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遭遇…
しおりを挟む……今日はオレが女の子達のエスコートをする番だ!
真実のようにうまくやる自信はなかったが、頑張らなきゃ!!
そう思いながら日曜日に浅川さんと泉を連れて少し大きめのショッピングモールに来た。
車を駐車場に停めて歩いていると、
「水野さん、あれ見てっ★」
と言いながら浅川さんが泉の手を引いた。
「あはっ、かわいいっ!!」
泉も少しお腹の大きくなった浅川さんを気遣うように歩く。
ん?なんだろう?
二人の後を追いながら進行方向に目をやる。
人だかりの中心には県のご当地キャラクターの着ぐるみがいて、何やらダンスを踊っている。
たしかにかわいいのだが、オレはそれより浅川さんのことが気になった。
あんまり人だかりには近寄らない方がいいと思うんだけどな。
お腹に赤ちゃんいるんだし、人にぶつかったりすると危ない。
真実がいない間はオレが浅川さんを守らなきゃ!
そう思い急いで浅川さんを追いかける。
さりげなく浅川さんの脇に立って、人混みからガードする。
浅川さんはすぐオレの行動に気づいたのか、ごめんねと言いながらオレの隣に泉を引っ張り込む。
泉は困ったように笑って、オレの腕と浅川さんの腕に抱きついた。
3人並んで少しの間ご当地キャラクターを眺め、満足したので人混みから離れた。
「さてと、今日はどんなものが欲しいの?」
浅川さんがマタニティウェアを見たがっていたのでそれに付き合う。
泉と浅川さんはああでもないこうでもないと言いながら服を見始めたのでその後について歩く。
泉……大丈夫かなあ?
……そっと泉の横顔を見つめるが泉はいたっていつも通りだった。
2人で服を選んで、楽しそうに笑っていた。
最近やっと泉との夫婦仲も回復して、エッチも普通にできるようになった。
……それでもやっぱり自分も泉も子供が出来にくい身体だということが忘れられなかった。
「透クンこんなのどう?」
浅川さんがシックな感じのマタニティウェアをオレに見せてくる。
紫と黒を基調とした、お洒落な感じのやつだ。
「ん?良いんじゃないの?真実もそういうの好きそうだね」
そう言いながら微笑む。
「う~ん、これにするかな~」
そう言いながら更に服を眺める浅川さんを横目に、つい無意識で泉に似合いそうな物を探してしまう。
……泉ならこういう薄いピンクとかのやつがいいと思うんだけどな……
近寄って布地の厚さなどを触って確かめる。
これから涼しくなっていくし、少し布が厚いくらいの方が……
「それ水野さんに似合いそうね?」
いつの間にかに浅川さんが後ろに立っていた。
驚いて振り返ると既に会計を済ませたのかショップ袋を持った浅川さんがオレを見ていた。
「あっ、イヤコレはそのっ……」
何か言わなきゃ……そう思ったが何も思いつかなかった。
困り果てながら、ふと泉の姿が無いことに気づく。
「水野さんならお手洗い行ってくるって」
浅川さんがそう言いながら苦笑する。
「もう、透クンはやっぱり水野さんね」
「そりゃあね、泉はオレの大事な奥さんだし」
浅川さんはオレが見ていた服を見つめる。
「透クン達不妊治療とかしないの?水野さんとの赤ちゃん欲しいでしょ?」
……欲しいに決まってる。
だけど……それでもダメだった時の事を考えると……怖かった。
オレは浅川さんの肩をそっと押す。
「……もう少ししたら泉に言ってみるよ」
2人でその場を離れて、泉を待つためにすぐそばの椅子に座ろうと思った。
「唯!?唯じゃないか?」
ふと背後から声が聞こえ、同時に浅川さんがひどくビク付いたのがわかった。
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