話しやすい人になれば人生が変わる

会話が下手な人に欠けている、たった一つの視点

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何よりも、自分自身がリラックスする

今回は、会話の相手が緊張しているとき、その緊張をほぐす方法についてお話ししたいと思います。

初めて会う人と話すときや、ライターとして取材をするとき、相手の方が緊張していることがしばしばあります。そんなとき、私は相手の緊張がほぐれるよう、できるだけのことをします。打ち解けるためにも、取材をスムーズに進め、さまざまな話を引き出すためにも、相手にリラックスしてもらう必要があるからです。

緊張した状態、ピリピリした状態で会話をするときと、リラックスした状態で会話をするとき。どちらのほうが、相手に対し「話しやすい」という印象を抱くかは自明ですよね。話しやすい人と思われるうえで、「いかに相手をリラックスさせられるか」は、とても大事だと、私は思います。

では、相手の緊張をほぐすためにはどうしたらいいのか。
なんといっても重要なのは、自分自身が緊張していないこと、リラックスしていることです。あなた自身が緊張したりピリピリしたりしていると、それが相手に伝わり、相手はますます緊張してしまうかもしれません。

緊張をとく方法として特におすすめなのは、

・深呼吸をすること
・「緊張してもいい」と自分に許可を出すこと

です。
詳しくは、この連載の第5回をご覧ください。

しかし、みなさんの中には、極度の「緊張しい」で、その程度の方法では、とてもリラックスできないという人もいるかもしれません。
そのような方は、逆に「すみません、緊張しています」と最初に話してしまいましょう。
緊張を悟られまいとして必死になったり、会話がぎこちなくなったりするよりも、正直に緊張していることを認めてしまったほうが、逆に自分の緊張がとけやすくなるかもしれません。
また、相手も「そうか、この人も緊張しているんだ」と思うことで、かえってリラックスできたり、あなたに対して親近感や、「素直な人だ」という好感を抱いたりするかもしれません。

やわらかな表情とやわらかい気持ちで相手と向き合う

さて、相手の緊張をほぐすうえでポイントとなるのが、「ゆるふわな雰囲気」です。

時折、非常に陽気で快活で、そのパワーで相手の緊張をほぐしてしまう人もいますが、それがうまくいくかどうかは、持って生まれた性格やコミュニケーション力にかなり左右されます。
また、陽気さや快活さは、場合によっては相手に「圧」を感じさせ、より緊張させたり萎縮させたりする可能性があります。

しかし、「ゆるふわな雰囲気を醸し出し、相手の緊張をほぐす」という方法であれば、誰にでも比較的簡単に実践できるのではないかと、私は思います。

そして、ゆるふわな雰囲気を出すためには、

①やわらかな表情
②やわらかな感情
③やわらかな話し方

の三つが必要です。それぞれについて、順にお話ししていきましょう。

まず、①やわらかな表情。
ただでさえ緊張しているときに、相手が厳しい表情をしていたら、誰でも余計に緊張してしまうでしょう。
逆に、相手がにこやかな表情、穏やかな表情であれば、最初は緊張していても、徐々に緊張感がほぐれていくはずです。

やわらかな表情の作り方については、第7回でお伝えしましたが、まず意識的に口角を上げてみましょう。口角を上げると、それにつられて表情全体がやわらかくなります。

次に、②やわらかな感情。
表面をどれほど取り繕っても、感情はどうしても雰囲気ににじみ出てしまいます。
イライラしていたり怒っていたり、相手に対し何かしらネガティブな感情を持っていたりすると、それが気づかないうちに態度に出て相手に伝わり、相手をより萎縮させてしまい(もしくは不快にさせてしまい)ます。

では、やわらかな感情を持つにはどうしたらいいのか。
もし、その直前までに嫌なことがあってイライラや怒りを感じていたとしたら、その気持ちをリセットしましょう。

本当は、イライラや怒りの原因となった出来事をいったん忘れ、目の前の相手との会話に集中することができればよいのですが、なかなかスムーズに切り替えられないという人もいるでしょう。
そのような場合にも有効なのが、深呼吸です。
イライラしたり腹を立てたりすると、自律神経のうち交感神経が優位になり、呼吸が浅く激しくなる、心拍数や血圧が上がるなどの身体反応が起こり、「頭に血が上っている」状態になります。
すると、体は「今、自分はイライラしている」「腹を立てている」と判断し、イライラや怒りがおさまりにくくなります。

しかし深呼吸をすると、幸せホルモンと呼ばれ、精神を安定させ、人に安心感や平常心をもたらす働きがある「セロトニン」という神経伝達物質が脳内に分泌されます。
それに伴って副交感神経のスイッチが入って体が徐々にリラックスモードになり、交感神経優位のときの過剰な体の反応もおさまっていきます。
その結果、イライラや怒りもおさまり、感情がやわらかくなっていくはずです。

一方で、もしあなたが、会話をしている相手に対し、何かしらネガティブな感情や苦手意識を持っている(しかし、その相手に話しやすい人だと思われたい)場合は、どうしたらいいのか。

いったんその感情を脇におく必要がありますが、その際にも「深呼吸をする」というのは有効です。
深呼吸をすると気持ちが落ち着き、相手へのネガティブな感情が薄れることがあるからです。

あるいは、「脳を騙す」という方法もあります。
たとえば、口角を上げたり、穏やかな口調で話したり、会話をしながら相手のいいところを見つけようとしたり、会話中、折に触れて「この人、いい人だな」「この人、面白い人だな」と心の中で思うようにしたりすると、意外と脳が騙されて、「自分は今、この会話を楽しんでいる」「自分は今、優しく穏やかな気持ちで相手と話している」という錯覚に陥ったり、相手へのネガティブな感情が薄れたりすることがあります。

このやり方は向き不向き(脳が騙されやすい人とそうでない人)がありますし、どうしても相手のいいところが見つからず、失敗することもありますが、機会があったらぜひ試してみてください。

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プロフィール

村本篤信
村本篤信

1972年大阪府生まれ。都立国立高校、一橋大学社会学部卒業。大日本印刷に入社後、フリーのライター、編集者に転身。 『3000円投資生活』シリーズ(アスコム/横山光昭)をはじめ、累計250万部以上 の書籍を手がけたほか、取材記事、社史などのライティングを行い、2021年には『ロジカルメモ』(アスコム)を刊行。 2012年に「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」優秀賞を受賞して以降は、ドラマや舞台の脚本も執筆。 一方で、90年代よりホラー系ドラァグクイーン「エスムラルダ」として、各種イベント、メディア、舞台公演などに出演し、2018年からは及川眠子・中崎英也のプロデュースにより、ディーヴァ・ユニット「八方不美人」を結成。エスムラルダ名義でのコラムや書籍のライティングも行っている。

著書

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村本篤信 /
話しやすい人になれば、人づきあいも、仕事も、初対面も、出会いも、家族もぜん...
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