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「わたし」と「あなた」は、まだ会っていない。でも、きっともう、出会ってしまっていた。
高校生の久遠澄乃は、誰にも見せない詩を鍵アカウントに綴る日々を送っていた。そんな彼女に、ある日届いた一通のDM。名前も顔も知らないその相手とのやりとりは、言葉だけで繋がる、かけがえのない居場所となっていく。
澄乃の友人・慧は、明るく振る舞いながらも、本当の自分を誰にも見せられずにいた。先輩の駿は、言葉を交わさずに生きることを選び、兄・凛太郎はかつて感情をぶつけすぎて人を傷つけたことから、言葉を封じていた。
SNSという匿名の世界のなかで、それぞれが「語れなかった感情」と向き合いながら、少しずつ、交差していく。誰かの詩に心を揺らされ、誰かの投稿に自分を見出し、名もなき言葉が確かに「声」になる。
それは、“消えたアカウント”の謎をめぐる物語。
──「言葉が届いた」その瞬間、わたしたちははじめて、出会い直す。
文字数 26,065
最終更新日 2025.06.21
登録日 2025.06.21
六月の東京、曇り空の下。
編集者・藤井尚哉は、なぜか手にした一冊の古びた文庫本に導かれるように、小さな図書館の展示取材へ向かう。
そこには、かつての記憶──名も知らぬ誰かと交わした、声なき文通の痕跡が眠っていた。
ページの隅に残された一行の書き込み。
「わたしも、そう思っていました。」
それは返事だったのか、それとも記憶の幻だったのか。
やがて尚哉は、展示の奥に佇む一人の女性と出会う。名前も告げず、過去にも言及せず──けれど、言葉にならない気配だけが静かに交錯していく。
その沈黙の中に、かつて届かなかった“手紙”の余韻がふたたび揺らぎ始める。
本作は、「言葉にならない想い」と「声を出せなかった記憶」を巡る、静かな再会の物語。
返事のない手紙が、時を越えてふたりの心を繋ぐとき、読者の中にもまた、忘れられた“誰か”の声がふと響くかもしれない。
文字数 27,186
最終更新日 2025.06.18
登録日 2025.06.18
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