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 綾幡米彦は物心付いた頃からある記憶を持っていた。月明かりの下で少女が笑み掛けてくる光景だった。  中学三年の夏休み、彼はその記憶と同じ景色を目の当たりにする。彼女こそは前世よりももっと前、遥か昔からの恋人だった。  米彦はそれを聞いても思い出せない。彼女は彼が覚えていないのを嘆き悲しむ。  それから彼女は、自分達は何度も生まれ変わりながら、どんな願いでも叶えられるようになる万能の書物を集めていると言う。彼はそれも覚えていない。  そして、彼女は自分達に関する記憶を失った彼との恋人生活を楽しみつつ、書物を求め、それを巡っての血生臭い殺戮と決闘の日々に身を投じるのだった。  苦界にたゆたう姫神の、御手に塗れる血潮の色は、伏せしまなこを流れつる、紅の涙を伝えしか  夏衣幡織綾紗(なつに はたおる あやの うすぎぬ)
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小説 21,266 位 / 21,266件 ライト文芸 406 位 / 406件
登録日 2021.08.31
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