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しおりを挟む凛は転校することにしたことを明穂や湊に直接話すことはなかった。
明穂とは絶交すると伝えようかと思ったが、わざわざ伝えに行くのも嫌だと思って、無視することにした。もとより、彼女にとって親友とは思われていなかったようだ。そこで絶交宣言も悔しく思い、もとから親友でないことにしたのだ。
(まぁ、私が転校のことを話さなくとも、そのうち耳に入るだろうけど。あれだけしておいて、今更、私のところに来ないわよね)
だが、聞きつけた明穂は凛の教室まで来て何かと言って来るのは早かった。
それに凛は、眉を顰めずにはいられなかった。
(は? どの面下げて来れるのよ!? というか、普通に来すぎじゃない? 何なの??)
湊に先に話して聞かせていたのは明らかに明穂なのにそれについて凛に謝罪も何もないまま、転校をどうにかしてやめさせようとしたのだ。
その物言いの仕方があまりにも酷くて、凛はイラッとしてしまった。
「凛。転校なんてして、大丈夫なの?」
「……」
「絶対、迷子になるだけだって。それに卒業まで1年もないんだよ? この時期に転校することはないでしょ? 考え直しなって」
「……」
明穂が引き留めようと色々言っていたが、凛はそれらを全て無視することにした。
(そういえば、いつもこんな感じだったな。何で、こんな感じなのを親友だと思って信頼してたんだろ。不思議だわ)
最初は、無視する凛にクラスの面々は喧嘩でもしたのかと思っていたようだ。
「ちょっと、無視することないでしょ!」
そのうち、凛に当たり散らすかのように明穂は怒鳴り散らすようになり、それでも煩そうにしているのを見て、凛がわざと無視しているのに気づいたようだ。
どう聞いていても、凛のためというよりも、自分が困るみたいに言うばかりの明穂。それを無視する凛を見て、ただの喧嘩ではないと思ったようだ。
元より明穂はあまりよく思われていないのもあり、察するものがあったようだ。
他の友達が凛に話しかけてきたのは、すぐだった。これまで、明穂がいるとそそくさと離れて行っていた面々だ。
「凛。転校するなんて、寂しくなるよ」
「本当だよ。向こうでも、頑張ってね!」
「私も、寂しいよ。でも、私、これまで両手にあまるくらい転校してるから、大丈夫だよ」
他の友達に話しかけられて、凛はにこっと笑いながら返した。
「え? そんなにしてるの!?」
「してるよ。学期ごとに転校したこともあるし」
「それ、凄く大変そう」
「そうかな? それって、夏休みの宿題やらなくてもいいってことじゃないの? 前のとこに出すわけでもないんでしょ?」
「あー、え? その辺は、どうなの?」
「前のとこと新しいところの宿題をやって、どっちにも出したよ」
それを聞いて、友達だけでなくて、クラスの人たちにも聞こえたらしく、みんな凄い顔をしているのを見て凛は笑ってしまった。
(そうだよね。普通は、どっちもやるはめになるなんて思わないよね)
それをやった時は大変だったが、今では楽しい思い出だ。そんなことを言われたのは、一度きりだ。きっと、転校が決まるタイミングが悪かったのだろうが、それも父に異動を命じた人が悪いのは明らかだった。
そんな風に思って、なつかしんでるとその間も、明穂は凛に怒鳴っていたが、周りはそんな明穂に怪訝な顔をしたり、眉を顰めているばかりだった。
(明穂って、こんなに口が悪かったんだ。それに自分のことばっかりで、私の心配しているって言うより、今後の自分がお一人様になるのが嫌としか聞こえないんだよね。これが本性だったんだろうな。私、何で、この子のことを親友だなんて思ってたんだろ。不思議だな)
そのうち、クラスの雰囲気が悪くなるからと明穂が教室に入るのを拒まれるまでになり、廊下で騒ぎ立てていて凄かった。
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