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プロローグ
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彼は刀を手に、不気味な影を睨めつけていた。生ぬるい呼気がすえた臭いとともに闇を伝う。じりじり間合いを詰めると、対峙した影がにたりと笑った気がした。
「罪という罪は在らじと、祓え給い清め給う」
彼がそう唱えると刀に縞の波紋が浮かび上がり、まるで月のように光を宿した。
大きな影が悲鳴に似た叫び声を上げる。
「それは! やめろ!」
喚きながら影が逃げだそうとした途端、彼は地を蹴った。辺りに白い光が飛び散る。
「祓え給え清め給え、守り給え幸え給え!」
禍々しさが消え失せ、代わりに夜の優しい風が辺りを包んだ。影であったものは、うめき声を漏らしながらうずくまっている。
「本来の道をゆくがよい」
そう諭す彼に、影だったものが喚く。
「この世に生まれた意味など、どこに置いてきたのかも思い出せぬ」
それを聞いた彼の目が細くなる。
「なぁに、若がきっと、お主を導くでござる。……拙者のようにな」
分厚い雲が割れて月の光が舞い降りる。その穏やかな光が照らしたのは、ゆらりと揺れる尻尾だった。
「罪という罪は在らじと、祓え給い清め給う」
彼がそう唱えると刀に縞の波紋が浮かび上がり、まるで月のように光を宿した。
大きな影が悲鳴に似た叫び声を上げる。
「それは! やめろ!」
喚きながら影が逃げだそうとした途端、彼は地を蹴った。辺りに白い光が飛び散る。
「祓え給え清め給え、守り給え幸え給え!」
禍々しさが消え失せ、代わりに夜の優しい風が辺りを包んだ。影であったものは、うめき声を漏らしながらうずくまっている。
「本来の道をゆくがよい」
そう諭す彼に、影だったものが喚く。
「この世に生まれた意味など、どこに置いてきたのかも思い出せぬ」
それを聞いた彼の目が細くなる。
「なぁに、若がきっと、お主を導くでござる。……拙者のようにな」
分厚い雲が割れて月の光が舞い降りる。その穏やかな光が照らしたのは、ゆらりと揺れる尻尾だった。
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