◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

文字の大きさ
54 / 70

すれ違い

しおりを挟む
 透のバイトが終わる時間が遅くなった。

 更に、人手が足らないからと毎日バイトに行くことになったらしい。

 透からはしばらく食事の用意は要らないと言われてしまった。

 朝ご飯も、学校に行くギリギリまで眠りたいからと言われてしまい、本当に透と顔を合わせる時間が少なくなってしまった。

 たまに顔を合わせても、疲れているらしく、私を見て微笑んでくれるぐらいだった。

 ……最近なんだか……透の元気がない気がした。

 疲れている……というより……落ち込んでいるようにも見える。

 


 「……いずみ……ただいま……」

 お風呂から上がり、そろそろ寝る準備をしようと思っていた頃に透が帰ってきた。

 疲れたような顔で透が微笑んでくれるが、なんだか痛々しい。

 「透……おかえりなさい、大丈夫?」

 透のそばに駆け寄り、顔を覗き込む。

 困ったような顔で微笑む透……目が少し赤い……。

 ……またお墓に寄って帰ってきたんだろうか?

 そっと透の頬に触れると冷たくなっている。

 「疲れたでしょ、早くお風呂入って……身体温めて?」

 透の頬を両手でそっと挟む。

 ……少しでも……温めてあげたかった。

 「……いずみ……」

 囁くように透が声を漏らす。

 

 ちょうどその時階下から海の声が聞こえた。

 「いずみ~お風呂から出たんならちょっとレポート見てくれない?」

 海の声が聞こえた瞬間透がビクッとして身を引く。

 そうして二、三歩私から体を離した。

 ……。

 「おやすみ……いずみ……」

 透はそういうと私に背を向け、自分の部屋に入って行ってしまった。




 ★



 どうやら透は海が苦手なようだった。

 透が……というより海のほうが完全に透を嫌っている。

 さりげなく原因を知ろうとして海に聞くが、『ただ嫌いなだけ』とだけ言ってそれ以上教えてくれなかった。

 海がそんな感じなので透は仲良くなんてできるはずないだろう。

 ……それにもかかわらず、透は何とかぶつからないように上手くやってくれようとしていた。

 

 お風呂を終え、海とテレビを見ていると真実がリビングにやってきた。

 「透は?まだ帰って来ないのか?」

 そう聞かれたので頷く。

 隣にいた海がぼそっと呟く。

「あんなヤツ帰って来なくたっていいじゃないか」

 ……海の呟きに何ともイヤな気分になる。

 「そんな言い方……」

 注意しようと思ったらちょうど玄関が開く音がした。

 「やっと帰ってきたか……」

 真実はそう言い、時計を見るとリビングを出て行った。

 つられて時計を見ると22時を過ぎている。

 ……今日も疲れてるんだろうな……

 私も真実の後を追う。

 リビングを出るとちょうど真実と透が話をしているようだった。

 「……しばらくギリギリまでシフト入れて貰ったんだ。心配しないで?」

 そう言いながら透が笑う。

 透が私に気づいて振り返る。

 「泉……遅くなっちゃってごめん。コレ……ゼリーなんだけどみんなの分あるから後で食べて」

 そう言いながら袋を渡してくれる。

 「ありがとう……透……大丈夫?」

 透は困ったような顔で笑う。

 「心配させちゃってごめんね。オレの事は大丈夫だから……本当に気にしないで?」

 透はそういうと階段を上がって行ってしまう。

 その背を追いかけて真実も二階に上がってしまった。

 ……

 ……

 透に渡された袋を覗き込む。

 可愛らしいカップに入ったゼリーがいくつか入っていた。

 ……どうせなら後で一緒に食べたい……

 

 ホワイトデーの日にニコニコしながらゼリーやケーキを食べていた透……あれからもう2ヶ月が経つ……

 最近はもう透の笑顔なんて……見ていない。

 


 「泉、どうしたの?」

 リビングから海が顔を出す。

 ……どうしたらいいんだろう……

 私はぼんやりと考えていた。



 



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなパン屋の恋物語

あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。 毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。 一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。 いつもの日常。 いつものルーチンワーク。 ◆小さなパン屋minamiのオーナー◆ 南部琴葉(ナンブコトハ) 25 早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。 自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。 この先もずっと仕事人間なんだろう。 別にそれで構わない。 そんな風に思っていた。 ◆早瀬設計事務所 副社長◆ 早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27 二人の出会いはたったひとつのパンだった。 ********** 作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...