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芽が出ないままの作曲家レオは、突然の事故で命を落とし、“音はあるが、音楽のない世界”に迷い込んだ。
風がそよぎ、鳥がさえずり、木々が揺れていた。
だが、人々はそれらに“意味”を与えていなかった。
旋律を歌にする者もいなければ、感情を音に込める文化もない。
場所によっては、沈黙を尊ぶ習わしさえあるらしい。
それでも、レオは音たちに“意味”と“形”を与えた。
静寂に慣れた人々のあいだに、彼の紡ぐ“音の調べ”は、やがてさざ波のように沁みわたっていく。
音楽という言葉すら存在しなかったこの世界に、ひとつずつ、音楽の灯がともり始めたのだ。
——これは、誰も知らなかった音楽を世界に届けていく旅の物語。
文字数 16,282
最終更新日 2025.06.15
登録日 2025.05.26
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