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洗脳
これが勇者か
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今日アルフィはオカンと用事があるとかで留守なので、昼間はひとりで屋敷の書斎にある、自分の仕事机でのんびりと資料を整理していた。いつもと違い静かな屋敷。アルフィが来る前までは当たり前だったが、今ではなんだか新鮮な気分だ。
「おい、アルフォンソはどこだ」
「え?」
そんな感慨に耽ていた時、いきなり部屋の扉が開いたので、アルフィが帰ってきたのかと思ったが、そこに居たのは知らない男だった。そいつは無断で入ってきたくせに、何故か偉そうな態度で俺を威嚇している。
「あ、あの、え?」
ガン!と大きな音を立てて、そいつが壁を殴る。えぇ、穴開いてない?あれ。
「お前がダカストロだな?」
「は、はい」
「もう一度だけ聞く、アルフォンソをどこに隠した?」
腰に帯刀していた立派な剣を、ゆっくりと抜いてその切っ先を俺に向ける。あまりにも急で、しかも現実味のない行動に、恐怖を通り越して固まってしまう。
「ほう?俺が剣を向けても微動だにしない、か」
男が近付いてきて、机の上に山積みになった書類を空いた手で無理矢理退かす。派手に散らばる大切な資料などが宙を舞うのを呆然と見ていると、お気に入りの机に、高そうな剣が突き刺さる。
「ふふ、面白いな。こうも正面から俺をコケにした奴は初めてだ。魔王討伐の旅に出る前の前哨戦にちょうど良い」
金色の長い髪に青い目、引き締まった筋肉を覆う豪華な装備。高い身長から俺を見下ろす圧倒的な強者感。信じたく無かったけど、この不審者が勇者なのは間違いなさそうだ。
「すぐに終わっては面白くない。そうだろ?ははは。今日はただの挨拶だ」
その行いは勇者というよりは蛮族か、それかマフィアのようである。猛々しく荒々しいイメージではあるが、顔は綺麗に整っていて清潔感もある。これが勇者か。アルフィと同じで物語で読んでいた人物とは違うようだ。
俺の知っている勇者とはかけ離れた存在ではあるが、俺の知っている物語通りシャルル・ダカストロの元へ、アルフォンソ・ディ・バークフォードを取り戻すためにやって来たわけだ。絶対渡さないけどな。
「ふっ」
自分は言いたいことだけ言って、黙っている俺を見て嘲笑した後に、そいつは当然のように扉も閉めずに帰って行った。
「こ、怖えぇ」
バラバラになった書類。剣が抜かれた瞬間真っ二つになったお気に入りの机。そして隠しようがないレベルの大きさの壁の穴。俺がいったいなにをしたって言うんだ。
それから部屋を片付け始めるまで、10分は動けなかった。漏らさなかっただけでも褒めて欲しいぐらいだ。
「おい、アルフォンソはどこだ」
「え?」
そんな感慨に耽ていた時、いきなり部屋の扉が開いたので、アルフィが帰ってきたのかと思ったが、そこに居たのは知らない男だった。そいつは無断で入ってきたくせに、何故か偉そうな態度で俺を威嚇している。
「あ、あの、え?」
ガン!と大きな音を立てて、そいつが壁を殴る。えぇ、穴開いてない?あれ。
「お前がダカストロだな?」
「は、はい」
「もう一度だけ聞く、アルフォンソをどこに隠した?」
腰に帯刀していた立派な剣を、ゆっくりと抜いてその切っ先を俺に向ける。あまりにも急で、しかも現実味のない行動に、恐怖を通り越して固まってしまう。
「ほう?俺が剣を向けても微動だにしない、か」
男が近付いてきて、机の上に山積みになった書類を空いた手で無理矢理退かす。派手に散らばる大切な資料などが宙を舞うのを呆然と見ていると、お気に入りの机に、高そうな剣が突き刺さる。
「ふふ、面白いな。こうも正面から俺をコケにした奴は初めてだ。魔王討伐の旅に出る前の前哨戦にちょうど良い」
金色の長い髪に青い目、引き締まった筋肉を覆う豪華な装備。高い身長から俺を見下ろす圧倒的な強者感。信じたく無かったけど、この不審者が勇者なのは間違いなさそうだ。
「すぐに終わっては面白くない。そうだろ?ははは。今日はただの挨拶だ」
その行いは勇者というよりは蛮族か、それかマフィアのようである。猛々しく荒々しいイメージではあるが、顔は綺麗に整っていて清潔感もある。これが勇者か。アルフィと同じで物語で読んでいた人物とは違うようだ。
俺の知っている勇者とはかけ離れた存在ではあるが、俺の知っている物語通りシャルル・ダカストロの元へ、アルフォンソ・ディ・バークフォードを取り戻すためにやって来たわけだ。絶対渡さないけどな。
「ふっ」
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「こ、怖えぇ」
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