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しおりを挟むエレノアの婚約者のヴィクトールは、やたらと別の令嬢と仲良くしていた。それを見ていたエレノアは、ため息交じりに思ったことといえば……。
(あの令嬢に気があるのは明白よね。でも、婚約したばかりなのにその相手である私のことを放置して、こんなことをするなんてね。あんまりだわ)
エレノアは、学園でヴィクトールとその令嬢を見かけるたび、気持ちが沈んでいくことになってしまったのだ。
そんな日々が続いていたこともあり、エレノアは日に日に元気がなくなってしまっていた。そんな娘に両親は婚約者と上手くいってないのかと気になったようだ。ヴィクトールのことを聞かれて、エレノアは言葉に詰まってしまった。
「どうした?」
「……その、ヴィクトール様は、別に好きな方がいるようなんです」
「何?」
両親は娘から話を聞いて憤慨することになった。婚約が気に入らないからといってそんな仕打ちをしているとは思わなかったのだ。
(それこそ、婚約してからなのよね。そんなに嫌だったなら、婚約しなきゃ良かったと思うくらいなのに)
「婚約したばかりだが、きっちりさせなくてはならなそうだな」
「……」
父が婚約者を蔑ろにして他の令嬢にうつつを抜かしていることについて、娘に聞くなりすぐに動いてくれた。苦情と抗議をしてくれたのだが、ヴィクトールの父親は息子に確認したが、そんなことはなく婚約者にはよくしていると逆に怒っているような手紙が届くことになったのは、すぐのことだった。
エレノアは父に呼ばれて、相手からの手紙を見せられて読むなり、すぐに反論をした。
(嘘ばっかり! こんなのあんまりだわ!!)
「こんなの嘘です! 私、大事になんてされていませんわ」
「わかっている。こんなことで隠し通せると思っているなど、侮られたものだ。学園での様子もちゃんと証言がとれている。言い逃れなんてさせない。ただ、向こうがこう言っていると見せたかっただけだ」
(そうよね。お父様が、調べずに動くわけがなかったわ。お父様にまで、こんな風に当たり散らすなんて、私もどうかしているわ)
エレノアは、苛立ちが募ってしまっていることで余裕がなさすぎることにようやく気付けることになった。父は、エレノアよりも穏やかに見えるが、その目は全く笑っていなかったのだ。
こうして、手紙のやり取りでは埒が明かないとなり、両家で話し合いがなされることになったのは、すぐのことだった。
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