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本編
9 密談
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ひそかに大公家に集まった3人と数名の影。
大公のリオネル、長子のガオウ、次男のスオウ。
影の一人はスオウの侍従の各務だ。今は他の影にサクヤを任せている。
「・・・・・・で、どうだった」
リオネルが静かに切り出した。
もちろん、サクヤの噂の事だ。
「噂を振り撒いているのはハルキの取り巻き達。侍従達だな。侍従のうち3人はハルキと同じCクラスにいて、あることないことクラスメイトや食堂、寮内で大袈裟に言いふらしてる。調べるまでもない」
「当然、学園長も理事長も教師でさえ否定しているが。過去にもそんな不祥事など1つもない。アイツら、学園を舐めすぎてる」
ガオウが苛立たしげに告げる。
「直接的な被害がなければいいんだ。全員が否定してるから、噂はそのうち消えるだろうが・・・」
スオウが口を歪ませる。
「ここに来る前、サクヤが少し取り乱したんだ。自分には何もない。あげられるものは次期当主くらいだと淡々と興味なさげに言ってたのに、もしかしたらスオウを狙ってるのかもって思い至ったら急に過呼吸になって・・・」
『スオウだけはいやだ』
そう言って泣いていた。
「スオウはもうサクヤ君にとってなくてはならない存在だって事か」
「・・・こんな状況でなきゃ嬉しかったけど」
「『前世』の記憶が色々と邪魔をしてそうだね」
「そうだった、その前世絡みなんだけど、来週の連休にサクヤを連れて帰るからよろしく」
途端に場がぱあっと明るくなった。
「大歓迎だよ! 何々、誘ったの?」
兄、煩い。
「まあ、誘ったんだけど、今言った前世絡みでちょっと相談があって。・・・今回の噂を聞かせないようにしてたんだけど、俺が席を外した時にクラスのヤツに心配されて教えられたらしい。で、噂自体は気にしてなかったんだけど」
「・・・けど? 何?」
俺は、ちょっと躊躇ったあと教室での会話を口にした。
「『誰彼構わず咥え込むって、何を咥え込むの?』って・・・聞いてた」
「・・・・・・は?」
「真顔、いや何時もだけどそうじゃなくて、声が真面目で、心底不思議そうにクラスメイトに聞いてて」
内容的には下ネタだから、あの中性的な見た目であの口から出た言葉に皆が動揺した。
「・・・・・・アイツ、閨教育受けてなかったんだ」
あの場は大騒ぎにはならなかったけど感覚的には阿鼻叫喚だった。
「え?」
兄さんも父さんもキョトンとした。
「そんな事平然と聞いてくるから、俺、思わず聞いたんだよ。閨教育受けたのかって! そしたら受けてないって。・・・おそらく前世でも知識がないんだよ。だからアイツ『何を咥えるの?』って、真面目な声で聞くんだよ。アイツ、前世から純粋培養された天然ちゃんなんだよ!」
皆、唖然呆然。
「『ナニって何?』って聞かれた時の俺の気持ち分かるか?!」
もうつらみ。
「だから、その辺り、家族に相談するから、連休はうちに来いって言ったの。母さんも会いたい、話したいって言ってたし。サクヤもそれを聞いて嬉しそうだったから」
「・・・そういうことなら、うん、分かった。急いで連休中の予定を調整しよう」
皆して、はあーーーっと深い溜息。
「まだひと月も経ってないのに凄い濃密だね。大変だけど、楽しい。生徒会の皆にも話題を提供しよう」
「くれぐれもサクヤが悪く言われるような事は漏らさないでよ?」
「そこは抜かりなく。サクヤ弟のネタをばら撒くさ」
腹黒出たな。
「では解散。何かあれば影を通して常に情報の更新をはかるように」
「了解」
さて、サクヤは大丈夫かな?
あの後、過呼吸で苦しむサクヤの口を俺の口でふさいで落ち着かせた。
呼吸が元に戻ったのを確認して、着替えさせて、眠りの魔法をかけた。
ついでに安眠香を焚いて、深く眠るようにした。
あんな辛そうな顔・・・。普段ピクリともしない顔が涙に濡れて苦しそうだった。
それ程俺を求めてくれてる。
俺を手放したくないと・・・。
依存だとしても今はいい。
もっと俺を頼ってくれ。
大公のリオネル、長子のガオウ、次男のスオウ。
影の一人はスオウの侍従の各務だ。今は他の影にサクヤを任せている。
「・・・・・・で、どうだった」
リオネルが静かに切り出した。
もちろん、サクヤの噂の事だ。
「噂を振り撒いているのはハルキの取り巻き達。侍従達だな。侍従のうち3人はハルキと同じCクラスにいて、あることないことクラスメイトや食堂、寮内で大袈裟に言いふらしてる。調べるまでもない」
「当然、学園長も理事長も教師でさえ否定しているが。過去にもそんな不祥事など1つもない。アイツら、学園を舐めすぎてる」
ガオウが苛立たしげに告げる。
「直接的な被害がなければいいんだ。全員が否定してるから、噂はそのうち消えるだろうが・・・」
スオウが口を歪ませる。
「ここに来る前、サクヤが少し取り乱したんだ。自分には何もない。あげられるものは次期当主くらいだと淡々と興味なさげに言ってたのに、もしかしたらスオウを狙ってるのかもって思い至ったら急に過呼吸になって・・・」
『スオウだけはいやだ』
そう言って泣いていた。
「スオウはもうサクヤ君にとってなくてはならない存在だって事か」
「・・・こんな状況でなきゃ嬉しかったけど」
「『前世』の記憶が色々と邪魔をしてそうだね」
「そうだった、その前世絡みなんだけど、来週の連休にサクヤを連れて帰るからよろしく」
途端に場がぱあっと明るくなった。
「大歓迎だよ! 何々、誘ったの?」
兄、煩い。
「まあ、誘ったんだけど、今言った前世絡みでちょっと相談があって。・・・今回の噂を聞かせないようにしてたんだけど、俺が席を外した時にクラスのヤツに心配されて教えられたらしい。で、噂自体は気にしてなかったんだけど」
「・・・けど? 何?」
俺は、ちょっと躊躇ったあと教室での会話を口にした。
「『誰彼構わず咥え込むって、何を咥え込むの?』って・・・聞いてた」
「・・・・・・は?」
「真顔、いや何時もだけどそうじゃなくて、声が真面目で、心底不思議そうにクラスメイトに聞いてて」
内容的には下ネタだから、あの中性的な見た目であの口から出た言葉に皆が動揺した。
「・・・・・・アイツ、閨教育受けてなかったんだ」
あの場は大騒ぎにはならなかったけど感覚的には阿鼻叫喚だった。
「え?」
兄さんも父さんもキョトンとした。
「そんな事平然と聞いてくるから、俺、思わず聞いたんだよ。閨教育受けたのかって! そしたら受けてないって。・・・おそらく前世でも知識がないんだよ。だからアイツ『何を咥えるの?』って、真面目な声で聞くんだよ。アイツ、前世から純粋培養された天然ちゃんなんだよ!」
皆、唖然呆然。
「『ナニって何?』って聞かれた時の俺の気持ち分かるか?!」
もうつらみ。
「だから、その辺り、家族に相談するから、連休はうちに来いって言ったの。母さんも会いたい、話したいって言ってたし。サクヤもそれを聞いて嬉しそうだったから」
「・・・そういうことなら、うん、分かった。急いで連休中の予定を調整しよう」
皆して、はあーーーっと深い溜息。
「まだひと月も経ってないのに凄い濃密だね。大変だけど、楽しい。生徒会の皆にも話題を提供しよう」
「くれぐれもサクヤが悪く言われるような事は漏らさないでよ?」
「そこは抜かりなく。サクヤ弟のネタをばら撒くさ」
腹黒出たな。
「では解散。何かあれば影を通して常に情報の更新をはかるように」
「了解」
さて、サクヤは大丈夫かな?
あの後、過呼吸で苦しむサクヤの口を俺の口でふさいで落ち着かせた。
呼吸が元に戻ったのを確認して、着替えさせて、眠りの魔法をかけた。
ついでに安眠香を焚いて、深く眠るようにした。
あんな辛そうな顔・・・。普段ピクリともしない顔が涙に濡れて苦しそうだった。
それ程俺を求めてくれてる。
俺を手放したくないと・・・。
依存だとしても今はいい。
もっと俺を頼ってくれ。
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