結局、低姿勢こそが最強のビジネススキルである

結局、「低姿勢」こそが最強のビジネススキルである

ビジネス書では、本当に役立つスキルは学べない?

自己啓発書やイケてる経営者の本は発売されると同時にワクワクする。Facebookでともだちが絶賛しているのを見てさらに読みたくなり、自分もさっさと読んだことを皆に伝えたくなる。

いや、誇示したくなる。

こうした勉強熱心な人のことは心底尊敬する。だが、こうした本の著者の本音は分かっている。

私が当たり前のようにやったことを皆さんが果たしてできるかは分かりませんが……。ただ、出版社から執筆の依頼があったので自分にとっての常識を書いてみましたが。仮に私のようになれなかったとしてもあまり落ち込まないでください。

凡人ではない彼らの理論とは、他人には容易に真似できるほどのものではない。書籍を読んだ後はエナジードリンクを飲んだ直後のごとき高揚感を得て一歩足を踏み出そうとするも、結局は押し寄せるメールやSlackのメッセージの嵐の処理とミーティング参加に追われてしまう。

激務を終えて家に帰って、ブログやFacebookに同書を読んで学べたことを書くところが実は最大級のハイテンション状態であり、その後行動に移すようなことはほとんどない。

結果として、キチンと著者の主張をまとめ、書籍の宣伝の一翼を担う&「ワシはこの話題の書を読んだぞセルフブランディング」に終わってしまうところまでが、自己啓発書のパッケージなのだ。

私は書評を書かざるをえない or 自論と反することを述べる著者に対抗する以外に、自己啓発書やビジネス書を読んだことがない。理由は、天才による仕事術や心のもちようというものは凡百の人間には理解できないと分かっているからだ。あとは彼と己を比べ、惨めな気持ちになってしまうからである。

実は自己啓発書を読んで高揚感を抱ける人というのは、それなりに自信もあるし、向学心のある人である。そんな人は恐らくご本人の自己評価よりも実際に他人からの評価は高いのではないだろうか。

才能がなくても、「低姿勢」であれば何とかなる


当連載はそうした方ではなく、私同様の「自信がない普通の人」を対象とする。

優秀な人からすれば、「そんなに相手にへりくだるなんてバカだ」「この著者は才能なし」「この著者の持つコンプレックスって惨めったらしい」「こんなに無能なヤツでもモノカキができるなんて日本のモノカキ界隈はレベルが低い」と言いたくなるだろう。

えぇ、分かってます。ここ何年も様々なメディアから仕事術や作法についての取材を受け、自ら「マネーポストWEB」「東洋経済オンライン」「プレジデントオンライン」等でビジネス系の連載も持っていて、散々ヤフーのコメント欄で上記のような調子で叩かれてきた私は分かってます。

そんな人間ながら、フリーランスになって18年、最初の年を除きひっきりなしに仕事をいただけ、今でもこうして新たな連載をもらえ続ける秘訣は何だったのか。当連載を企画してくれた編集者の言い分はコレだ。


「あなたはひたすら低姿勢でい続けた」


自分では意識はしていなかったが、多分そうなのだろう。特に才能があるわけでもないのだが、仕事がもらえる場合というのは案外「低姿勢」であることが選ばれたりする理由だったりもする。

糸井重里氏や佐藤可士和氏といった余人をもって代えがたい人物を指名したい場合、その当人がどんな態度であろうとも構わないだろう。いや、ここで挙げた二人も才能がありつつ低姿勢であるとは聞いている。彼らほどの才能がないにしても、そのレベルの仕事が求められていない場合は「低姿勢」が武器になるのだ。

私自身、ツイッターでは暴言を吐くことが多い上に、こうして文章執筆を依頼されても乱暴な口調になることは多いし、名指しはしないまでも「行列に並ぶヤツはバカ」「旅行で荷物が多いヤツは邪魔」などと該当する人物を不快にさせる文章は書き続けている。また、ツイッターのアイコンはサンタ帽をかぶった130kgのデブ(他人)のため、ツイートには無機質性を込めるようにしている。

だからこそ実際に普段のこうした発言を見ている人と実際に会ってみると「中川さんって怖い人じゃないんですね」か「中川さんってこんなに腰の低い方だったんですか?」と言われることが多い。

そうして誤解が解けることは良いことで、以後その方々との縁は生まれ、それが仕事に発展することもある。ブロガー・投資家の山本一郎氏も同じことはよく言われるそうだ。

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プロフィール

中川淳一郎
中川淳一郎

1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。ライター、雑誌編集などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『縁の切り方 絆と孤独を考える』『電通と博報堂は何をしているのか』『ネットは基本、クソメディア』など多数。

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