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揚げ物の油がまだ温まりきらない朝七時、商店街の角にあるコンビニこまどりへ、白い発泡箱が二十箱積まれた。台車の車輪が入口の段差でごとんと鳴り、店長代理の夏目千里は、手に持っていた半額シールの台紙を曲げた。千里はシールをまっすぐ貼る女だった。
文字数 3,837
最終更新日 2026.07.20
登録日 2026.07.20
午後六時十二分、こちら桜葉商店街中央、総菜の油がまだ甘く匂っております。焼き鳥屋の煙はいつも通り、八百屋の親父は閉店前の値引きで怒鳴るように笑っている。平和、実に平和。
文字数 4,437
最終更新日 2026.07.17
登録日 2026.07.17
高橋家の、潮鳴りがまだ夢と現のあわいを揺らしている中で、私はじっと重い布団に包まれていた。家の奥の海鳴り――それは、この島のどんな訪れよりも先に、私の意識を静かに引き寄せる。藁の香り、湿った畳の手触り、障子の隙間から忍び込む潮風。
文字数 15,044
最終更新日 2026.06.18
登録日 2026.06.18
春先の王都ルトラムの朝は、まだかすかに白いもやが石畳の隙間に漂い、目覚めかけた街の息遣いが、しっとりと肌にまとわりついていた。鐘楼の澄んだ鐘が一つ、空に響き、尖塔の影を細長く伸ばす。日の光は遠く東の空をまどろませ、冒険者見習いの学園通りには、制服姿の生徒たちがそろりそろりと集まり始めていた。
文字数 35,118
最終更新日 2026.06.17
登録日 2026.06.17
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