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紹介をしましょう。

現れたのは

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『……、タ、…スケ、…テ』

 お茶会会場でもある中庭に向かって走っている私の頭に響く声、小さくて、今にも消えてしまいそうな助ける求める声に、立ち止まる。

(何?声?)

「誰?何処にいるの?」

 言葉を返してみても、響く声はそれ以外聞こえてこない。走っていたからか、それともこの響いてきた声に対してなのか、心臓がドクドクと煩く聞こえて来る。ぎゅっとドレスの胸元を握り締めて、私は又走り出した。


 近道にと垣根の隙間を潜り、顔を出した先に居たのは、モフモフの足。


 それと、威嚇する白い子猫と、其の背後で黒い子猫が横たわっていた。


『何処から現れた、人の子』


 ピンと立った三角の耳、凍えそうな鋭利な瞳、鋭い牙を隠しているであろう大きな口。太い足には肉球だけじゃ無く、身体を難なく引き裂くであろう爪もある。そして、其の全てを包み込む、大きな体には黒く怪しく輝くダークシルバーの毛並み。

(私は、この狼を知っている)

「ギベオン…」

 口から零れ出た言葉に、大きな獣の気配が変わっていく。警戒をしていたのが、ゆっくりと驚きに変わって、愉しそうなものへと変わる。

『我の名を聞く者が、二人もいるとはな。娘、名は?』

 狼の低い声は、直接脳内へと響いてくる。それだけでも震えてしまいそうな程だけど、私はドレスについた葉を払い、膝を少し折り淑女の礼を取った。そして顔を真っ直ぐに向け口を開く。

「アトランティ侯爵家長女、アメーリア=アトランティですわ。聖獣とも呼ぶべき貴方が、このような場で何をなさってるのですか」

 狼の足元には、ふわりと柔らかそうなピンク色のドレスが見える。へたり込んでしまったのか、怯え泣きそうな顔をした可愛らしい少女が、じっと私を見つめてくる。薄桃色の揺るやかなウェーブした髪に、空色の瞳。怯えているので、白い肌は青白くなっているけれど、花弁の様なピンクの唇はもう一人のヒロインの特徴。

「ルチルレイ…」

 こんな状況じゃなかったら、可愛いルチルレイの姿にテンションでも上がっただろうけど、そんな場合じゃない。本来のゲームなら、ギベオンは私の聖獣としてゲームで登場している。そのふわふわな毛並みも低く柔らかく響く声も、アメーリアだけに向けられていた。

『今は大差無いが、故に楽しみな娘達だ。しかし、契約に従い、我が守護するのは此方の娘だ』

「そんなっ」

『この場は騒がしい、この娘は我が連れて帰ろう。また逢おうアメーリア』

「待って!ギベオン!」

 子猫でも銜える様に、ルチルレイのドレスの首元を銜えると、ギベオンはそのまま霧へと消えてしまった。


遮断されていた周りの音が一気に動き出し、令嬢達の怯える声が聞こえてきて、私は我に返る。一番に目に入ったのは、倒れたままの黒い子猫と、傷を舐める紅く染まった白い子猫

(子猫!)

「アリア、大丈夫なのか!?」
「アイクお兄様、回復魔法を使える方を早く!ホーランダイト家の当主様がいらしているはずです!」
「ぼ、僕が行く!足なら僕のが早いから!」
「もしかして、こっちの黒猫にか?酷い傷だぞ、これはもう…」
「助けます!助けなきゃ…っ」

 着ていたドレスを捲り上げ、柔らかい布で作られたペティコートを破き、血が流れ出ないようにと押さえる。普通の令嬢なら見ただけで倒れていそうな場面だけど、転生した元主婦舐めんな!怪我や血が怖くて子育てなんか出来るか!
 兄弟なのか白い子猫がウロウロと私の周りを歩き、何度も私を見上げている。傷を押さえる手はそのままに、もう片方の手を子猫へと伸ばした。

「お前もおいで、一緒に助けるから」
『ハウライト』
「え?」
『私ノ名ハ、ハウライト』
「ハウライト…?私はアメーリアですわ」

 私が名前を告げると、途端にハウライトの姿が眩く光だし、真っ白な空間へと包まれた。周りの音が一切消えその空間に居たのは、私と倒れたままの黒猫。そして、白銀の髪と左を金に右目を青に色付けた可愛らしい少年が立っていた。少年の髪には同じ色の耳、そして背後に見えるのは尻尾。

『盟約に従い、我ハウライトはアメーリアの守護となる』

「はぁ!?」

『アメーリア、言った。一緒に助けると』

 たどたどしい言葉遣いで、にっこりと笑顔を浮かべ黒猫の傷を押さえる私の手に、小さな白い手が重ねられる。ほわっと柔らかな光が燈り、周りが暖かくなっていく。

「これは、回復魔法…」
『助ける、アメーリア一緒』

 段々塞がっていく傷と、自分から抜けていく魔力。基礎訓練してて良かったと、暢気な事を考えている位には混乱してたんだと思う。人って自分の容量を超えると、逆に冷静になるのね。温かくなる小さな身体と、手に伝わってくる命の音を感じ、私は強張っていた身体の力を抜いた。




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