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最後の異世界生活~カノン編~
~もう一つのうわさ~
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和やかな空気に戻り、原さんは座っていた場所に座り直し、残っていたお弁当を食べ始めた。
カノンや峰岸君も、原さんと同様にお弁当を平らげていく。
「ですが…本当に不思議な感覚ですわ…。
ついこの間、雅君にお会いしたと思っていましたのに、こんなにも印象と言いますか、雰囲気が違っていて、数か月しか経っていないのに、すごく変わっていて、えーっと…この世界の…子ども達に聞かせるお話にありませんでしたでしょうか…。
人間に助けられた小動物が、その人を山奥に連れて行って背中の薪に火をつけたと言うお話。」
「何それ、こわ!それを言うなら、森で助けた大きい動物が実はおばあちゃんだったって話でしょ。」
「…………ツッコんだほうがいい?」
「私のはともかく、カノンちゃんのはツッコんであげて。」
「…いや、二人ともその童話いろいろ違うし、混ざってるし、怖いよ。」
「結局、二人分ツッコむのかい!」
「だって、やっぱり気になったし!」
カノンや原さんの言った童話の内容に、ツッコむべきか悩んだ峰岸君は結局二人分ツッコんだ事で、原さんに呆れた表情を向けられた。
その様子を見ていたカノンは、クスクスと小さく笑った。
「だいたい、カノンちゃんが可笑しな童話を持ち出すからだよ。
ようはあれでしょ、峰岸君の振る舞い方とかいろいろ変わり過ぎてるのを見て、遠い国に行って、数か月で帰って来たらいろいろ世界が変わっていて、周りに知らない人ばかりだったっていう童話みたいって。」
「それですわ!いのりちゃんナイスです!!」
原さんの上手くまとめた言葉にカノンは納得し、尊敬の眼差しを向け、カノンのその眼差しを受けた原さんは、得意げな表情を見せた。
そんな中、峰岸君は少し気まずそうな表情を浮かべる。
「強くなりたい…って思ったのは事実で、今もそうありたいと思っているんだけど……人によっては少し間違うみたいで、上手くいかないんだ。
そんな事を言うつもりはないと思っていて、でも、口に出してしまっていて…。
言葉は…難しいよ。」
峰岸君は、反省の色を浮かべた表情で俯きながらそう話した。
カノンや原さんにはその表情が少しだけ寂しそうに見えた。
「………その人物とは…美桜さんのお兄様でしょうか…。」
峰岸君は、カノンの言葉に俯いていた顔を上げ、驚いた表情でカノンを見た。
そんな峰岸君の様子にカノンはふふっと小さく笑って、話を続けた。
「美桜さんの日記に、要さんと雅君のやり取りの事が書かれていましたの。
『雅君の勝気な姿に驚いたし、お兄ちゃんもあんなに言い返していて驚いた。……けど、二人とも心なしかすごく楽しそうと思った』と。
要さんは…何と言いますか…少し性格や言い方に難がある所がありますが、妹思いがこじれただけで、根は悪い人ではないと思うのです。
なので、雅君とのやり取りも、きっと大丈夫ですわ。
むしろ、雅君の頑張っているという背景を汲み取ってくださっていると思います。なんとなく…そう思うのです。」
「……そうかな…そうだと…いいな。」
峰岸君はカノンの言葉を受け、少しだけ肩の荷がおりたような表情を浮かべた。
原さんは二人のやり取りを静かに見守っていた。
三人は話が一段落した事で、食べ終わったお弁当箱を片付け、お昼休憩終了のチャイムが鳴る前に教室に戻る為、屋上を後にした。
三人が教室に戻っている途中、カノンがふと思い出したように、恐る恐る噂の事を口にした。
「そういえば、この学校に幽霊が出る…といのりちゃん、朝言ってましたわよね。出る場所とか決まっているのでしょうか…。」
「んーと…誰もいなくなった放課後の図書館…と、第三音楽準備室…だったかな…。なんか、髪の長い女の人の幽霊が出るんだって。」
「第三音楽準備室って、今は物置に使われている所だよね。」
「うん、その音楽室から、あるはずのないピアノの音が聞こえたりするんだって。
図書館は笑い声と、何かカリカリと搔きむしる?音が聞こえるって。」
「すごい具体的な内容だね。そんなに具体的だと、実際に聞いた人がいるって事だよね。」
「うん、みたい…って…あれ、カノンちゃんは…。」
廊下を歩きながら噂について峰岸君と原さんが話していると、自分の隣にいたはずのカノンの姿がない事に気付いた原さんが、キョロキョロとカノンの姿を捜した。
カノンは峰岸君と原さんの後ろをトボトボと歩いていて、その顔は真っ青だ。
噂の内容があまりにも具体的すぎる事に、恐怖心が出て歩く速度が落ち、二人の後ろを歩いていたのだ。
そんなカノンに原さんは心配な表情を浮かべ問いかけた。
「…美桜ちゃん、怖いの?」
「こ、怖くはありませんわ!幽霊の一人や二人、どんとこいですわ!!」
原さんの問いにカノンは、胸を張り、強気な態度を見せた。
次の峰岸君の言葉でその強気な態度は一瞬にして崩れ落ちる。
「…美桜ちゃん、後ろに髪の長い、女の人…。」
「~~#%&△〇?!」
峰岸君の言葉や表情、しぐさ、全ては演技だったのだが、カノンには演技に見えず、恐怖のあまり言葉にならない言葉を発し、全速力でその場から逃げ出した。
カノンや峰岸君も、原さんと同様にお弁当を平らげていく。
「ですが…本当に不思議な感覚ですわ…。
ついこの間、雅君にお会いしたと思っていましたのに、こんなにも印象と言いますか、雰囲気が違っていて、数か月しか経っていないのに、すごく変わっていて、えーっと…この世界の…子ども達に聞かせるお話にありませんでしたでしょうか…。
人間に助けられた小動物が、その人を山奥に連れて行って背中の薪に火をつけたと言うお話。」
「何それ、こわ!それを言うなら、森で助けた大きい動物が実はおばあちゃんだったって話でしょ。」
「…………ツッコんだほうがいい?」
「私のはともかく、カノンちゃんのはツッコんであげて。」
「…いや、二人ともその童話いろいろ違うし、混ざってるし、怖いよ。」
「結局、二人分ツッコむのかい!」
「だって、やっぱり気になったし!」
カノンや原さんの言った童話の内容に、ツッコむべきか悩んだ峰岸君は結局二人分ツッコんだ事で、原さんに呆れた表情を向けられた。
その様子を見ていたカノンは、クスクスと小さく笑った。
「だいたい、カノンちゃんが可笑しな童話を持ち出すからだよ。
ようはあれでしょ、峰岸君の振る舞い方とかいろいろ変わり過ぎてるのを見て、遠い国に行って、数か月で帰って来たらいろいろ世界が変わっていて、周りに知らない人ばかりだったっていう童話みたいって。」
「それですわ!いのりちゃんナイスです!!」
原さんの上手くまとめた言葉にカノンは納得し、尊敬の眼差しを向け、カノンのその眼差しを受けた原さんは、得意げな表情を見せた。
そんな中、峰岸君は少し気まずそうな表情を浮かべる。
「強くなりたい…って思ったのは事実で、今もそうありたいと思っているんだけど……人によっては少し間違うみたいで、上手くいかないんだ。
そんな事を言うつもりはないと思っていて、でも、口に出してしまっていて…。
言葉は…難しいよ。」
峰岸君は、反省の色を浮かべた表情で俯きながらそう話した。
カノンや原さんにはその表情が少しだけ寂しそうに見えた。
「………その人物とは…美桜さんのお兄様でしょうか…。」
峰岸君は、カノンの言葉に俯いていた顔を上げ、驚いた表情でカノンを見た。
そんな峰岸君の様子にカノンはふふっと小さく笑って、話を続けた。
「美桜さんの日記に、要さんと雅君のやり取りの事が書かれていましたの。
『雅君の勝気な姿に驚いたし、お兄ちゃんもあんなに言い返していて驚いた。……けど、二人とも心なしかすごく楽しそうと思った』と。
要さんは…何と言いますか…少し性格や言い方に難がある所がありますが、妹思いがこじれただけで、根は悪い人ではないと思うのです。
なので、雅君とのやり取りも、きっと大丈夫ですわ。
むしろ、雅君の頑張っているという背景を汲み取ってくださっていると思います。なんとなく…そう思うのです。」
「……そうかな…そうだと…いいな。」
峰岸君はカノンの言葉を受け、少しだけ肩の荷がおりたような表情を浮かべた。
原さんは二人のやり取りを静かに見守っていた。
三人は話が一段落した事で、食べ終わったお弁当箱を片付け、お昼休憩終了のチャイムが鳴る前に教室に戻る為、屋上を後にした。
三人が教室に戻っている途中、カノンがふと思い出したように、恐る恐る噂の事を口にした。
「そういえば、この学校に幽霊が出る…といのりちゃん、朝言ってましたわよね。出る場所とか決まっているのでしょうか…。」
「んーと…誰もいなくなった放課後の図書館…と、第三音楽準備室…だったかな…。なんか、髪の長い女の人の幽霊が出るんだって。」
「第三音楽準備室って、今は物置に使われている所だよね。」
「うん、その音楽室から、あるはずのないピアノの音が聞こえたりするんだって。
図書館は笑い声と、何かカリカリと搔きむしる?音が聞こえるって。」
「すごい具体的な内容だね。そんなに具体的だと、実際に聞いた人がいるって事だよね。」
「うん、みたい…って…あれ、カノンちゃんは…。」
廊下を歩きながら噂について峰岸君と原さんが話していると、自分の隣にいたはずのカノンの姿がない事に気付いた原さんが、キョロキョロとカノンの姿を捜した。
カノンは峰岸君と原さんの後ろをトボトボと歩いていて、その顔は真っ青だ。
噂の内容があまりにも具体的すぎる事に、恐怖心が出て歩く速度が落ち、二人の後ろを歩いていたのだ。
そんなカノンに原さんは心配な表情を浮かべ問いかけた。
「…美桜ちゃん、怖いの?」
「こ、怖くはありませんわ!幽霊の一人や二人、どんとこいですわ!!」
原さんの問いにカノンは、胸を張り、強気な態度を見せた。
次の峰岸君の言葉でその強気な態度は一瞬にして崩れ落ちる。
「…美桜ちゃん、後ろに髪の長い、女の人…。」
「~~#%&△〇?!」
峰岸君の言葉や表情、しぐさ、全ては演技だったのだが、カノンには演技に見えず、恐怖のあまり言葉にならない言葉を発し、全速力でその場から逃げ出した。
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