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二章 属性魔法学との対峙
63話 その男、元生徒に夜遊びを問い詰められる(誤解)
そしてその数日後、朝。
俺はとんでもないニュースに目を丸くさせられることとなった。
「先生、これはいったいどういうことですか」
と、俺の向かい側の席に座り、目をきっと細めるのは、教え子であり、勤め先の理事でもあるリーナ。
最近では、馬車でのお出迎えがもはや恒例となっており、今朝もありがたく同乗させてもらったのだが、なにやら厳しい表情をしていると思ったらこれだった。
彼女がこちらに開いて見せてくるのは、ニュースペーパーの一面記事だ。
そこには、
『アデル・オルラド、夜遊びか? 夜の飲み屋街で、夜職の女性と仲良く連れ歩く姿が発見される』
という題目がつけられている。
ご丁寧なことにイメージ図まで書かれているではないか。
「私というものがありながらこれは、いったい?」
リーナが今度は少し声音を強めて、尋ねてくる……いや、詰問してくる。
『私というものがありながら』という部分はともかくとして、少なくとも無実だ。
たしかに絡まれはしたが、あの女とは決して仲良くなどなっていない。
俺はただ首を横に振る。
と、リーナはそこでふっと表情を緩めた。
「まぁ冗談です。先生のことですから、どうせお人よしなことをしていて、はめられたのでしょう?」
「……その可能性が高いな。昨日帰り道を歩いていたら、歓楽街の方から悲鳴がしたから、そっちに行ったんだ。そうしたら、妙な女に絡まれた」
「そうだと思っておりました」
「じゃあさっきの顔はなんだよ」
「あれは演出です」
いや、とても演技というふうには思えなかったけどね?
なんか、すごみを感じさせられたし。
「どうも、属性魔法学の教授陣の仕業の可能性がありますね。先生を貶めることで、潮流を変えようとしているのかもしれません。普通こんな記事、どれだけの大物がやったとしても三面に乗るような話です」
「たしかに、とくに働きかけがなかったのに、これが一面に来るのはさすがに平和すぎるか」
「えぇ。王都も広いですから。殺人や窃盗といった大きな事件も起きています。それに昨日は、第三王子が国外周遊に発たれた日でもあります。普通ならこれが一面でしょう」
うん、少なくとも俺が一面を飾るべきではないね。
「先生の名声を落とすため、研究の邪魔をするため、といったところでしょう。これで先生は今日からまた、記者に追われる羽目になります。そうなったら、またダンジョンには行きにくくなります」
「……そのようだね。もしかしたら研究室に来る生徒の中にも手先がまぎれているかもしれないな」
「はい。興味があるふりをして、先生の時間をいたずらに奪う者もなかにはいるはずです」
「うーん、どうしたものか」
全員が全員、悪意を持ってやっているわけではないというのがまた難しい。
中には本当にやる気がある人間もいるのだ。
「できれば、まったく対応しないというのは避けたいね」
「では、今日は私が応対いたしましょう。先生に代わり、研究室に入ります」
「……そりゃあリーナが代わってくれたら助かるけど」
リーナは若くして理事になったことも、その高貴な身分も、端正な容姿も相まって、人気はかなり高い。
俺がいなくても、生徒たちが失望することはないだろう。
「でも君も忙しいだろう?」
「今日は手が空いていますから、問題ありませんよ。それに、先生にはやりたいようにしてもらいたいですから」
軽く微笑みながら、リーナが言う。
実にありがたい言葉であった。
正直、最近はやりたいことが全くできておらず、やきもきとしていたのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。今日の授業は午前で終わりだから、ダンジョン調査にでも行くことにする。お礼は今度、別にさせてくれ」
「えぇ、楽しみにしていますよ。できれば、先生自身がご褒美だと嬉しいです」
え、と俺が顔を上げれば、リーナがくすっと手を口元に当てて笑う。
「冗談です」
だから、冗談に聞こえないんだけどね?
♢
俺はとんでもないニュースに目を丸くさせられることとなった。
「先生、これはいったいどういうことですか」
と、俺の向かい側の席に座り、目をきっと細めるのは、教え子であり、勤め先の理事でもあるリーナ。
最近では、馬車でのお出迎えがもはや恒例となっており、今朝もありがたく同乗させてもらったのだが、なにやら厳しい表情をしていると思ったらこれだった。
彼女がこちらに開いて見せてくるのは、ニュースペーパーの一面記事だ。
そこには、
『アデル・オルラド、夜遊びか? 夜の飲み屋街で、夜職の女性と仲良く連れ歩く姿が発見される』
という題目がつけられている。
ご丁寧なことにイメージ図まで書かれているではないか。
「私というものがありながらこれは、いったい?」
リーナが今度は少し声音を強めて、尋ねてくる……いや、詰問してくる。
『私というものがありながら』という部分はともかくとして、少なくとも無実だ。
たしかに絡まれはしたが、あの女とは決して仲良くなどなっていない。
俺はただ首を横に振る。
と、リーナはそこでふっと表情を緩めた。
「まぁ冗談です。先生のことですから、どうせお人よしなことをしていて、はめられたのでしょう?」
「……その可能性が高いな。昨日帰り道を歩いていたら、歓楽街の方から悲鳴がしたから、そっちに行ったんだ。そうしたら、妙な女に絡まれた」
「そうだと思っておりました」
「じゃあさっきの顔はなんだよ」
「あれは演出です」
いや、とても演技というふうには思えなかったけどね?
なんか、すごみを感じさせられたし。
「どうも、属性魔法学の教授陣の仕業の可能性がありますね。先生を貶めることで、潮流を変えようとしているのかもしれません。普通こんな記事、どれだけの大物がやったとしても三面に乗るような話です」
「たしかに、とくに働きかけがなかったのに、これが一面に来るのはさすがに平和すぎるか」
「えぇ。王都も広いですから。殺人や窃盗といった大きな事件も起きています。それに昨日は、第三王子が国外周遊に発たれた日でもあります。普通ならこれが一面でしょう」
うん、少なくとも俺が一面を飾るべきではないね。
「先生の名声を落とすため、研究の邪魔をするため、といったところでしょう。これで先生は今日からまた、記者に追われる羽目になります。そうなったら、またダンジョンには行きにくくなります」
「……そのようだね。もしかしたら研究室に来る生徒の中にも手先がまぎれているかもしれないな」
「はい。興味があるふりをして、先生の時間をいたずらに奪う者もなかにはいるはずです」
「うーん、どうしたものか」
全員が全員、悪意を持ってやっているわけではないというのがまた難しい。
中には本当にやる気がある人間もいるのだ。
「できれば、まったく対応しないというのは避けたいね」
「では、今日は私が応対いたしましょう。先生に代わり、研究室に入ります」
「……そりゃあリーナが代わってくれたら助かるけど」
リーナは若くして理事になったことも、その高貴な身分も、端正な容姿も相まって、人気はかなり高い。
俺がいなくても、生徒たちが失望することはないだろう。
「でも君も忙しいだろう?」
「今日は手が空いていますから、問題ありませんよ。それに、先生にはやりたいようにしてもらいたいですから」
軽く微笑みながら、リーナが言う。
実にありがたい言葉であった。
正直、最近はやりたいことが全くできておらず、やきもきとしていたのだ。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。今日の授業は午前で終わりだから、ダンジョン調査にでも行くことにする。お礼は今度、別にさせてくれ」
「えぇ、楽しみにしていますよ。できれば、先生自身がご褒美だと嬉しいです」
え、と俺が顔を上げれば、リーナがくすっと手を口元に当てて笑う。
「冗談です」
だから、冗談に聞こえないんだけどね?
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