真中流マネジメント

2016シーズンを振り返る(1)――厳しい1年がチームにもたらした“ハングリー精神”

2017.01.27 公式 真中流マネジメント 第21回

リーグ5位に終わった昨シーズン「野球は勝たなきゃ面白くない」

悔しい結果がチームのハングリー精神を育む
「何かを変えなければダメだ」という覚悟に満ちた秋季キャンプ

さて、いよいよ2017年のシーズンが始まります。そこで今回は、新シーズンを迎えるにあたり、2016年の総括をしていきたいと思います。

まずは野手から見ていきましょう。昨シーズンの収穫として挙げられるのは、若い選手たちの台頭ですね。苦戦した試合も多かったものの、そんな中で彼らが経験を積めたことは、チームとして大きな意味を持つと思います。これまではベテランや中堅選手につい頼りがちだったのですが、有望な若手たちが頭角を現し始めたことで、チームの戦術にも幅が出てきました。もちろん若手本人にとっても、得るものが多かったことでしょう。1軍という世界のレベルや緊張感にじかに触れて、非常にいい刺激になったはずです。

若手以外でも、山田(哲)が2年連続でトリプルスリーを実現し、川端(慎)も怪我に見舞われながら最終的に打率3割を達成しました。彼らはこれまでにも結果を残していて、周囲の期待も大きかったのですが、そのプレッシャーに耐え、しっかりと実績を出してくれましたね。

ピッチャー陣に関しても、よくやってくれたと思います。ただ、課題も残りました。たとえば先発投手陣は、想定したほどの活躍ができなかった。まあ彼らも人間ですから、いつもよい結果を出せるわけではありません。大切なのは、そのような予想外の「穴」をチームとしていかに埋めるか、です。ここをカバーできる若手や外国人の投手に出てきてもらいたかったのですが、なかなかうまくいきませんでしたね。

野手、投手、それにコーチ陣にも共通して言えるのは、強烈な“ハングリー精神”が育まれたということでしょう。前年に優勝を経験していることもあり、今回の5位という結果に対し、彼らは非常に悔しい思いを抱いています。「やはり野球は勝たなきゃ面白くない」という気持ちが、チーム全員の中に残ったはずです。このハングリー精神を全体で共有できたことは、間違いなく未来への財産になります。たとえば、昨年秋のキャンプ。選手たちもコーチ陣も、キャンプでの取り組み方が前年までと明らかに違うんです。ブルペンでの姿勢、ランニング時の表情、どれを取っても、これまでにないほどの気迫に満ちていましたね。

とくに、投手陣の練習スタンスが大きく変わったように思います。というのも、野手よりも遅くまでグラウンドに残っている選手が多く見られたんです。“練習時間が長ければいい”とは決して考えていませんが、それでも、「何かを変えなければダメだ」という彼らの覚悟が、ひしひしと伝わってきました。ここ数年を振り返って、もっとも収穫のあるキャンプだったと感じましたね。

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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