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遥か昔、人々が天から授かったと言う始祖の魔法。それは現代の私たちにとっては、一種の伝説であった。勇者が命を捧げ、この世を救うことができる魔法が存在するという。
マイは小さな村の宿屋の末娘である。そんな宿屋に、ある日、帝国からの戦士がやってきた。村の裏山に何かを探しに来たらしい。そんな彼を裏山に続く森へ招待すると、森に異変が起こる。
彼はマイの瞳をまっすぐに見据えると、こう言った。
「自分が選んで、この才を得たのではない。
俺は人の命を奪うことに、何も感じなくなってしまったのだ。
誰かを憎むことも、愛することもできない。
そんな世を生きていたいか?
勇者になりたくて、来たのではない。
死ぬことが出来れば何でもよかったんだ。
だから俺は、死する運命を持つ勇者になる。」
そう宣言する戦士に、マイは何も言えなくなってしまう。
ただ、彼の瞳を見て涙を流すことしかできなかった。
後世の人々は勇者を称える。勇者になりたいと、少年らは剣を振る。
歴史に名を遺した勇者は、正義に溢れた優しい者だったのだろうか。
平凡であることを恨む町娘と、才を得たが心を失った戦士の冒険が始まる。
文字数 10,955
最終更新日 2024.01.04
登録日 2024.01.01
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