ビジネス書業界の裏話

どんな人でも必ず一冊の本が書ける

2016.08.10 公式 ビジネス書業界の裏話 第13回

ハイブリッド・テクニックの重要性

本の読者の場合でも、2割が共感してくれればその数字は小さくない。
特にビジネス書では、本を買ってくれた人の中で最後まで読んでくれる人は、100人中100人はいないだろう。
最後まで読んでくれる人が60%であれば、2割の共感者といっても、読了した人のうちの3分の1の支持を得たことになるのである。

ちなみに、多作の作家は自分の話と他者の話のハイブリッドがうまい。
人々の共感を得るには、講演でも本でも「わかること」が第一。
人にわかってもらうには、まず自分自身がよくわかっていなければならない。

講演者や作家自身が最もよくわかっているのは、自分のことだから、なにはともあれ自分の体験を語るというのは、手法として間違っていない。
そして、人間の体験というのは、それがどれだけ珍しいことであっても、他者に対して説得力を持つものである。
したがって、どんな人でも必ず一冊の本は書ける。
それは自分が体験したことを書いた本である。

自分の体験したことは、自分にしか書けない。
そこには、必ずユニークさやオリジナリティがある。
しかし、一人の人間が体験できることは限られている。
つまり、体験談だけでは生涯で出版できる本は一冊だけとなってしまう。
事実、そこそこよく売れた本の作家でも、一冊だけで消えてしまう人は少なくない。
講演のようなライブであれば、一発芸でも割合長く引っ張ることができるが、出版物の場合にはそうはいかない。
同じ話のリピートではすぐに限界がきてしまうのである。
そこで、テクニックとしてよく使われるのが、他人の話と自分の体験とのハイブリッドである。

「松下幸之助氏はこう言っているが、自分はこういう経験をしたことがある、だから幸之助氏の言葉の真意もきっとこういうことだったのだろう」という組み立てである。
自分の経験という外形上の事実に他者の見解を加えることによって、経験から得られる薫陶(くんとう)に、新たな意味づけを行うのである。
ひとつの経験であっても、切口を変え別の要素を加えることで、そこに新たな意味が生まれる。過去の体験であっても、新鮮さを発揮させることは可能なのである。

小難しい例でいえば、孔子や孟子などの古典に新解釈を加えることで、新しい読み方を発見するようなものだ。
このハイブリッド・テクニックで大事なのは、あくまでも自分の考え方を述べることが主であり、他者の話は従とすることである。

次回に続く

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プロフィール

ミスターX
ミスターX

ビジネス雑誌出版社、および大手ビジネス書出版社での編集者を経て、現在はフリーの出版プロデューサー。出版社在職中の25年間で500人以上の新人作家を発掘し、800人を超える企業経営者と人脈をつくった実績を持つ。発掘した新人作家のうち、デビュー作が5万部を超えた著者は30人以上、10万部を超えた著者は10人以上、そのほかにも発掘した多くの著者が、現在でもビジネス書籍の第一線で活躍中である。
ビジネス書出版界の全盛期となった時代から現在に至るまで、長くビジネス書づくりに携わってきた経験から、「ビジネス書とは不変の法則を、その時代時代の衣装でくるんで表現するもの」という鉄則が身に染みている。
出版プロデューサーとして独立後は、ビジネス書以外にもジャンルを広げ文芸書、学習参考書を除く多種多様な分野で書籍の出版を手がけ、新人作家のデビュー作、過去に出版実績のある作家の再デビュー作などをプロデュースしている。
また独立後、数10社の大手・中堅出版社からの仕事の依頼を受ける過程で、各社で微妙に異なる企画オーソライズのプロセスや制作スタイル、営業手法などに触れ、改めて出版界の奥の深さを知る。そして、それとともに作家と出版社の相性を考慮したプロデュースを心がけるようになった経緯も。
出版プロデューサーとしての企画の実現率は3割を超え、重版率に至っては5割をキープしているという、伝説のビジネス書編集者である。

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