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人生の酸いも甘いも噛み分けた元サラリーマンの男は、異世界に転生した。
手に入れたのは、あらゆる武器、防具、道具、果ては人の才能にまで力を宿すことのできる、規格外のエンチャント能力。
本来ならば勇者として名を上げ、王国に仕え、財宝も名声も美女も思うがまま――のはずだった。
だが、もうすぐ四十五歳になるその男に、そんな野心は一切なかった。
彼が望むのは、片田舎で畑を耕し、朝日を浴び、季節の移ろいを眺めながら静かに暮らすこと。
最強の力を持ちながら、本人はただ穏やかに、ほどほどに、目立たず生きていたいだけだった。
そんな平凡すぎる日々は、ある日、空からやってきた一人の女によってぶち壊される。
世界中を騒がせる空賊団の女船長。
豪快で、乱暴で、酒に強く、謝るより先に剣を抜くような彼女は、主人公の大切な畑を荒らしたうえ、悪びれるどころか「文句があるなら力ずくで来い」と笑ってみせた。
仕方なく力の片鱗を見せた主人公は、逆に彼女の興味を引いてしまう。
「おっさん、うちの船に乗れ!」
金にも、名声にも、自由な空の旅にも興味がない主人公。
何度誘われても断り続ける彼だったが、あまりにしつこく、あまりに真っ直ぐな女船長に根負けし、ある夜だけ町の酒場に付き合うことになる。
だが、主人公は酒に弱かった。
そして彼女は、とんでもない酒豪だった。
翌朝、宿屋の一室。
主人公が目を覚ますと、隣には裸ですやすや眠る女船長。
「……いや、待て。なにがあった?」
穏やかな老後ならぬ、穏やかな異世界生活を望んでいたはずの中年男の人生は、そこから大きく狂い始める。
空賊、冒険者、魔王、人外の姫、神々、そして世界の命運。
彼が遠ざけていたはずの騒動は、なぜか次々と彼の元へ舞い込んでくる。
これは、最強なのに無欲なおっさんエンチャンターが、平穏を求めれば求めるほど世界と美女たちに振り回されていく、異世界最強スローライフ崩壊ファンタジーである。
文字数 3,982
最終更新日 2026.08.23
登録日 2026.08.23
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