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第四章 別大陸での活動の章

第十四話 賢斗との会話(何か…こういう日は久々な気がします。)

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 昨日の祝勝会はとても楽しかった。
 久々な食事にかつての友達との会話…まぁ、たった数時間では語り尽くせない程皆で話した。
 その後は宿屋で宿泊して、その翌日…僕は皆に今日の予定を伝えた。

 「まず、華奈も飛鳥も昨日の祝勝会での会話では話したりない事もあるかもしれないけど、今日は賢斗と二人っきりで話をさせて欲しいので、皆にはそれぞれやって貰いたい事があります。」

 僕は皆を見渡して言った。
 
 「まず、レイリアは華奈と一緒に、華奈から治癒や補助魔法を習って欲しい。 レイリアは必ず導師でお願いね。」
 「「うん、わかった。」」
 「ガイウスと飛鳥は、2人で行動してくれ。 飛鳥はガイウスに槍を教えてあげて!」
 「けどダン…紅蓮院流槍術はガイウスさんに一通り教えたんじゃないの?」
 「基本的な槍の使い方と秘儀位はね。 だけど奥義や秘奥義の類は教えてはいない。」
 「わかったよ、ガイウスさん宜しくお願いします。」
 「敬語は不要だ、姉弟子よ! 宜しく頼む。」 
 「クリスは、レイリアと華奈の警護についてくれ。」
 「わかったにゃ!」
 「ベルは…そろそろ造形魔法をやってもらおうか。」
 「造形魔法ですか?」

 僕はそう言って、無属性魔法でガイウスとクリスを作って動かした。
 ガイウスは槍を振るっていて、クリスは盾とメイスを交互に使っていた。

 「………とやってはみたが、これをいきなりやるのは難しいので、鳥でやろう。 ただし、1度に2匹をこうやってね。」

 僕は無属性魔法で鳥を2匹作りだして、それぞれ違う動きをしてみせた。
 2匹の鳥は、まるで生きているかのように滑らかな動きをしていた。

 「おそらくベルは、武器や…盾は少し及第点だな。 だが、固定されている物は、ほぼ作れるので…次は動くものを作りだそう。 出来る?」
 「えっと…1匹なら出来るかな?」
 「これのやり方は青空魔法教室でやったと思うけど、右手と左手のそれぞれ違う物を描いたあれの応用だよ。」
 「頑張ってみます!」 
 「ご褒美はね…チョコレートパフェなんかどうかな?」
 「また新たなワードが!?」
 「あちきも食べたいにゃ!」
 「「「私達も食べたい!」」」
 「それぞれの練習が終わって、夜になったら作ってあげるから、とりあえず皆は出て出て!」
 
 皆は部屋から出て行った。
 これでゆっくり賢斗と話が出来る!
 僕等は話し始めたのだった。

 「とりあえず、何から話す?」
 「ダンの話をしてくれないか?」
 「僕の話ねぇ…? 何が聞きたい?」
 「一番は、あの光を纏った姿の話を聞きたいが…だけど、それよりも気になっているのは、包丁しか装備出来なかったダンが剣を持っている事が気になった。」
 「あぁ、魔剣アトランティカか…」
 「魔剣?」

 《なぁ、アトランティカ… もしかして異世界人になら…賢斗になら声が伝わったりしない?》
 《いや、あの時は誰とも同調していなかったから異世界人になら誰とでも喋れたと思うが、相棒と同調している限りでは、聖剣を手に入れた勇者となら会話もできるかもしれないが…》
 
 「あ、賢斗ごめん。 この魔剣は実は意志を持っていて、太古の時代の勇者が使っていた剣なんだけど…」
 「さすが異世界だな、剣も喋るのか…」

 「だけど、僕と完全に同調しているから、僕以外の人間だと翔也くらいかな? 翔也が聖剣を手に入れたら、僕の魔剣との会話も可能らしい。」
 「ん? どういう事だ?」
 「この剣は、元々は聖剣で…太古の昔に勇者が使っていた剣だったんだけど、長い間に放置されている間に聖剣としての能力がなくなり、魔剣となったんだけど、この魔剣と聖竜国グランディオにある聖剣は兄妹らしく、その聖剣を翔也が手に入れれば、向こうの聖剣の声も聞こえる様になるらしいと。 反対も然り。」
 「太古の昔の勇者ねぇ…? 俄かには信じられない話だが…」
 「まぁ、そうだよねぇ…。 この剣の声が元いた世界で話せる人がいたら、歴史が変わるかもしれない大事件になるしね。」
 「歴史が変わる?」
 「この剣の先代の持ち主がね、織田信長だったんだよ。」
 「はぁぁぁぁぁ!?」
 「まぁ、そういう反応になるよな。 僕も同じ反応をしたよ。」
 「織田信長って、あの織田信長か?」
 「本能寺の変で、寺に火を付けられて燃えていく中で死を覚悟した信長が異世界に救世主召喚さたんだと。 だから、歴史の教科書には寺の中から遺体が出てこなかったのは、この世界に呼ばれたからなんだと。」
 「なるほど、そりゃ歴史が変わるわな。」

 僕の元いた世界の織田信長は、焼け落ちた本能寺から死体は上がって来なかった。
 僕の居た地球以外にも他に地球があるが、微妙な周波数による振動で他の地球には渡れないらしい。
 ただちょっとした変動で他の地球からの物が流れて来るという話だった。

 「まぁ、魔剣の話はこれ位にして…」
 「そうだな、十六鬼影衆の特徴を教えてくれないか? 今後の八魔将との戦いに役立たせる為に…」
 「正直な事をいうと、十六鬼影衆は魔王が趣味で作った兵隊みたいな物らしい。 なので、八魔将はまた別な物として考えるべきなのだが…」
 「何か含みのある言い方だな。」

 あの話をして…賢斗は怒らずに聞いてくれるのだろうか?
 まぁ、多分無理だろうな。

 「賢斗、これは真面目な話なんだが聞いてくれるか?」
 「何だ? 改まって…」
 「今後の戦いに八魔将か四天王、三元将のどれかと戦いになった時に…」
 「あぁ…」
 「ぬいぐるみだけには気を付けろ!」
 「はぁ? ぬいぐるみ!? ダン、何をふざけているんだよ!!」
 「だから賢斗、真面目な話だと言ったろ。」
 「ぬいぐるみに気を付けろと言われて、真面目な話に聞こえるか! それで、はいそうですか…なんて言える訳ないだろ!!」
 「その反応は良く解る。 ガイウスにも同じ話をすれば多分同じ反応をされる筈だからな。 だが事実だ!」
 「詳しく話を聞いても良いか?」
 「昨日戦ったあの8体のゲームの駒みたいな奴等も、確かに強い相手だった。 だが、攻撃力という点では大した事は無かったが、こちらの攻撃を全て躱したんだ、そのぬいぐるみがな。」
 「どんな特徴なんだ?」
 「見た目的には、ピンクのクマのぬいぐるみで体長は2mくらいあった。 あのぬいぐるみが小さいサイズなら、女の子の部屋や小さい子のベッドの片隅にありそうなクマだったよ。」
 「んで、戦法は?」
 「ぬいぐるみの癖に、速度は音速を越えていた。 僕のスキルのほとんどの攻撃を躱し、無属性の100本の槍ですら掠る事も出来ず、炎魔法を喰らわせようとしても高速回転で炎を消されて打つ手が無かったんだけど…」
 「話だけ聞いている分には全く信じられないな。 ふざけて言っている様にしか聞こえん。」
 「まぁ、僕も聞かされるだけならそう思うよ。 ところが鑑定で面白い情報が得られてね。 全身ピンク色を別な色に変えると、それまでの動きが無くなって攻撃が当たる様になったので、それで倒した。」
 「なるほどね…。 んで、なんでぬいぐるみに気を付けろと?」
 「そいつが最後にこう書いたんだよ。 僕はぬいぐるみの中でも最弱だ。 仇は兄弟たちが取ってくれるとね。」
 「なるほど、それは脅威だな。」
 「昨日の8匹の中にそいつの兄弟がいなかった事を考えると、八魔将、四天王、三元将のどれかにいると考えた訳だ。 しかも、と言ったからな、残り1匹とは考えにくいだろ?」
 「確かに、そう言ったのなら1匹だけとは限らないな…。」

 まぁ、これだけで事が済むのなら大した問題ではない。
 問題はこの後だ!

 「そして、更に厄介な事がもう1つある…」
 「まだ何かあるのか?」
 「華奈が極度のぬいぐるみ好きだ!」
 「あぁーーーそうだった!」
 「他の兄弟たちがどういう能力を持っているかはわからんが、もしも魅了を持っているぬいぐるみが華奈に掛かったりすると…?」
 「確実に掛かる上に敵に回るな。」
 「賢斗にその話をしたのはその為だ。 対策を考えてくれ…」
 「なるほど、確かに真面目な話だな。」

 賢斗は頭を悩ました。
 華奈の誕生日プレゼントは、いつも決まってぬいぐるみだったからな。
 特にくまのぬいぐるみの敵が出てきたら、「こんな可愛いくまさんにどうしてこんなに酷い事が出来るの?」とか言って庇いそうだしな…。

 「弱点は色を変える事だったんだよな?」
 「ピンクのくまの時は、ピンクが弱点でピンクこそが最強、ピンクこそが至高、ピンクこそが無敵と鑑定に書かれていたからな。」
 「確かにそれだと、ピンクをどうにかすれば良いという話になるな。」
 「やり方は言わないでおく、恐らく賢斗には出来ないから。」
 「ダンがそう言うなら、僕には無理なんだろうな。 それでさ、そのくまは凶悪そうな顔をしていたか?」
 「あ、そうだ! こうすれば良かったんだよな? まずは無属性魔法であの時のくまを作りだして、ペイントでピンクにすると…こんな感じの敵だった。」
 「あぁ…全然凶悪そうな顔ではないな…そして更に華奈にはドストライクだ。」
 「ただ、兄弟たちというのが必ずしもくまだとは限らないだろ?」
 「あぁ、そうだな。 他の動物の可能性があるな…というか、くま以外であってほしい!」
 「…と、話はこれくらいか?」

 はぁ…信じて貰えてよかった。
 クソ真面目な賢斗の性格だと信じて貰えない可能性があったからな。

 「そうだな、あとはダンのあの力について聞きたい所だが…」
 「すまない、あの力に関してはまだわからない事が多いんだ。 解り次第教えるよ。」

 そんなに長い話をしていた訳ではなかったのだが、窓の外を見ると空が赤く染まりだしていた。

 「もう夕方か、随分話し込んでいたな。」
 「そういえば皆帰ってこないな、何処まで行ったんだろ?」
 「迎えに行くか?」
 「そうだな、隣の部屋にいるベルを呼んでくるよ。 賢斗は外で待っていてくれ。」

 賢斗は町の出口に向かった。
 そして僕と合流すると、僕は球体からシルフィンダーを出した。
 賢斗はシルフィンダーを見て驚いていた。

 「あ、そういえば見せた事無かったな…」
 「ダン…君が作ったのか? 異世界に車かよ…」
 「あ、もう1台ある。 この車には全員は乗れないし、帰りに見せてあげるよ。」
 「ダンは本当に天才だな。 僕なんかと違って…僕は馬車を如何に長距離を走らせる事しか考えてなかったからな。」

 僕とベルと賢斗は、シルフィンダーに乗りフライトモードで探した。
 町のすぐ近くにいた華奈とレイリアとクリスを乗せた後、少し離れた場所でガイウス達と合流した。
 
 「ダン、あちきは風呂に入りたいにゃ!」
 「風呂か…他の皆も入りたいの?」

 皆は一斉に頷いた。
 僕は風呂の用意を始めた。
 そして、ムフフな展開が待って…?

 「はい、それでは賢斗君…お風呂を作りますよ。」
 「風呂を作るって…露天風呂でも作るつもりか?」
 「いや、ちゃんと建物を用意して…って、賢斗達は城から出て以降は風呂はどうしていたの?」
 「水と火の複合でお湯を作って、体拭き。」
 「だろうね…生活魔法ないと不便だね。 やり方的には難しくないから見ておいて。」
 「うん、これで風呂に入れる機会が増えるなら…」
 「まず、風魔法の刃で草原の場合は根元から草を刈ります。」
 「ふんふん…」
 「土魔法で掘り返してから、固めた後にまっさらにします。」
 「なるほど…」
 「適当な場所に土魔法で穴を縦に長く掘り、排水溝の穴を作ります。」
 「うん。」
 「次に土魔法で、浴槽と段差を作ります。」
 「段差…腰掛け用か。」

 ここ迄の説明では問題なさそうだな?
 さて、ここからは…賢斗に出来るかな?

 「更に土魔法で壁を作ります。」
 「これ…結構作るのムズイぞ!」
 「天井を作り、天窓か煙突を作ります。 ここから換気。」
 「それもムズイよ。」
 「中は、洗い場と脱衣場に分けてから、脱衣場と洗い場の中間に扉を作ります。」
 「ダンは樹の魔法も使えるのか?」
 「入り口にも扉を付ける。これで建物は完成です。」
 「これは、即興で作った物にしては完成度高いな。」
 「次は洗い場に移動して、樹魔法で桶と椅子を5つ、大きなタライは土魔法で良いでしょう。」
 「この大きなタライの使い方は?」
 「浴槽には、先程言った通りに火と水の複合魔法でお湯を張り…」
 「うん、これなら僕も出来るよ。」
 「そして、この大きなタライには、泡魔法で山盛りに…」
 「ちょっと待て! 泡魔法って何だ!?」
 「僕の固有スキルで垢から汚れから頭皮の油も髪の艶まで出す事が出来る魔法。 無理な場合は石鹸でも作れ。」
 「錬金術あるから、作ってみるか…」
 「これで完成です。」
 「ハッキリ言って、土魔法とお湯以外は参考にならん!」

 完成した風呂の建物を見て、華奈と飛鳥は呆けていた。
 レイリア達は見慣れているので特に何も思っていなかった。

 「では、女の子達からどうぞ。 洗い場に全員入ったら教えてね。 脱いだ服をクリーン魔法を掛けておくから。」
 「クリーン…あぁ、生活魔法か。」

 女の子達は、入り口の扉を開けて入って行った。
 少ししてから、華奈と飛鳥の悲鳴に似た声が聞こえて来た。

 「3人が着てる下着って、凄い完成度だわ!」
 「ボクも下着はこの世界で買った物だけど、機能性ばかりで元いた世界の様な下着は無いんだよね。」
 「あ、これは師匠が作ってくれたの。」
 「あちき達が裸になって、ダンに寸法を測って貰って作って貰ったにゃ!」
 「ダンのスキルって凄いよね! 今はマダム・ラスティーナがこれと同じ物を作っているから、その内に店で販売される様になるよ。」

 なんか僕の話をしているみたいだな。
 ベルの僕への呼び方が師匠になっているな…?

 「ダンに裸を見られて恥ずかしくなかったんですか?」
 「「別に…」」
 「早く入ってくれ! クリーン魔法が掛けれない。」

 僕が声を掛けると、今度は洗い場の方から声がしてきた。
 僕は扉をノックしてから返答がない事を確認してから、扉を開けて入ろうとした。

 「ダン、解っているとは思うが覗くなよ!」
 「ガイウス、僕ってそこまで信用出来ないか?」
 「「出来ん!!」」
 
 2人が声を揃えて返事をした。
 僕は2人にどう思われているんだろう?
 脱衣場に行き、皆の服をクリーン魔法で綺麗にすると、素早く外に出て来た。
 
 「あれ? 何かこっちに向かって来てる奴がいるな。 あれは、グレートホーンブルかな? ガイウス、頼む!」
 「おぅ! 任せろ!」
 「彼1人で平気なのか?」
 「ガイウスとの旅では、あの程度の奴は何度も倒しているからな。」

 遠くの方でガイウスとグレートホーンブルは戦っていた。
 ガイウスはジャンプすると、眉間に槍をさして倒していた。

 「ほらな?」
 「さすがだな…」

 賢斗は何か考えている様な感じだった。
 僕は察して声を掛けた。

 「覗きたいのか? なら、付き合うぞ!」
 「んな訳ないだろ‼ ダンのシルフィンダーだっけ?…について考えていたんだよ。」
 「あぁ、中々良い出来だろ?」
 「もう一度じっくり見せてくれないか?」

 僕は、シルフィンダーとシルロンダーを目の前に出した。
 賢斗は、2台を見て唖然としていた。

 「これはさっきの車で、こっちのジープも作ったのか⁉」
 「元いた世界の車の設計図がベースになっている。 あっちの車はエンジンを使うけど、こっちは魔力で動く。」

 僕はそういって、ボンネットを開けた。
 すると、エンジンのある場所に球体がはまっていた。
 賢斗は車の隅々を見て、考え込んでいた。

 「賢斗もさぁ、作ってみたら良いんじゃないかな?」
 「作ろうと思って作れる物でもないだろ?」
 「賢斗ってさぁ、確か錬金術のスキルを持っていたよね? 材料さえ揃っていれば、錬成で作れるんじゃないかな?」
 「簡単に言うな! ダン、ちなみにこれを作るまでに掛った期間は?」 
 「1か月ちょい…」
 「1か月でか?」
 「あ、でも…シルフィンダーは2か月くらい掛ったな。 材料を揃えるのに時間が掛かり過ぎて…」
 「それでも2か月かよ…ダンは本当に天才だな!」
 「賢斗だって天才じゃないか! 僕には劣るけど…」
 「ハッキリ言うな! 少し腹立ったぞ‼」
 「でも、確かに馬車より早いし、こういう移動手段があるのは良いかもね。 ダン、一緒に作ってくれないか?」
 「作るのは構わないけど、その間は旅が出来なくなるよ。 平気?」
 「僕等のパーティとダンのパーティがしばらく一緒に行動するというのはどう?」
 「悪くはない考えではあるけど、翔也は大丈夫か?」
 「事情が事情なら、説得すれば何とかなるだろう。」
 「そうなると、しばらく一緒に行動かぁ…」

 幼馴染達と一緒に行動するのは構わない…が?
 それだと…どうしてもある不安材料が頭に浮かんでくる。

 「何か不安でもあるのか?」
 「華奈の性格上…こんな大所帯で1人でご飯を作るのは負担になるから、私も作る…とか言い出さないか不安でな。 旅の間はどうしていたんだ?」
 「華奈に魔法耐性弱体を掛けてから眠らせている隙に…とか、睡眠魔法で寝なかった時は華奈の頭を後ろから殴って気絶させている間に飛鳥が作っていた。」
 「えげつない事するな…でもまぁ、そうでもしないと作るか…」
 「ダンが最初の被害者だったんだよね?」
 「雲の向こうで、両親と瑠香が手を振っていたよ。」
 「笑えない冗談を言うのはやめろ! 思わず信じそうになったぞ‼」
 「何を信じそうになったの?」
 「え…って、うわぁ⁉」

 賢斗との話が夢中で、いつの間にか華奈が出てきて僕等の後ろにいた。
 いつも通りにレイリアとクリアベールが僕の前に来たので、僕は炎と風の合成術で髪を乾かしてあげた。
 
 「それも生活魔法か?」
 「いや、炎と風の複合魔法。」

 僕は横を見ると、華奈と飛鳥が順番待ちをしていた。
 レイリアとクリアベールが終わると、華奈と飛鳥の髪も乾かしてあげた。
 そして華奈が前を向くと、僕に色々聞いてきた。

 「ダンに聞きたい事があるんだけど?」
 「さーて、僕も風呂に入るか。 賢斗、ガイウス入るぞ!」

 悪いが脱衣場での会話は聞こえていたので、余計な事を聞かれる前に風呂に入ろうとした。
 ガイウスと賢斗は入って行ったのに、僕だけ肩を強く掴まれた。

 「痛っ! 華奈…僕の体には皮膚が無いんだから、そんなに強く捕まれると痛いんだよ!」
 「あ、ごめんなさい。 聞きたい事があるの…」
 「一体何を聞きたいのさ?」
 「お風呂の中にあった泡は一体何?」
 「あれは僕のスキルの泡魔法だよ。 さーて、風呂に…」

 華奈は肩を掴むのはやめてくれたが、逃げられない様に手を握っていた。
 
 「効能はどういう物なの?」
 「えーっと…ギルドカードの詳細によると、毛穴に詰まった汚れを排出し美肌の効果に、髪は毛穴の汚れを落とし髪に艶が復元されると…よし、風呂に入ろう!」

 華奈はまだ逃げる事を許してくれない。
 この後の会話は予想が出来る。
 下着の話になるだろう。

 「下着の事なんだけど、あれはダンが作ったというのと、裸になった3人をサイズを測ったって…」
 「やっぱ、この話になったか…これに関しては正直覚えてないんだ。 スキルの能力で無心になっていた時に作った物だから、その時の記憶は無いんだ。」
 「本当に?」
 「誓います!」
 「ダンは嘘つく時があるからなぁ…」
 「僕はそんなに信用無いのか⁉」
 「まぁ、それは置いといて…私も飛鳥もあの下着が欲しいんだけど…」
 「マダム・ラスティーナの下着店が開店したら買いに行ってください。」

 どんなに断ったとしても、作らない限り開放はしてくれまい。
 
 「下着が欲しいというのはわかりました。 んで、どうするの? 僕の前で裸になれるのかい2人とも?」
 「サイズの測り方なら元いた世界でやり方は解っているし、それを渡せば良いだけでしょ?」 
 「残念でしたー! 僕の創造作製は実際に見た物をベースに作るから、サイズだけだと作れないんですー!」
 「う………」
 「まぁ、2人が裸になったのを見ても何も感じないから安心してよ! 僕のパーティには、スタイルの良いレイリアとプロポーションが抜群のクリスとメロンの様な膨らみを持つクリアベールがいるんだから、それに比べたら2人の裸なん…」

 僕はそう言い終わる前に…2人の音速の拳にぶっ飛ばされていた。
 
 「何するんだよ⁉ 本当の事しか言ってないだろ‼」

 僕は更にぶっ飛ばされた。
 僕は悟った。
 世の中には例え真実であっても、口に出してはいけない事があると…。
 そして僕は無心のスキルを使い、2人に下着を作ってあげた。
 当然、その間の記憶は無かった。

 そして僕は風呂に入り、出て来た時にはすっかり暗くなっていた。
 シルロンダーに皆を乗せて、サーテイルの港町に帰った。
 約束通りチョコレートパフェを作らさせられてから、その日は疲れて寝た。

 翌日………
 空に魔王の映像が再び現れた。
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