日本スローライフ 小説一覧
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栃木県佐野市。全国的には「佐野ラーメン」や「アウトレット」でかろうじて知られているものの、日本人ですら「どこだっけ?」と首を傾げる微妙な立ち位置の街だ。
そんな佐野駅前で写真を撮っていた高校生・佐野悠真は、自称“地元企業史オタク”。遠藤食品の“さくら大根”からコジマ電機の歴史まで、誰も聞いていないのに語り出す皮肉屋で、地元の「愛すべき迷走史」を勝手に収集してはぼやいていた。
ところがその日、駅前の噴水の前に突如として光の裂け目が開き、銀灰色の髪に狼の耳と尾を持つ少女――リシュアが現れる。異世界から迷い込んできたという彼女は、世界の補正によって力を制御され、佐野では“超人アスリート級”程度の身体能力しか発揮できなくなっていた。
「……あなたが“ボス”か」
なぜか悠真を主として慕うリシュアは、佐野の街を舞台にカルチャーショックの連続を繰り広げる。佐野駅をパルクールのように駆け抜け、佐野ラーメンに感動し、アウトレットで財布事情に混乱し、厄除け大師で神様扱いされる。日常のすべてが異世界少女にとっては驚きであり、地元民すら見落としていた佐野の魅力を改めて照らし出していく。
「なんで俺の地元に異世界少女がやって来るんだよ……!」
ぼやきながらも、悠真は少しずつ“佐野”という街を誇らしく思い始める。
異世界少女と地元高校生が織りなす、栃木発・日本版スローライフ物語がここに始まる。
文字数 11,040
最終更新日 2025.09.01
登録日 2025.08.31
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