【完結】私の番には飼い主がいる

堀 和三盆

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16 番に捨てられた俺(ヴァイス視点)

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 家に帰るとフルールに贈るはずだった花束が枯れていた。

 どうしようかと思い、それでも何もやる気が起きず放置していたら清掃に来た業者が片付けてくれた。どうやらフルールが家を出る前に、清掃業者に家の管理を依頼していたらしい。月に一回、掃除や空気の入れ替えを行ってくれていたそうだ。

 驚いたことに、フルールに送っていた生活費はほとんど手を付けられていなかった。食費やわずかな生活費を除き、二人の将来の為の口座に貯金をしてくれていた。

 子供が出来た時、子育てや教育費に充てるための費用。フルールはキチンと俺との将来を考えてくれていたのだ。


 ……それが、通帳ごと残されていた。洗濯や清掃の業者への支払いはそこから出したようだった。


 キチンと手入れをされた家はいつでも生活を始められるようになっていた。フルールが選んだ清掃業者によって丁寧に清められ――彼女の香りのなくなった家。

 この家は騎士団での研修を終え、近衛騎士として働きだしたときに家賃補助が出ると聞いて借りた家だった。近衛騎士を辞めるから補助を切られるところだったが、王女様がこれまでの働きに対する褒賞、及び番との結婚祝いだとして買いあげて与えてくれたのだ。

 ……番との結婚は無くなってしまったけれど。


「……そうだ……。番との婚約がダメになった以上、このまま貰いっぱなしじゃまずいよな」


 番に捨てられた俺。

 その喪失感は前世の比じゃない。それでも。前世で捨てられた俺を癒してくれた飼い主――王女様のことを思い出し、俺は無性に彼女に会いたくなった。

 フルールのおかげで生活費には余裕がある。騎士団には休職の願いを出して、俺は嫁いだばかりの王女様の元へと旅立った。




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