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本編
52 野外授業は嵐の予感 その弐
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本日は晴天なり。
なんてどこかで聞いたようなフレーズが浮かぶような、清々しい朝だった。
野外授業当日。
学園長の挨拶の後に野外授業の説明を改めて行った。
事前に説明はされているが、浮かれてよく聞いていなかったり、説明当日に欠席していたりするものもいるからだ。
謹慎中の陽希達のように。
大抵は後でクラスメイトに教わったりするが。
ちゃんと説明責任は果たしたと、各自の責任で行動しろということだ。
「これから、前もって決まった順に10分おきに出発して貰う。体調に不安のある者は無理をして参加をする必要はない。今のうちに申し出るように。また活動中に体調に変化があれば遠慮なく先生や風紀、生徒会の役員に声をかけること。自分だけでなく周りにも迷惑がかかるからな」
「各自持参した荷物を持って待機。呼ばれた班はこちらへ」
「森に入れば先生は助言はしない。1年は上級生に聞くように。2,3年は過度な手助けをするなよ。上級生で何か対処不可能な状況になったら遠慮なく我々風紀に連絡をするように。怪我がないことが一番だからな」
そんな説明をしたあと、順に出発して行った。
基本的にCクラスから出発なので、僕達Sクラスは最後になる。
陽希達は早々に出発したようだ。森に入る瞬間こっちを睨んだようだったが。
大人しくしててくれるといいんだけどな。
面倒くさい。
最近割と動くようになった表情筋が渋い顔を作った。
「見たか、あの顔。何かやらかしそうだな」
「勘弁して欲しい。せっかく楽しみにしてるのに」
「ああ、初野営?」
「そう! 森の中でテント張って泊まるなんてもう楽しみで楽しみで!」
あんまり前のめりでスオウに迫ったので焦ったスオウが落ち着けと言った。
「ごめんなさい」
「楽しそうで良かったよ。ほら、俺達の番」
呼ばれたので移動する。
僕達の班は、僕とスオウ、僕が噂や廃嫡で大変なときに声をかけてくれたクラス委員長のエルネスト君と副委員長のウィル君、食堂で一緒になったアンディ君。
皆、僕を心配してくれて、何も言わずに班に入ってくれた。
僕は友人に恵まれてる。
「やあ、俺達は君らの補助に付く2年と3年だよ。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「うんうん、初々しいねえ。若干熟練者の風格のヤツがいるけど、気にしない気にしない!」
「?」
キョトンとするサクヤ。
思い当たってないのはお前だけだぞと皆の顔が物語っているが、気付いてない。
「気にするな、サクヤ」
「? ぅん? 分かった」
「・・・天然?」
「天然だ」
「かわいい」
「見ないで下さい。やりませんよ」
わいわいしているうちに出発になった。
最初のチェックポイントに行くには、ルートが二つある。
この先の分かれ道で右か左かを選ぶのだ。
距離も起伏も同じくらいだが、出て来る魔物や薬草などがちょっと違う。
当たり外れとまでは言わないが、魔法での探索や気配察知に長けた者がいるとどちらのルートが安全か気付きやすい。
どのルートがいいかは毎年魔物や薬草の育ち具合で変わるので、見極める事が高ポイントになる。
無理して戦闘をする必要はないのだ。
当然、皆がそんなスキルを持っているわけでは
ないので、周りの状況や上級生のアドバイスを受けてルート選びをしたりするのだが。
こちらには規格外がいる。
さも当たり前のように探索魔法を広範囲で、無詠唱で展開している。
しかも常時だ。
分かれ道で地図を広げて、情報を書き込む。
「右は低級の小型の魔物がこことここに一匹ずつ。左はこことこことに三匹ずついて、そっちにはちょっと大きいヤツが一匹。主要な薬草は左に群生してるけど、安全パイを取るなら右かな」
「・・・詳しすぎ・・・て言うか、いつ探索してたの?」
エルネスト君達が驚いて聞いた。
うんうんと先輩たちも頷いている。
「え? 森の入り口からずっと?」
「・・・凄い! さすがサクヤ様! もしや無詠唱ですか?」
「うん。いつもやってるから癖になってて・・・」
真っ直ぐな称賛は慣れなくて擽ったい。
照れてしまう。
「俺達の出番ないねえ」
「楽でいいけどね」
「ソレでどっちを行くかだが・・・」
スオウがまとめ役になる。
「魔物はぶっちゃけ、秒で倒せる自信があるが、薬草を取るか安全を取るかってところかな? サクヤはどうなんだ?」
「うん、こっちは群生してないけど、疎らにちゃんと生えてるから、安全第一で右に行って確実に薬草採取かな」
「それでいいと思う」
「私達もそれがいいです」
皆の同意が得られて、上級生からも何も言われないので右のルートに決まった。
サクサク進んで、的確に薬草を摘んでいく。
採取に少し時間を取られたが、魔物を避けて通れたので、皆、怪我もなく無事に最初のチェックポイントに到着したのだった。
「はー、緊張した」
「お疲れ様。疲れたなら少し休むといいよ」
「そうさせて貰います」
「体力よりも気力がね」
「薬草見つけるの大変だった。サクヤ様は鑑定が?」
「あるけど、この辺の薬草は散々採取したからぱっと見てわかる。自国で冒険者登録してたから常時依頼のものからエリクサーの材料まで」
「はえぇ・・・」
本当にサクヤ様々だな、と皆が尊敬していた。
なんてどこかで聞いたようなフレーズが浮かぶような、清々しい朝だった。
野外授業当日。
学園長の挨拶の後に野外授業の説明を改めて行った。
事前に説明はされているが、浮かれてよく聞いていなかったり、説明当日に欠席していたりするものもいるからだ。
謹慎中の陽希達のように。
大抵は後でクラスメイトに教わったりするが。
ちゃんと説明責任は果たしたと、各自の責任で行動しろということだ。
「これから、前もって決まった順に10分おきに出発して貰う。体調に不安のある者は無理をして参加をする必要はない。今のうちに申し出るように。また活動中に体調に変化があれば遠慮なく先生や風紀、生徒会の役員に声をかけること。自分だけでなく周りにも迷惑がかかるからな」
「各自持参した荷物を持って待機。呼ばれた班はこちらへ」
「森に入れば先生は助言はしない。1年は上級生に聞くように。2,3年は過度な手助けをするなよ。上級生で何か対処不可能な状況になったら遠慮なく我々風紀に連絡をするように。怪我がないことが一番だからな」
そんな説明をしたあと、順に出発して行った。
基本的にCクラスから出発なので、僕達Sクラスは最後になる。
陽希達は早々に出発したようだ。森に入る瞬間こっちを睨んだようだったが。
大人しくしててくれるといいんだけどな。
面倒くさい。
最近割と動くようになった表情筋が渋い顔を作った。
「見たか、あの顔。何かやらかしそうだな」
「勘弁して欲しい。せっかく楽しみにしてるのに」
「ああ、初野営?」
「そう! 森の中でテント張って泊まるなんてもう楽しみで楽しみで!」
あんまり前のめりでスオウに迫ったので焦ったスオウが落ち着けと言った。
「ごめんなさい」
「楽しそうで良かったよ。ほら、俺達の番」
呼ばれたので移動する。
僕達の班は、僕とスオウ、僕が噂や廃嫡で大変なときに声をかけてくれたクラス委員長のエルネスト君と副委員長のウィル君、食堂で一緒になったアンディ君。
皆、僕を心配してくれて、何も言わずに班に入ってくれた。
僕は友人に恵まれてる。
「やあ、俺達は君らの補助に付く2年と3年だよ。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「うんうん、初々しいねえ。若干熟練者の風格のヤツがいるけど、気にしない気にしない!」
「?」
キョトンとするサクヤ。
思い当たってないのはお前だけだぞと皆の顔が物語っているが、気付いてない。
「気にするな、サクヤ」
「? ぅん? 分かった」
「・・・天然?」
「天然だ」
「かわいい」
「見ないで下さい。やりませんよ」
わいわいしているうちに出発になった。
最初のチェックポイントに行くには、ルートが二つある。
この先の分かれ道で右か左かを選ぶのだ。
距離も起伏も同じくらいだが、出て来る魔物や薬草などがちょっと違う。
当たり外れとまでは言わないが、魔法での探索や気配察知に長けた者がいるとどちらのルートが安全か気付きやすい。
どのルートがいいかは毎年魔物や薬草の育ち具合で変わるので、見極める事が高ポイントになる。
無理して戦闘をする必要はないのだ。
当然、皆がそんなスキルを持っているわけでは
ないので、周りの状況や上級生のアドバイスを受けてルート選びをしたりするのだが。
こちらには規格外がいる。
さも当たり前のように探索魔法を広範囲で、無詠唱で展開している。
しかも常時だ。
分かれ道で地図を広げて、情報を書き込む。
「右は低級の小型の魔物がこことここに一匹ずつ。左はこことこことに三匹ずついて、そっちにはちょっと大きいヤツが一匹。主要な薬草は左に群生してるけど、安全パイを取るなら右かな」
「・・・詳しすぎ・・・て言うか、いつ探索してたの?」
エルネスト君達が驚いて聞いた。
うんうんと先輩たちも頷いている。
「え? 森の入り口からずっと?」
「・・・凄い! さすがサクヤ様! もしや無詠唱ですか?」
「うん。いつもやってるから癖になってて・・・」
真っ直ぐな称賛は慣れなくて擽ったい。
照れてしまう。
「俺達の出番ないねえ」
「楽でいいけどね」
「ソレでどっちを行くかだが・・・」
スオウがまとめ役になる。
「魔物はぶっちゃけ、秒で倒せる自信があるが、薬草を取るか安全を取るかってところかな? サクヤはどうなんだ?」
「うん、こっちは群生してないけど、疎らにちゃんと生えてるから、安全第一で右に行って確実に薬草採取かな」
「それでいいと思う」
「私達もそれがいいです」
皆の同意が得られて、上級生からも何も言われないので右のルートに決まった。
サクサク進んで、的確に薬草を摘んでいく。
採取に少し時間を取られたが、魔物を避けて通れたので、皆、怪我もなく無事に最初のチェックポイントに到着したのだった。
「はー、緊張した」
「お疲れ様。疲れたなら少し休むといいよ」
「そうさせて貰います」
「体力よりも気力がね」
「薬草見つけるの大変だった。サクヤ様は鑑定が?」
「あるけど、この辺の薬草は散々採取したからぱっと見てわかる。自国で冒険者登録してたから常時依頼のものからエリクサーの材料まで」
「はえぇ・・・」
本当にサクヤ様々だな、と皆が尊敬していた。
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