◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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ヴァレンタインの贈り物

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 2月に入り、買い物に来たデパートの催事場で行われていたヴァレンタインコーナーを眺める。


……青海くんにチョコなんてあげたら嫌がられちゃうかな……?

 ……青海くんに時々お菓子やチョコをお裾分けすると美味しそうに食べてくれていたし、甘いものが嫌いではなさそうである。

 真実は昔から甘いものが嫌いで滅多に口にすることはなかったので毎年チョコを渡すことはなかった。

 おじいちゃんとお父さんの分……。

 父も祖父も毎年チョコを渡すと嬉しそうに受け取ってくれたので今年も渡すとして……青海くんの分……どうしよう?

 去年の夏に告白してフラれてしまって以来何となく距離を置かれてしまっている気配があるし、迷惑だろうか?

 父と祖父のチョコを買い、転勤でそばにいない父の分は郵送した。

 その事を母に連絡する。

 「今年は透くんにもチョコあげたら?一緒に住んでるんだし、仲良くしてもらってるんでしょ?」

 ……そう言われて、迷いながら青海くんのチョコを一応用意した。

 母は『渡せなかったら自分で食べたらいいじゃないの』と言っていたので自分の一番好きなメーカーのチョコを買った。

 ……まあ最悪チョコ食べれるからいいか。

 そう思い直しながらも、やっぱり青海くんに受け取ってもらえたらいいなあと思っていた。






 「水野さんおはよう、いつもありがとう。これどうぞっ★」

 青海くんに可愛らしい猫のイラストが描かれた紙袋を渡されたのはヴァレンタインの朝だった。

 「えっ……?」

 思わず青海くんの顔を見つめると、青海くんは照れた様に笑った。

 「今日は感謝を伝える日なんでしょ?だから……ねっ?」

 「あ、ありがとう」

 嬉しそうな顔の青海くんになんとかお礼を言う。

 ……チョコを渡すはずが、逆に渡されてしまった……

 思わぬ展開に激しく動揺してしまう。


 
 キッチンに入ってきた真実にも同じように言葉をかけ、青海くんはやっぱり照れた様に笑う。

 「シンジもこれっ!いつもありがとねっ★」

 真実には少し大きめの袋を手渡す青海くん。

 「んっ?ああ今日ヴァレンタインか。ありがとな、透。来月なんか返すから」

 そう言いながら真実はものすごく嬉しそうな顔をしている。

 「んっ?来月って?」

 聞き返した青海くんに真実が簡単にヴァレンタインの説明を始める。

 「今日って女の子が男の子に愛を伝える日なの??それで来月はその返事をする日があるんだ?」

 不思議そうな声を出す青海くん。

 真実と青海くんの会話を聞きながらそっと貰ったばかりの紙袋の中身を見る。

 「かわいいっ……」

 真っ白な猫を模った缶に入ったチョコレートだろうか。猫の瞳はガラス玉が嵌め込まれ、キラキラと輝いている。

 可愛いし、綺麗な缶だ。

 手に取って陽の光に当てると瞳の色が変わって……中々凝っている物のようだ。

 ……すっごくかわいい……

 ひと目見て気に入ってしまった。


 
 「えっ、オレやり方間違っちゃったのか……」

 少し残念そうな声を出す青海くんと目が合う。

 青海くんヴァレンタインの事をあまり知らなかったようだ。

 感謝の気持ちを伝える日だと誰かに教えられた青海くんは、律儀にも私と真実にそれを実行してくれたようだった。

 「……返してなんて言わないでね?」

 缶を抱きしめながらそう言うと面白そうに青海くんは微笑んだ。

 「言わないよ、オレやり方間違えちゃったみたいだけど、気にせず受け取ってね。まあオレからの感謝の気持ちって事でっ」

 『オレってばバカだな……』そう言いながら笑う青海くんを見ていると胸が熱くなる。

 ……やっぱり青海くんのこと……好きだな……

 真実と嬉しそうに戯れる青海くん。

 真実はご機嫌で出掛けて行ってしまった。

 

 青海くんと二人、キッチンに残される。

 ……迷惑かもしれない。
 でもやっぱり青海くんにチョコ渡したい!

 私は青海くんにそのままここに居てくれるようにお願いして、チョコを取りに部屋に戻る。

 ……嫌がられちゃったら……悲しいな……でも青海くんもここまでしてくれたのだから……


 急いでキッチンに戻ると青海くんはちゃんと待っていてくれた。

 「水野さん今日どうする?真実は出かけちゃったし、お昼の……」

 「青海くん!これっ!!」

 用意していたチョコを青海くんに手渡す。

 「えっ!?これ、オレにくれるの!?」

 驚いたように声をあげた青海くん。
 迷惑がられると涙が出てしまいそうだったので、青海くんの顔を見ないようにしていた。

 「……ありがとう」

 そう言ってくれた青海くんになんとか言い訳をする。

 「ごめんね、こんなことして……青海くんに嫌がられるかもって思ったんだけど、渡したかったの……」

 それだけ伝えて部屋に戻る。



 ……青海くん怒らせてしまってないだろうか?

 部屋に戻ってベッドに寝そべる。

 ……一度フラれているのにしつこいって思われてないかな……

 色々と考えてしまう。

 ……やっぱり渡さない方が良かったのかな?


 
 そう考えていると部屋のドアがノックされ、ドアが開いた。

 ……青海くんにチョコ突き返されたら……

 「おい泉、なんか透具合悪いみたいだから様子見てやれ!悪いけど俺浅川と待ち合わせてるんだ。頼んだぞ?」

 真実だった。
 真実はそれだけ言うと再び出て行ってしまう。

 ……青海くん調子悪いのに真実ったら出かけちゃうの?

 慌てて起き上がって階下に降りる。

 ……もしかして私がチョコ渡したりなんかしたから?

 後悔しながらキッチンのドアを開けると青海くんが壁に寄りかかりながら座り込んでいた。

 「青海くん大丈夫!?」

 声をかけて側に寄ると青海くんがびくりとした。

 私はそのまま青海くんの側にしゃがみ、額に触れる。

 ……熱はないみたいだけど……

 「青海くん、調子悪いんならすぐ病院行こうか?立てる?」

 そう声をかけ、立ち上がる。
 病院に行くのなら、タクシー呼んだ方が……

 そう思った瞬間に青海くんに手をつかまれた。

 「……青海くん?」

 「オレっ……水野さんが好きだっ!」

 青海くんはそう言った。
 
 ……私のこと……好きって……?

 青海くんに手を握られる。

 「いつもオレに優しくしてくれて、笑ってくれて、抱きしめてくれた水野さんが好きだよ。オレの話聞いてくれたし、バイト先にも来てくれて嬉しかった。花火大会の時の浴衣姿だってすっごく綺麗で可愛くって……」

 青海くんは赤い顔で一生懸命に私に想いを伝えてくれる。

 「それからっ……!!」

 私は我慢できなくなって青海くんを抱きしめる。

 ……青海くんに好きって言ってもらえた……

 青海くんが愛おしくって、嬉しくてたまらなかった。



 
 「……去年は……ごめんね。オレ……誰かを好きになれる自信がなくって……水野さんのこと……泣かせて……」

 青海くんが私の背に手を回しながらそう言ってくれた。

 「全然……いいの。青海くんが好きって言ってくれただけで充分……」

 青海くんの身体からふっと力が抜けていくのがわかった。

 「……好きだよ。水野さん……」

 「……水野さんじゃなくって……泉って呼んで?」

 青海くんに抱きしめられながらそうお願いする。

 「分かったよ、泉……。だからオレのことも……」

 私は青海くん……透の顔を見上げる。

 「透っ、大好きっ!!」

 そう言いながら透の頬にキスをした。

 「えっ!?っっ!?」

 真っ赤な顔で驚く透の姿は本当に可愛くて、たまらなかった。


 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
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