◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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土砂降りの雨と

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 ……

 透は……もう私のことなど嫌になったのだろうか?

 そればかりが頭の中を巡り、授業どころではなかった。

 気づけば放課後、透は鞄を持ち席を立つ。

 ……

 こんな気持ちのまま過ごしたくは無かった。

 「透っ、お願い……話があるんだけど……」

 思わず透の袖を掴み引き留める。

 「んっ……どうしたの?」

 透は少し困ったような顔をする。

 「あのねっ……」

 そう言いかけた時に海が教室にやってきた。

 「泉っ!」

 海の声を聞くと透はビクッとし、私の手をそっと避けた。

 その行為にショックを受けながらも、しかしきちんと話さなければと思い海に今日は先に帰るように伝える。

 「え、なんでだよ!」

 海はそう言いながら透を睨んだ。

 ……違う、そうじゃないのに……



 透が悪いんじゃない!

 そう伝えようとしたが、透は一歩後ろに下がる。

 「ごめんオレ今日バイトだから急ぐんだ。じゃあね」

 そう言い、逃げるように教室から出て行ってしまった。

 
 教室から出る直前に、佐藤さんに楽しそうに笑いかけ、手を振った透……

 ……


 
 そっと肩に触れられ、振り向くと浅川さんだった。

 浅川さんは諭すように話しかけてくる。

 「透クン……この前の昼休み屋上で一人泣いてたわよ。なんで自分だけ生き残ってしまったんだろうって……身体の傷は治っても、心は彷徨ったままなのね。もしかしたら透クンは、あのまま起こさなかった方が幸せだったのかも知れないわね……」

 「……?」

 「今だって本当は一人になりたくないはずよ?だって1人ってつらいもの……だからこそ誰かと一緒にいたいって……思ってると思うわよ?……水野さんはもう透クンのこと要らなくなっちゃったの?」

 「透のこと要らなくなんか……」

 そう言いかけると真実が浅川さんに声を掛けた。

 「浅川、そろそろ行こうぜ。部活……遅れるぞ」

 2人揃って教室から出て行ってしまった。

 取り残された私たち……

 「泉……もう帰ろうよ。雨が酷くなりそうだよ?」

 海は窓の外を眺めている。

 つられて窓の外を見るとポツリポツリと雨が降り始めていた。




 ★



 「それでね、泉……」

 海の楽しそうな声がキッチンに響く。

 2人並んで夕飯の準備をしていたのだが、海の話が全く頭に入ってこなかった。

 
 ……透が屋上で一人泣いてたって……

 透の鳴く姿を思い出してしまい、ぎゅうっと心臓を鷲掴みされたような気持ちになる。

 いつも優しくって、笑ってくれる透……

 自分の方が辛かったはずなのに、そんなの感じられないくらいに私を大事にしてくれた……

 私にとって、初めて好きになった男の子……

 海が隣にいるのに、視界が揺らぐ。

 「いずみ?」

 気がついたのか海が私の顔を覗き込んできた。

 その瞬間涙が溢れてしまい慌てて袖で涙を拭う。

 「玉ねぎ……目に沁みちゃった……」

 なんとかそう言いながら、笑って見せる。

 しかしどうしてか、涙は止まらなくなってしまった。


 「泉……」 

 声が聞こえたと思った瞬間に、抱きしめられていた。

 驚いて硬直していると海は私の目を見つめて、笑った。

 「泉、あんなヤツの事もう考えるのやめなよ。オレの方がずっと泉のこと好きだよ」

 そう言い、不意に顔を近づけてきた。

 ……何?!

 咄嗟に避けて、身体を離すと海は怪訝そうな顔をした。

 「泉、アイツに同情してるだけでしょ。施設育ちで親が居ないからって。そんなのオレたちには関係ないことだし、オレ昔っからずっと泉のこと好きだったよ?」

 「同情なんかじゃないよ……私……透が好きなの」

 そう伝えるが海は聞く気がないようだった。

 「昔約束したでしょ?大人になったら結婚しようって。オレ……泉となら一緒に暮らせるって……」

 いつの間にか壁際に追い詰められていた。

 「やだ……来ないで?」

 海に腕を掴まれ、壁に押し付けられた。

 思った以上に強い力だ。

 なんとか振り払おうとしたができなかった。

 「泉……好きだよ」

 海はそう言いながら再び顔を近づけてくる。

 ……キスされちゃう……

 そんなの絶対嫌だと思い身を捩る。

 キスを諦めたのか海は私の首筋に唇を押し付けてきた。

 ……ぬるりと這う舌の感触に身の毛がよだつ。

 「ヤダっ、やめてっ!!」

 海はそのまま私の腰に腕を回し、逃すものかとでもいうかのように力を込めて身体を密着させてきた。

 太腿に、何かが当たっている……そう気づいた時、嫌悪感に包まれた。

 これに似た感情……何処かで……

 以前透の過去を知った男子生徒に襲われそうになった時と同じだった。

 気持ち悪いし、怖いし……そうして腹ただしかった。

 
 この人たちがバカにしている透は、こんなことしないのに……

 それに透とだったら、こんな気持ちになったことないのに……

 

 気づけば怖さよりも怒りが沸いていた。

 自らの欲望を私に押し付けている海に思い切り体当たりをして押し退ける。

 「私っ、透のことが好きなの!透じゃなきゃダメなの!私っ……!!これ以上透のこと傷つけたら、赦さないから!!」

 怒りながら海にそう言い、そのまま家を飛び出した。

 

 外は土砂降りの雨に変わっていたが私は構わず走っていた。

 ……透に逢いたい!!

 その一心でずぶ濡れになるのも構わず走る。





 
 
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