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真実のお見舞い
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利き手を怪我してしまったのでいつもより家事をするのに時間がかかるようになってしまった。
いつもより早く起き出し、朝ご飯の準備を始める。
…厄介だな…
包丁を持とうとしたが指先しか使えないのであまり固い物も切れない。
何とかトマトを切って包丁を置こうとして流しに落としてしまう。
「!!」
激しい音と共に包丁は流しに転がり、その時に指先を切ってしまった。
…そんなに深く切ったわけではなかったので絆創膏を巻く。
…包丁はダメか…
卵を茹でて潰す。
…今日はパンで我慢してもらうか。
何とか卵のサンドイッチを作っていると泉が起きてきた。
「透っ、大丈夫なのっ!?」
泉は慌てたように側に来て、手元を見る。
「手…切っちゃったの?私やるから…」
「ほんの少し切っただけだから大丈夫だよ。…簡単なのしかできなかったけど、ごめんね。まだ弁当できてないんだけど…今日は…」
泉が手に触れる。
「私の事は大丈夫だから…手が治るまではお弁当無くっていいから。ご飯の支度だってやらないでいいよ。手…無理すると治らないでしょっ」
「…でもっ…」
「いいから透はすずしろと遊んでてっ」
泉は少しだけ怒りながら変わってくれた。
テキパキと朝食と昼食まで作ってくれる。
「お昼は冷蔵庫に入れておくから温めて食べてねっ」
起きていたすずしろにご飯をあげていると泉は微笑む。
「透…しばらく家事も私がやるから透は安静にしてなきゃダメだよっ」
「…ごめんね。泉…ありがとう…」
…情けない…
泉が作ってくれた朝ごはんと自分で作ったサンドイッチを食べる。
「透…食べれる?」
泉が心配そうに見ている。
ぎこちないがスプーンは左手でも使えたので何とかなりそう…だが食べ方が汚くなってしまう。
「左手で箸使う練習しようかな…どっちでもできた方が便利だからねえ…」
そう言いながら箸を持つがすぐには無理そうだった。
「透食べさせてあげるっ」
泉が食べるのを手伝ってくれた。
「…お昼…手で持てるようにおにぎりとかにしようか」
泉がそう言いながら席を立つ。
もうそんなに時間がないのにこれ以上時間をかけさせるわけにはいかない。
「泉、オレのことはいいよ。お昼は何とかするから。パン買って来てもいいしさ。手が動かない分身体動かしたいから散歩がてら買い物行ってくるよ。ね?泉はそろそろ仕事に行かないと時間でしょ?」
★
心配そうな泉を送り出す。
…そろそろすずしろの物も買いに行きたかったし、仕事が遅くなった分時間がかかりそうだ。
眠ってしまったすずしろを膝の上に乗せて仕事を始める。
…すずしろが膝の上に乗っているおかげでぽかぽかして温かい。
手を伸ばせばすぐにもふもふとした身体に触れて…すごく癒される。
詰まる度に寝ているすずしろの寝顔を見ていると仕事が進むような気がした。
…本当かわいいなあ…
★
家のインターホンが鳴った。
…誰だ?
ふと時計を見るとお昼はとっくに過ぎていた。
…誰だろう?
そう思いながら確認すると真実だ。
「…どうしたの?」
ドアを開けるとスーツ姿の真実がいた。
「透っ!」
ニャーンッ!
すずしろが走ってくる。
「あっ!逃げちゃうから早く入って!すずしろっ」
すばしっこいすずしろを捕まえる。
「ネコ飼ったのか?」
ドアを閉めた真実が驚いたようにすずしろを見る。
…真実猫好きだっただろうか?
「この前の新年会の日に拾って…真実は猫ヘイキ?」
「ああ、別に嫌いじゃないぞ」
すずしろを見せると真実は少し不思議そうな顔をしていたが微笑む。
指先で遠慮がちにすずしろに触る真実…。
…猫がいるだけで癒されるなあ…
真実とすずしろ…不思議な組み合わせだ。
「それより真実どうしたの?今日仕事でしょ?」
平日の昼間…まあ真実は社長さんだし時間の融通は効くんだろうけど…
「車持ってきたぞ。その手じゃしばらく運転なんかできないだろ?」
透の車の鍵だった。
「ありがとう。どうしようって思ってたんだよね!ホテルに置きっぱなしもできないし…」
左手で鍵を受け取りポケットにしまう。
「それから…真鍋がお前に怪我させたこと…悪かったな…」
真実が頭を下げる。
「えっ!?真実は関係ないでしょ?やめてよっ!」
慌てて真実の肩に触れてやめさせる。
「関係無くないぞ、俺の会社の人間がやったことだし、責任を取るのは当然だろ。治療費とお前が働けなくなった分は補償するから心配するなよ?それから…」
「真実、本当大丈夫だから…あ、でもお願いがあるんだけどいい?」
「ああ、なんでもするぜ?」
★
せっかく真実が車に乗って来てくれたのでホームセンターに行く。
「いやあ…助かったよ。すずしろの物を揃えたかったんだけど持って帰るの大変だしさ…」
「…本当にこんな事で良かったのか?」
気の抜けたような真実がスーツ姿でカートを引いてくれる。
「うん、全然助かるよ。猫砂一つ持って帰れないんじゃあどうしようもないからさ…」
猫用トイレに猫砂に、病院用のキャリーバック。猫のご飯に爪とぎに…
あっという間にカートは山盛りだ。
「う~ん…これはまだ早いかなあ…」
キャットタワーを見る。
…でも今日はせっかく真実という立派な男手もいる事だし…
「そのうち必要になるんなら買っておけよ。何でも買ってやるから…」
真実がため息をつく。
「あ、いやお金は自分で払うからいいよ。ただちょっと手を貸してほしいなって…」
そう断ったが結局真実が買ってくれた。
「俺からの見舞いだとでも思ってくれ…」
「…本当にいいのっ?シンジっありがとうっ!!」
嬉し過ぎて真実に抱きつく。
「ああっお前恥ずかしいだろっやめろって!」
そう言いながらも真実が笑ってくれた。
そのまま真実とスーパーに行き買い物を済ませる。
真実がキャットタワーを組み立ててくれるというのでそれに甘えることにした。
せっかくなので夕飯を食べて行って貰おうと思った。
すでにカットされている鳥もも肉を買って来たので唐揚げと炊き込みご飯にちぎって作れるレタスのサラダを作り始める。
少し時間は掛かったがうまく作れたと思う。
そろそろ泉も帰ってくる時間だ。
「ただいま~って透ご飯作ってくれたの!?手大丈夫なのっ!?」
泉がキッチンに急ぎ足で来る。
「あ、うん。包丁使わないで済むようにカットされてる肉買って来たから。真実が来てくれてさ、買い物付き合ってもらったんだ。お礼に夕飯一緒に食べて行ってもらってもいい?」
「いいけど…あ、シンジってばズルいっ!透と猫ちゃん用品買いに行っちゃったの?今週私が一緒に行こうと思ってたのに…」
キャットタワーを組み上げた真実が顔を上げた。
「行きたかったらまた行けば良いだろ?ホームセンターって案外楽しいんだな」
真実が爽やかに笑う。
悔しがる泉はかわいい。
「そうそう、真実がお見舞いがわりにって全部買ってくれたんだよ。助かっちゃったよ…」
「そうなんだ…ありがとう…シンジ」
★
「やっぱり透の作ったメシが一番だなっ!」
真実が旨そうにご飯を食べてくれるので嬉しくなる。
「…そうなんだけど…手…無理しないでね?」
心配してくれる泉。
「気をつけるよ…」
そう言いながら今日はいい発見をしたと思った。
最近はカット野菜やら冷凍された野菜などの種類が多くて簡単に調理ができる食材が増えた。
手をあまり使わなくてもやり方次第でご飯作りはできるだろう。
…便利になったよな…
そして真実も泉もやっぱり美人さんだなあ…
そう思いながら3人でご飯を食べた。
いつもより早く起き出し、朝ご飯の準備を始める。
…厄介だな…
包丁を持とうとしたが指先しか使えないのであまり固い物も切れない。
何とかトマトを切って包丁を置こうとして流しに落としてしまう。
「!!」
激しい音と共に包丁は流しに転がり、その時に指先を切ってしまった。
…そんなに深く切ったわけではなかったので絆創膏を巻く。
…包丁はダメか…
卵を茹でて潰す。
…今日はパンで我慢してもらうか。
何とか卵のサンドイッチを作っていると泉が起きてきた。
「透っ、大丈夫なのっ!?」
泉は慌てたように側に来て、手元を見る。
「手…切っちゃったの?私やるから…」
「ほんの少し切っただけだから大丈夫だよ。…簡単なのしかできなかったけど、ごめんね。まだ弁当できてないんだけど…今日は…」
泉が手に触れる。
「私の事は大丈夫だから…手が治るまではお弁当無くっていいから。ご飯の支度だってやらないでいいよ。手…無理すると治らないでしょっ」
「…でもっ…」
「いいから透はすずしろと遊んでてっ」
泉は少しだけ怒りながら変わってくれた。
テキパキと朝食と昼食まで作ってくれる。
「お昼は冷蔵庫に入れておくから温めて食べてねっ」
起きていたすずしろにご飯をあげていると泉は微笑む。
「透…しばらく家事も私がやるから透は安静にしてなきゃダメだよっ」
「…ごめんね。泉…ありがとう…」
…情けない…
泉が作ってくれた朝ごはんと自分で作ったサンドイッチを食べる。
「透…食べれる?」
泉が心配そうに見ている。
ぎこちないがスプーンは左手でも使えたので何とかなりそう…だが食べ方が汚くなってしまう。
「左手で箸使う練習しようかな…どっちでもできた方が便利だからねえ…」
そう言いながら箸を持つがすぐには無理そうだった。
「透食べさせてあげるっ」
泉が食べるのを手伝ってくれた。
「…お昼…手で持てるようにおにぎりとかにしようか」
泉がそう言いながら席を立つ。
もうそんなに時間がないのにこれ以上時間をかけさせるわけにはいかない。
「泉、オレのことはいいよ。お昼は何とかするから。パン買って来てもいいしさ。手が動かない分身体動かしたいから散歩がてら買い物行ってくるよ。ね?泉はそろそろ仕事に行かないと時間でしょ?」
★
心配そうな泉を送り出す。
…そろそろすずしろの物も買いに行きたかったし、仕事が遅くなった分時間がかかりそうだ。
眠ってしまったすずしろを膝の上に乗せて仕事を始める。
…すずしろが膝の上に乗っているおかげでぽかぽかして温かい。
手を伸ばせばすぐにもふもふとした身体に触れて…すごく癒される。
詰まる度に寝ているすずしろの寝顔を見ていると仕事が進むような気がした。
…本当かわいいなあ…
★
家のインターホンが鳴った。
…誰だ?
ふと時計を見るとお昼はとっくに過ぎていた。
…誰だろう?
そう思いながら確認すると真実だ。
「…どうしたの?」
ドアを開けるとスーツ姿の真実がいた。
「透っ!」
ニャーンッ!
すずしろが走ってくる。
「あっ!逃げちゃうから早く入って!すずしろっ」
すばしっこいすずしろを捕まえる。
「ネコ飼ったのか?」
ドアを閉めた真実が驚いたようにすずしろを見る。
…真実猫好きだっただろうか?
「この前の新年会の日に拾って…真実は猫ヘイキ?」
「ああ、別に嫌いじゃないぞ」
すずしろを見せると真実は少し不思議そうな顔をしていたが微笑む。
指先で遠慮がちにすずしろに触る真実…。
…猫がいるだけで癒されるなあ…
真実とすずしろ…不思議な組み合わせだ。
「それより真実どうしたの?今日仕事でしょ?」
平日の昼間…まあ真実は社長さんだし時間の融通は効くんだろうけど…
「車持ってきたぞ。その手じゃしばらく運転なんかできないだろ?」
透の車の鍵だった。
「ありがとう。どうしようって思ってたんだよね!ホテルに置きっぱなしもできないし…」
左手で鍵を受け取りポケットにしまう。
「それから…真鍋がお前に怪我させたこと…悪かったな…」
真実が頭を下げる。
「えっ!?真実は関係ないでしょ?やめてよっ!」
慌てて真実の肩に触れてやめさせる。
「関係無くないぞ、俺の会社の人間がやったことだし、責任を取るのは当然だろ。治療費とお前が働けなくなった分は補償するから心配するなよ?それから…」
「真実、本当大丈夫だから…あ、でもお願いがあるんだけどいい?」
「ああ、なんでもするぜ?」
★
せっかく真実が車に乗って来てくれたのでホームセンターに行く。
「いやあ…助かったよ。すずしろの物を揃えたかったんだけど持って帰るの大変だしさ…」
「…本当にこんな事で良かったのか?」
気の抜けたような真実がスーツ姿でカートを引いてくれる。
「うん、全然助かるよ。猫砂一つ持って帰れないんじゃあどうしようもないからさ…」
猫用トイレに猫砂に、病院用のキャリーバック。猫のご飯に爪とぎに…
あっという間にカートは山盛りだ。
「う~ん…これはまだ早いかなあ…」
キャットタワーを見る。
…でも今日はせっかく真実という立派な男手もいる事だし…
「そのうち必要になるんなら買っておけよ。何でも買ってやるから…」
真実がため息をつく。
「あ、いやお金は自分で払うからいいよ。ただちょっと手を貸してほしいなって…」
そう断ったが結局真実が買ってくれた。
「俺からの見舞いだとでも思ってくれ…」
「…本当にいいのっ?シンジっありがとうっ!!」
嬉し過ぎて真実に抱きつく。
「ああっお前恥ずかしいだろっやめろって!」
そう言いながらも真実が笑ってくれた。
そのまま真実とスーパーに行き買い物を済ませる。
真実がキャットタワーを組み立ててくれるというのでそれに甘えることにした。
せっかくなので夕飯を食べて行って貰おうと思った。
すでにカットされている鳥もも肉を買って来たので唐揚げと炊き込みご飯にちぎって作れるレタスのサラダを作り始める。
少し時間は掛かったがうまく作れたと思う。
そろそろ泉も帰ってくる時間だ。
「ただいま~って透ご飯作ってくれたの!?手大丈夫なのっ!?」
泉がキッチンに急ぎ足で来る。
「あ、うん。包丁使わないで済むようにカットされてる肉買って来たから。真実が来てくれてさ、買い物付き合ってもらったんだ。お礼に夕飯一緒に食べて行ってもらってもいい?」
「いいけど…あ、シンジってばズルいっ!透と猫ちゃん用品買いに行っちゃったの?今週私が一緒に行こうと思ってたのに…」
キャットタワーを組み上げた真実が顔を上げた。
「行きたかったらまた行けば良いだろ?ホームセンターって案外楽しいんだな」
真実が爽やかに笑う。
悔しがる泉はかわいい。
「そうそう、真実がお見舞いがわりにって全部買ってくれたんだよ。助かっちゃったよ…」
「そうなんだ…ありがとう…シンジ」
★
「やっぱり透の作ったメシが一番だなっ!」
真実が旨そうにご飯を食べてくれるので嬉しくなる。
「…そうなんだけど…手…無理しないでね?」
心配してくれる泉。
「気をつけるよ…」
そう言いながら今日はいい発見をしたと思った。
最近はカット野菜やら冷凍された野菜などの種類が多くて簡単に調理ができる食材が増えた。
手をあまり使わなくてもやり方次第でご飯作りはできるだろう。
…便利になったよな…
そして真実も泉もやっぱり美人さんだなあ…
そう思いながら3人でご飯を食べた。
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