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十二星座団 アテナ 初めての八百万
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冒険者少女集団、十二星座団 頭首 アテナ
今日は八百万のイールの日、他の人達にはどうかわからないけど、今ではすっかり私の好きな料理の一つになった。
あれだけ嫌いだったイール、不味くて不味くて、貧乏な人も食べないものを小さな子達と分け合って食べた日々。
今でこそ、魔物にも優しく寛容に受け入れるウェールズだが、昔はもっと厳しかった。
貧しい人間や親がいなくなった子供達が集まって、王都にあるスラムみたいな場所がウェールズにも確かにあった。
男の子はいい、冒険者になって角ウサギでも狩れれば食べていけるのだから、それでも角ウサギ傷だらけで帰ってきたり、深く突き刺されてしまって次の日には亡くなってしまう男の子もいた。
女の私達ではもっと被害がでるかもしれない、角ウサギ以外の魔物が乱入してくるかもしれない、門を出てすぐそこに魔物がいるわけでもない、魔物のいる場所にいくまでに他の魔物に襲われない可能性は?血の匂いをさせた角ウサギの匂いを追ってウルフ系の魔物に襲われるなんて当たり前に聞く話だ。
狩場からの帰りに魔物の襲撃に会うなんて、当たり前の話だ。
ウルフ系の魔物は強い、群れならDやC級でさえ手を焼く事もあると聞くC級でパーティーでしっかりと回復も相手をしっかりと葬れる準備をしてやっと対等、ゴブリンが隙を狙っているかも?オークがオーガがコボルトがトレントが、ここら辺は当たり前に出て来る魔物だし、時には魔物も集団で行動していたりする。
そんな外で保護屋の同伴無しで子供達だけで狩りに行く事は絶望的な世界、馬や馬車に乗って一定のスピードで通り抜ける訳でもなく、徒歩での移動ですら魔物との遭遇率は高い、なんの護衛も雇わずに移動する商人はいないくらい、いても自分達で魔物を狩れる強者だけだ。
そんな外の世界で男とは言え、子供達だけで角ウサギを狩って帰ってくる事は、貧民街の子供達にとっては英雄的な扱いを受ける程凄い事だった。
一日目に成功しても次の日はどうかわからない、同じ道を同じ通りに馬鹿みたいに帰ってきたら、魔物達に目を付けられて食われるの自分達だからだ。
一日目に成功した男の子が次の日にはいない事、二日目にいた子が三日目にはいなくなり、三日目を生き残った子は四日にめに亡くなり、最後には外にいくと言う子も結局いなくなる。
そんな私達が食べていくには、肉屋の店には出さない様な肉をもらったり、魚屋野菜屋も同じでも考える事はみんな一緒で、それでも少しでも食える事はありがたい事だった。
そんな中ダンジョンと水源がつながっていて、街に通っている川のたまり場にイールは大繁殖していた。
捕まえる事は簡単だけど、気を付けないとウツボに手を噛みちぎられるから注意が必要だった。
誰も捕まえないイールに疑問を持ちながら、捕まえて焼いて食べた。
生臭いスライムやどろどろを口いっぱいにしたかの様な味、焼く前にはなかったであろうぷるぷるのゼラチン質の身が腐敗臭を体全体に広げたのか?水っぽくてぶよぶよして生臭い、どぶの匂いでも無理に飲み込まないとと思い、飲み込みそして我慢できず胃の中の物をすぐにぶちまけた。
嘘だ!!手と足を魔物に食いちぎられたおじいちゃんは言っていた。
「イールは昔は美味かったもんだ。それこそ金払って食うくらいに、子供の頃食った。稀人様が作ってくれたイールはとても美味かった。この国では流行らなかったけど、一時期聖王国ではイールは神の食い物と言われるくらい、みんなに愛される食べ物だったんだ。でも次第に聖王国でも食べられなくなってな、そんで誰も食わなくなった。正確には食えなくなっただけどな」
聖王国では食えてたのに?この国では食えなかった?
美味い不味いなんて事は考えるまでもなかった。
なんでも食って、まともに腹に入って満たされればそれでよかった。
最低限口に入って、満たされればそれでいい。
そして私達は聖王国から来た、聖女クリスタと出会う。
聖王国で聖女として認定された聖女、腐敗した聖職者を神の名の元に皆殺しにして、恐れた教皇がブリタニアに聖女を頂点とした聖堂教会を置く事にした。
ようは厄介払いだ、聖女として世界的に公表した上に本当に女神と交信できる存在、教皇ですら暗殺は愚か断罪など出来ぬ、そんな存在となってしまった上、いつか神の名の元に自分すらも粛清しかねない存在、司祭はもちろん聖王国の粛清部隊、断罪部隊、拷問部隊など歪んだ狂人と強者の入り乱れる、聖王国の闇、教皇ですら恐れて正す事の出来なかった、聖王国の汚泥、そして強すぎた為に他国の強者達すら断罪、粛清する。
六翼聖典、周りからは六欲と揶揄される、聖王国の腐った強者達、その強者達をたった一人で堂々と正面から皆殺しにした、子供、鮮血の乙女、深紅の衝撃、皆殺しの聖者クリスタ。
クリスタに拾われた私達は、教会の名の元に保護され、食事を与えられ、教育を与えられ、生きるための術を与えられ、そして自分達で団を築くまで成長した。
クリスタがウェールズに拠点を置く時期と、ニーアが最年少で冒険者ギルドの長に迎えられた時期は一緒で、私達はニーア姉さまからも鍛えられた。
最年少とは龍族での最年少であり、人族目線だと数百年は生きているであろうニーア、正確な年齢は一部の人間しか知らない。
そうして、私達が出来上がり活動を始めてから少しして、ニーア姉さまとクリスタ姉さまが通う飲食店が出来たと聞いた。
なんでも邪神討伐戦の英雄、狐人族と鬼人族のハーフ、鬼神のガロと狐人族の美姫アセリアの娘、リリとねねが店を開いたのだとか、しかもイールを食わせる店だと言う。
私はイールと聞いてなんの冗談かと思ったのだが、姉さま達が嘘つくとは思えなかった。
私は一人、店になぜかこそこそと隠れる様にいくと、長蛇の列を目の前にし、また本当にイールか疑う気持ちがどんどんと膨れ上がる。
店前までいくと、嗅いだことのない香ばしい匂いに心臓がきゅっとなる。
店に流れる聖気がどこかクリスタ姉さまのいる教会の様な、神々の側にいる荘厳な空気に驚きながらも店に入り、イールが運ばれてくるのを待つ。
運ばれてきたイールは香ばしく、食欲のそそるいい香りで、私が見て来たイールとは別物だった。
これは・・・・・あのおじいちゃんがいってたイール?昔は美味しかったて言っていたイールなの?
私はそれを口にする。
香ばしくて、パリパリしていてそれなのに身はふっくらしっとりして、下に敷き詰めてあるのは米!?これもこの国では家畜の餌だったはずだ。
食用に輸入したけど、あまり食べ方を研究されず、安価故に家畜の餌になった食べ物、でももちもちくにくにして美味しい!タレがしみ込んでこれだけでも美味しい!でもイールと一緒に食べるともっと美味しい!美味しい?これが?イールが!?
夢中になって頬張った!口いっぱいにイールと米を詰め込んだ!美味しい!美味しい!これがこれこそが美味しいと言う事!教会に拾われて、私達の生活はまともになった。
美味しいご飯だって沢山食べて来た!!それなのに、それなのに、経験がないのだ。
食事にわくわくした事もどきどきした事も、楽しいと思った事も、今日は何が食べれるだろうなどと考えた事も、なかったのだ、こんな事はなかったのだ。
食べ終わり、お茶を飲んで、目に溜まった涙が自然と流れて来る。
止めたくても止まらなく、溢れて来る涙。
給仕してくれてた、ねねちゃんが私をみて驚いて奥から、これを作ってくれたであろう男の人を連れて来る。
事もあろうか、私はその男の人に吸い込まれる様に抱き着くと、またいっぱい泣いた。
男の人は、最初こそ戸惑った様子だったけど、私の事を抱きしめて頭を撫でてくれた。
そして「もう大丈夫、大丈夫だ。辛かったぁ、よく頑張ったなぁ、もう大丈夫だ。もういつでも僕が、僕たちがいるから、いっぱい泣いていいんだよ」
体に染みわたる優しい労いの言葉、そうだ、頑張ったのだ、頑張って、頑張って今まで生きて来たのだ。
初めて親に抱かれた様な、優しい事と優しい手の動き、気が付けば周りの人も中には泣いてる人もいて、みんなでみんなを励ます様に、俺たちは頑張って今日も生きてる。
そんな声が店に、静かに響く。
斗真様と初めてあった日、親の愛を無償の愛を初めて知った日、本当のイールの味を知った日。
美味しいを知った初めての私の記念日。
今日は八百万のイールの日、他の人達にはどうかわからないけど、今ではすっかり私の好きな料理の一つになった。
あれだけ嫌いだったイール、不味くて不味くて、貧乏な人も食べないものを小さな子達と分け合って食べた日々。
今でこそ、魔物にも優しく寛容に受け入れるウェールズだが、昔はもっと厳しかった。
貧しい人間や親がいなくなった子供達が集まって、王都にあるスラムみたいな場所がウェールズにも確かにあった。
男の子はいい、冒険者になって角ウサギでも狩れれば食べていけるのだから、それでも角ウサギ傷だらけで帰ってきたり、深く突き刺されてしまって次の日には亡くなってしまう男の子もいた。
女の私達ではもっと被害がでるかもしれない、角ウサギ以外の魔物が乱入してくるかもしれない、門を出てすぐそこに魔物がいるわけでもない、魔物のいる場所にいくまでに他の魔物に襲われない可能性は?血の匂いをさせた角ウサギの匂いを追ってウルフ系の魔物に襲われるなんて当たり前に聞く話だ。
狩場からの帰りに魔物の襲撃に会うなんて、当たり前の話だ。
ウルフ系の魔物は強い、群れならDやC級でさえ手を焼く事もあると聞くC級でパーティーでしっかりと回復も相手をしっかりと葬れる準備をしてやっと対等、ゴブリンが隙を狙っているかも?オークがオーガがコボルトがトレントが、ここら辺は当たり前に出て来る魔物だし、時には魔物も集団で行動していたりする。
そんな外で保護屋の同伴無しで子供達だけで狩りに行く事は絶望的な世界、馬や馬車に乗って一定のスピードで通り抜ける訳でもなく、徒歩での移動ですら魔物との遭遇率は高い、なんの護衛も雇わずに移動する商人はいないくらい、いても自分達で魔物を狩れる強者だけだ。
そんな外の世界で男とは言え、子供達だけで角ウサギを狩って帰ってくる事は、貧民街の子供達にとっては英雄的な扱いを受ける程凄い事だった。
一日目に成功しても次の日はどうかわからない、同じ道を同じ通りに馬鹿みたいに帰ってきたら、魔物達に目を付けられて食われるの自分達だからだ。
一日目に成功した男の子が次の日にはいない事、二日目にいた子が三日目にはいなくなり、三日目を生き残った子は四日にめに亡くなり、最後には外にいくと言う子も結局いなくなる。
そんな私達が食べていくには、肉屋の店には出さない様な肉をもらったり、魚屋野菜屋も同じでも考える事はみんな一緒で、それでも少しでも食える事はありがたい事だった。
そんな中ダンジョンと水源がつながっていて、街に通っている川のたまり場にイールは大繁殖していた。
捕まえる事は簡単だけど、気を付けないとウツボに手を噛みちぎられるから注意が必要だった。
誰も捕まえないイールに疑問を持ちながら、捕まえて焼いて食べた。
生臭いスライムやどろどろを口いっぱいにしたかの様な味、焼く前にはなかったであろうぷるぷるのゼラチン質の身が腐敗臭を体全体に広げたのか?水っぽくてぶよぶよして生臭い、どぶの匂いでも無理に飲み込まないとと思い、飲み込みそして我慢できず胃の中の物をすぐにぶちまけた。
嘘だ!!手と足を魔物に食いちぎられたおじいちゃんは言っていた。
「イールは昔は美味かったもんだ。それこそ金払って食うくらいに、子供の頃食った。稀人様が作ってくれたイールはとても美味かった。この国では流行らなかったけど、一時期聖王国ではイールは神の食い物と言われるくらい、みんなに愛される食べ物だったんだ。でも次第に聖王国でも食べられなくなってな、そんで誰も食わなくなった。正確には食えなくなっただけどな」
聖王国では食えてたのに?この国では食えなかった?
美味い不味いなんて事は考えるまでもなかった。
なんでも食って、まともに腹に入って満たされればそれでよかった。
最低限口に入って、満たされればそれでいい。
そして私達は聖王国から来た、聖女クリスタと出会う。
聖王国で聖女として認定された聖女、腐敗した聖職者を神の名の元に皆殺しにして、恐れた教皇がブリタニアに聖女を頂点とした聖堂教会を置く事にした。
ようは厄介払いだ、聖女として世界的に公表した上に本当に女神と交信できる存在、教皇ですら暗殺は愚か断罪など出来ぬ、そんな存在となってしまった上、いつか神の名の元に自分すらも粛清しかねない存在、司祭はもちろん聖王国の粛清部隊、断罪部隊、拷問部隊など歪んだ狂人と強者の入り乱れる、聖王国の闇、教皇ですら恐れて正す事の出来なかった、聖王国の汚泥、そして強すぎた為に他国の強者達すら断罪、粛清する。
六翼聖典、周りからは六欲と揶揄される、聖王国の腐った強者達、その強者達をたった一人で堂々と正面から皆殺しにした、子供、鮮血の乙女、深紅の衝撃、皆殺しの聖者クリスタ。
クリスタに拾われた私達は、教会の名の元に保護され、食事を与えられ、教育を与えられ、生きるための術を与えられ、そして自分達で団を築くまで成長した。
クリスタがウェールズに拠点を置く時期と、ニーアが最年少で冒険者ギルドの長に迎えられた時期は一緒で、私達はニーア姉さまからも鍛えられた。
最年少とは龍族での最年少であり、人族目線だと数百年は生きているであろうニーア、正確な年齢は一部の人間しか知らない。
そうして、私達が出来上がり活動を始めてから少しして、ニーア姉さまとクリスタ姉さまが通う飲食店が出来たと聞いた。
なんでも邪神討伐戦の英雄、狐人族と鬼人族のハーフ、鬼神のガロと狐人族の美姫アセリアの娘、リリとねねが店を開いたのだとか、しかもイールを食わせる店だと言う。
私はイールと聞いてなんの冗談かと思ったのだが、姉さま達が嘘つくとは思えなかった。
私は一人、店になぜかこそこそと隠れる様にいくと、長蛇の列を目の前にし、また本当にイールか疑う気持ちがどんどんと膨れ上がる。
店前までいくと、嗅いだことのない香ばしい匂いに心臓がきゅっとなる。
店に流れる聖気がどこかクリスタ姉さまのいる教会の様な、神々の側にいる荘厳な空気に驚きながらも店に入り、イールが運ばれてくるのを待つ。
運ばれてきたイールは香ばしく、食欲のそそるいい香りで、私が見て来たイールとは別物だった。
これは・・・・・あのおじいちゃんがいってたイール?昔は美味しかったて言っていたイールなの?
私はそれを口にする。
香ばしくて、パリパリしていてそれなのに身はふっくらしっとりして、下に敷き詰めてあるのは米!?これもこの国では家畜の餌だったはずだ。
食用に輸入したけど、あまり食べ方を研究されず、安価故に家畜の餌になった食べ物、でももちもちくにくにして美味しい!タレがしみ込んでこれだけでも美味しい!でもイールと一緒に食べるともっと美味しい!美味しい?これが?イールが!?
夢中になって頬張った!口いっぱいにイールと米を詰め込んだ!美味しい!美味しい!これがこれこそが美味しいと言う事!教会に拾われて、私達の生活はまともになった。
美味しいご飯だって沢山食べて来た!!それなのに、それなのに、経験がないのだ。
食事にわくわくした事もどきどきした事も、楽しいと思った事も、今日は何が食べれるだろうなどと考えた事も、なかったのだ、こんな事はなかったのだ。
食べ終わり、お茶を飲んで、目に溜まった涙が自然と流れて来る。
止めたくても止まらなく、溢れて来る涙。
給仕してくれてた、ねねちゃんが私をみて驚いて奥から、これを作ってくれたであろう男の人を連れて来る。
事もあろうか、私はその男の人に吸い込まれる様に抱き着くと、またいっぱい泣いた。
男の人は、最初こそ戸惑った様子だったけど、私の事を抱きしめて頭を撫でてくれた。
そして「もう大丈夫、大丈夫だ。辛かったぁ、よく頑張ったなぁ、もう大丈夫だ。もういつでも僕が、僕たちがいるから、いっぱい泣いていいんだよ」
体に染みわたる優しい労いの言葉、そうだ、頑張ったのだ、頑張って、頑張って今まで生きて来たのだ。
初めて親に抱かれた様な、優しい事と優しい手の動き、気が付けば周りの人も中には泣いてる人もいて、みんなでみんなを励ます様に、俺たちは頑張って今日も生きてる。
そんな声が店に、静かに響く。
斗真様と初めてあった日、親の愛を無償の愛を初めて知った日、本当のイールの味を知った日。
美味しいを知った初めての私の記念日。
応援ありがとうございます!
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