「家族」というチームのつくり方

共感してるようでバカにしてる? 共感夫に妻がキレる正しすぎるワケ(前編)

getty images

妻に「話がある」と言われて

夫婦間で起きる、ちょっとしたすれ違い。ささいなことがきっかけなようで根が深く、解消するにしても一筋縄ではいかない、そんなトラブルに向き合う方法、今回と次回の2回に分けて紹介します。

先日、息子が学校に行っている間、妻と2人でランチに行きました。
私の仕事は不定期なので、土日に仕事が入ることもあれば、昼に空きが出ることもあります。そうして、ふいに生まれたランチの機会だったのですが、妻から突然「話がある」と切りだされ、「あなたはいつも否定してくる!」と訴えられたのです。

その後、よくよく話を聞いてみると、事の発端は、私が妻の息子への「叱り方」に意見したことにあるようでした。

妻が息子を叱るとき

私の妻は、息子への愛情が深く、いつも息子の成長を心配しています。
学校で友達ができたとなれば、それを喜ぶ一方で、その友達とは楽しく過ごせているかなと気をもんでしまうほどです。
とはいえ、そういう過保護な一面があったとしても、甘やかしすぎることはなく、かといって厳しすぎることもありません。適切な距離感で息子に接することができているように感じます。

あるとき、息子の友達がお絵描きを見せてくれました。私たちが「上手だね~」とその友達をほめると、「ボクのほうがうまいよ! ボクも描けるよ!」と、嫉妬心まる出しで主張してきたのです。

こういう振る舞いが、妻がもっとも憤慨するポイントで、友達の気持ちを踏みにじったり、友達の頑張りを否定したりする行為は絶対に許しません。必ずしっかり指摘します。
その場では注意する程度なのですが、友達が帰ってから、「今日のことだけど」と話しだします。
息子は最初、「だってボクのほうがうまいもん!」と食い下がるのですが、妻にはまったく通用しません。息子はやがて泣きだし、「ごめんなさい!」と気持ちのこもってない謝罪を口にしますが、それで妻は終わらせません。
「何がいけなかったと思うの?」
「ちゃんと考えて」
「本当にそう思ってる?」
「本当に思ってるならそういう言葉は出ないはずじゃない?」
優しい口調ながらも、質問を重ねてきちんと追いこみます。そして、二度と同じことをしないように、息子が理解するまでその問題と向き合うのです。

ビジネス組織の専門家の立場から言うと、このようなアプローチは素晴らしく、効果的だと言えます。
実際に息子は、徐々に相手の気持ちを考えられるようになり、嫉妬を友達に向けることなく、「すごいね」と認められるようになりました。そうして、いろんな友達とうまくやれるようになってきています。

妻の叱り方は、息子の心の成長に大きく貢献しています。また説教によって息子がビクビク萎縮するとか、母親を怖がるといった悪影響もありません。
息子は相も変わらずやんちゃで、元気で、のびのびとしています。それに加えて、母親が大好きで、素直で、一生懸命で、相手のことを考えられる優しい子に育っていっていると感じます。
私は、息子に対し、優しさと厳しさを持ち合わせた態度をとれるそんな妻を、心から尊敬しているのです。

ご感想はこちら

プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
出版をご希望の方へ