ビジネス書業界の裏話

出版して成功するパターンと残念なパターン

2017.01.26 公式 ビジネス書業界の裏話 第24回

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第一作目を出した直後が肝心

作家デビューのハードルが高いのは、いまさら言うまでもないので、そこはさておき、本を出版したという結果を成功に結びつけるか、残念ながら本を出したという事実だけに終わらせてしまうかは、出版後の作家の行動や心がけによって違ってくるという点について記す。ビジネス書の場合、成功の可否は本の売れ行きだけではないのだ。

文芸書の場合は、本が売れるか・売れないかの一本勝負だが、ビジネス書は必ずしも一本で勝負がつくとは限らない。ビジネス書では、本がそれほど売れなくても、出版によって作家の本業に多大な貢献があればそれは成功といえるし、本はそこそこ売れたとしても本業がさっぱりでは、出版の効果はイマイチだったということになる。その差は、出版後にどのような体制をとるかに大きく影響される。成功している人は、著書出版後にだいたい次のようなことをやっているのだ。

●次回作の準備を始める
●本業と本の販促を連動させる
●講演活動など本業のウィングを拡大させる

第一作が出たばかりで次回作の準備を始めるというのは、気が早いような話でもあるが、本は一冊出すと二冊目、三冊目のオファーが続くことが多い。しかし、はじめて本を出す人の多くは、第一作に全身全霊を注ぎ込むため、すぐに次回作という運びとならない。第一作が出た後は、しばらく燃え尽き症候群となってしまうようだ。とにもかくにも、自分の本が出たことに満足して、即座には次の本という意欲が湧いてこないのである。出版のチャンスは、そうおいそれとは巡って来ないのだが、満ち足りた気分の作家にとっては、次回作という負荷のかかることで至福のときを邪魔されたくないのだろう。この気持ちはわからないではない。

だいたいはじめて本を書く作家というのは、しなくてもよい苦労をするし、かけなくてもよい手間をかけるものだからだ。だが、チャンスの女神に後ろ髪がないことは、いずれの世界でも共通だ。正面から向かってくるときに受け止めない限り、つかまらないのがチャンスである。後ろから追いかけては、決して追いつけない。後ろ髪はないが、俊足なのである。

最初の本がベストセラーとなって、その結果、本業も大繁盛するという確率もわずかながらある。しかし、本を出し続けたほうが、成功確率が高くなるのはいうまでもない。作家は、本を出した後にこのことを思い出すべきである。

本を出し続けるためには、実は「最初の一冊を出した直後」が意外に勝負どきなのだ。よって、出版で成功する人は、次回作のネタを切らさないようにしている。自分の本が出たという実績は、作家の評価にとってもプラスにカウントできる材料である。そのため実績ができたところで、第一作の版元以外の出版社にも積極的に次の企画を売り込んだ人もいた。しかし、このやり方はよしあしである。

第一作目の版元としては、これから「さあ売ろう」と意気込んでいるタイミングである。意気込みの程度に温度差はあるものの、せっかく売ろうとしている矢先に作家が次回作のために他社に足を運んでいるとなっては、担当編集者も営業・販売担当者もあまり愉快ではない。士気が粗相する。

だからといって、できた新刊を売らない出版社はないが、次回作にあまり積極的過ぎるのも、かえって軋轢(あつれき)を生むことになる。とりあえずは次回作の企画を準備しておき、出版社からの要請があったらそれに応えるくらいで、しばらく様子を見てもよいだろう。

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プロフィール

ミスターX
ミスターX

ビジネス雑誌出版社、および大手ビジネス書出版社での編集者を経て、現在はフリーの出版プロデューサー。出版社在職中の25年間で500人以上の新人作家を発掘し、800人を超える企業経営者と人脈をつくった実績を持つ。発掘した新人作家のうち、デビュー作が5万部を超えた著者は30人以上、10万部を超えた著者は10人以上、そのほかにも発掘した多くの著者が、現在でもビジネス書籍の第一線で活躍中である。
ビジネス書出版界の全盛期となった時代から現在に至るまで、長くビジネス書づくりに携わってきた経験から、「ビジネス書とは不変の法則を、その時代時代の衣装でくるんで表現するもの」という鉄則が身に染みている。
出版プロデューサーとして独立後は、ビジネス書以外にもジャンルを広げ文芸書、学習参考書を除く多種多様な分野で書籍の出版を手がけ、新人作家のデビュー作、過去に出版実績のある作家の再デビュー作などをプロデュースしている。
また独立後、数10社の大手・中堅出版社からの仕事の依頼を受ける過程で、各社で微妙に異なる企画オーソライズのプロセスや制作スタイル、営業手法などに触れ、改めて出版界の奥の深さを知る。そして、それとともに作家と出版社の相性を考慮したプロデュースを心がけるようになった経緯も。
出版プロデューサーとしての企画の実現率は3割を超え、重版率に至っては5割をキープしているという、伝説のビジネス書編集者である。

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