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しおりを挟むシャルルは、とんでもないプレゼントが贈られて来たことに落ち込んでいたが、両親はそんな息子のことを気にも止めていなかった。
そもそも、いつものシャルルなんて、この両親は知らないはずだから、わからないのだろう。
逆にユルシュルは、普段の両親なんて知らないようなもののはずだが、無駄に機嫌のよい2人に何とも言えないことを思っていた。
これは、ろくでもないことだなとユルシュルは直感した。そのろくでもないことが、自分のことでないことを祈った。いや、退屈していたから、面白いことが起こるならいいのだが、この両親のもたらすものが面白いわけがない。
そうなると必然的に弟の方にろくでもないことが向くことになるが、そんなことユルシュルは構っていられない。今日はもうとんでもないことがあったなら、1つも2つもそんなに大差ないはずだ。
そもそも、1つ目すら姉をすぐに頼ったのだ。自分で、何もしようとせずに動揺したまま、丸投げしたのはシャルルだ。それに手を貸したのだから、今回はそのくらいしても許されるはずだ。
これまでだって、ずっとそうだった。もう、ここから離れたって許されるはずだ。ユルシュルが、この家の跡継ぎではないのだから。
そんなことをユルシュルと考えていたのが効いたのか。両親は、シャルルが婚約したと話し始めた。
「あの、誰とですか?」
シャルルは、自分の婚約者とわかって何とも言えない顔をして聞いた。
「聞いて驚け。王女だ」
「え……?」
「凄い方が、嫁いで来てくれるのよ。よかったわね」
「あの、どちらの国の王女ですか?」
「は? どちら??」
「どちらって、この国の王女に決まってるじゃない」
両親の言葉にシャルルだけでなくて、ユルシュルまでもぎょっとした。この両親は、ろくでもないことをしたようだ。
「あの、この国の王女殿下なら、既に婚約者がおられます。お聞き間違えでは?」
「あら、そうだった?」
「いや、だが、王女だと聞いたんだが……」
「……」
学園で、王女が婚約者と仲睦まじくしているのは有名なことになっている。しかも、婚約して半月ほどで、そうなのだ。そんな相手と婚約など、他所でしていないだろうかとユルシュルは、そちらにハラハラした。この両親は、いつもこうだ。愛人たちとよろしくしてくれていた方が、まだマシなのだ。
「王女なら、半月前に婚約されておられます。婚約者とそれは仲良くなさっておられますよ。まさか、その話を他所でなさってませんよね?」
「へ?」
「ま、まさか」
両親は、何やら明々後日の方を向いた。嫌な予感しかしない。
「その話をどうやって知ったのですか?」
「て、手紙だ」
そう言って、父は懐から手紙を出した。
そこの封に押されていた紋章は、手に取らずともわかる。隣国の王家のものだった。
この両親は、王女の名前すら覚えていないどころか、王家の紋章も覚えてなかったようだ。何ということか。ここまで、能無しが侯爵夫妻だとは誰が思うというのか。
「姉さん。まさか、王太子が見初めた王女の方じゃないですよね?」
「え? 王太子……?」
その辺のことに疎い両親は、きょとんとした。
そういえば、王太子が見初めた女性がいた。まさか、そんなはずない。王太子との婚約を断って、我が家になんて、そんなのあるわけがない。
シャルルは顔色悪くしていたが、両親は呑気にしていた。2人共、王太子との婚約を断るわけがないと思っているが、そのまさかだった。
手紙を見て、ユルシュルはため息をつきたくなった。
「……そのまさかです。王太子の婚約より、シャルル。あなたを選んだみたいよ」
「っ、」
そこで、両親はようやく顔色を物凄く悪くさせた。もっと早くから、そうしてほしいところだ。
「あ、あなた。返事はまだしてませんわよね?」
「へ?」
「普通は本人に確認してから、あちらに返事するものですもの。シャルルに確認する前にそんなことしてませんわよね?」
「あ、いや、その……」
母は、あっさりと寝返った。父は、しどろもどろになった。それこそ、そのたじろぎっぷりでよくわかる。
もう、浮かれたまま返事をしてしまった後だったようだ。
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