舌は最後にちゅくりと音を立て、リョウヤの昂ぶりを心ゆくまで堪能してから、離れていった。
リョウヤはというと、遠くて近い天井を凝視しながら呆然としていた。ぜぇはぁと、全力疾走したかのようなリョウヤの荒い息だけが、部屋中に響き渡る。
出して、しまった。よりにもよって、アレクシスの口の中に。
ひくひくと痙攣する膝の間で、アレクシスが自らの手のひらに、とろりと白濁を吐き出すのが見えた。
手を握ったり、開いたり、無骨な指の先で擦ったりして、粘つく白濁を伸ばしている。手に付着している体液の量からも、半分以上は飲み下したということが見て取れた。
垂らしたリョウヤの白を凝視しているアレクシスには、表情がなかった。ただそれは決して冷たい眼差しなどではなくて、何かを考えこんでいるような顔に見えた。
「のん、だ……の?」
「ああ」
ああ、じゃない、ああじゃ。
けれども快楽の余韻に舌まで痺れているし、とてつもない解放感と疲労感に、指の先を動かすことも億劫だった。
だから一番聞きたかったことをとりあえず、聞いた。
「くるった、の……か?」
「……言うにことかいてそれか?」
今のは、葉巻煙草を吸っている時の表情に似ている。リョウヤも精液の味は知っている。散々マティアスに口に突っ込まれて嚥下させられたし、何よりマティアスにキスされた際に、彼の口内に残っていた自分のものを注ぎ込まれたからだ。
酷い味だった。苦くて青臭くて、たとえ自分のであっても二度と飲みたくない。
「だって、まずく、ない……?」
「酷い味だ」
だろうな。言葉通り、アレクシスはかなり不味いものを飲んでしまったみたいな顔をしていた。一刻も早くウィスキーごと流し込んでしまいたい、なんて思ってそうだ。
当たり前だ。甘さのある蜜液と比べて、精液はリョウヤの味そのものなのだから。
「なんてものを出すんだ」
「いや、俺の……せーじゃ、ねー……」
出したくて出したわけじゃない。それに、離してってちゃんと言ったのに。精液なんて、多少の個体差はあれどどれもクソ不味いに決まっている。アレクシスのだって、そこらへんの野草をかき集めて中途半端に出汁をとった生煮えの汁、みたいな味をしているに違ない。絶対美味しくない、断言できる。
それなのにどうして、あえて飲んでみようなんて思ったんだろう。
霞み始めた視界をぎゅっと瞬かせ、ぽやぽやとした思考のまま、再度問う。
「ね、え、な……ん、で……?」
さっきから胸を舐めてきたり手袋を取って触れてきたり、咥えたりしゃぶったり、挙句の果てには、彼の言う「なんてもの」を飲んだり。
わけのわからないことばかりだ。
「ねぇ」
「……ねえねえと、うるさいな」
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