【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス

文字の大きさ
16 / 35
本編

第十五話 ファステス王子 自分の頭の悪さを知る

しおりを挟む
 ファステス王子は暇を持て余していた。

 本来の王子なら暇なんかあるわけがなく、山の様に積まれた勉強資料をこなさなければならないのに、全く手をつけていなかった。

 本人にやる気がなければそれは暇となる。

 そんな事よりもファステス王子は何としてもマーテルリアに会いに行ける方法がないかを探しているのだった。

 ファステス王子はある程度の権限は与えられてはいる…が、全てでは無い。

 北の区画から南の区画に行くのが面倒だから、城内を通って南の区画に行けないかどうかを命令した所…理由を尋ねられた。

 理由はマーテルリアに会いに行くと言ったら却下されたのだった。

 別に南の区画に行く事自体は問題は無い…が、理由がマーテルリアに会いに行くでは当然許可は降りなかった。

 そしてファステス王子は嘘を付いたのだが…?

 最初にマーテルリアに会いに行くと言われたから、他の適当な理由を付けて命令しても許可が降りなかった。

 そこでファステス王子は、自分よりも権限のある父親…国王陛下に頼む事にした。

 …が、当然却下された。

 ただし、1つだけの条件を除いて…?

 「婚約者に会いに行きたいからと言うのであれば、東か西の区画を抜けて行くになら別に構わんぞ!」

 「それが面倒なので、城から南の区画に行きたいのですが…」

 「それはならん! どうせ来年になれば会える訳だし、それまでは大人しく待っていろ‼︎」

 「くっ…!」

 そう言われて素直に引き下がるファステス王子では無い!

 だが、その場では従ったフリをして謁見の間から出て行った姿を見て国王陛下は言った。

 「今のお前に東も西の区画を通れるとは思えんがな…」

 ファステス王子は西の区画から通ってマーテルリアに会いに行く為に、通路を通っていると…奇妙な扉があった。

 そこにはドアノブがなく、扉に文字が刻まれていた。

 【問題! ゼーヴェンス王国の初代国王の名前を入力せよ‼︎】

 「は?」

 王族なら知っていても当然な問題…の筈が、ファステス王子は分からなかった。

 「初代国王の名前って…偉く長くてややこしい名前だった気がする? ハリハリベルソ…ちがうな、アリカリアオリ…?」

 ファステス王子は幾ら考えても名前が分からずに、パネルを適当に入力した。

 …が、適当に入力して正解に辿り着く訳もなく、2時間の格闘の末に…

 諦めて東の区画から向かおうとしていた。

 だが、東の区画にも同じ問題の扉があり、同じ問題が書かれていた。

 「此処もかよ! だからシラねぇっつーの‼︎」

 ファステス王子は答えが分からずに、扉が開いてから通り抜けようと考えていた。

 だが、いつまで待っても扉が開かれる事も無く…やっと開いて通り抜けたら、また別の扉が待っていた。

 【問題! 初代聖女の名前を入力せよ‼︎】

 「だから、知らねぇよ‼︎」

 ファステス王子は確かピエスの授業で習った気はするが、朧げに覚えていた程度だったので…正解に導ける訳もなく、部屋に戻る為に元の場所に戻った。

 …が?

 【問題! ゼーヴェンス王国の初代国王の名前を入力せよ‼︎】

 「げげっ⁉︎」

 この通路に窓は一切無いし、壁は分厚い大理石。

 壁を破壊する道具はないし、扉が開かない限り出る事も許されない。

 ファステス王子はすぐにでも部屋に戻りたくてパネルを何度も入力するが、正解に辿り着く事はなかった。

 腹が減り、尿意が襲って来て動く事ができず…そして扉は開く気配も無い。

 一分一秒を争う事態でも、正解に辿り着けなかったファステス王子は…漏らしてしまった。

 そしてピエスが騎士達を連れて扉を開いてファステス王子を迎えに来たのだが…?

 ファステス王子は手で顔を覆いながら地面に横になっていた。

 「王子、これで分かったでしょ? 勉強が如何に大事な事かを…」

 ファステス王子は無言で頷くと、そのまま騎士に抱えられて部屋へと戻って行った。

 その報告を聞いた国王陛下は、溜め息を吐きながら言った。

 「やはりあの馬鹿に通れる訳が無かったか…」

 ファステス王子は心を入れ替えて勉強に身を置く事になった。

 そしていつかまた挑戦して正解を導き出して…マーテルリアに会いに行くと‼︎
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

[完結]だってあなたが望んだことでしょう?

青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。 アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。 やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

処理中です...