cueのププププレゼン力

第23回 2017.03.08

チャレンジ❤LOVE グランプリ★への道

作品集を作るように自らを演出する

この『ひとつぼ展』の写真部門で、第4・5回と連続入選していたのが、フォトグラファー・蜷川実花ちゃん。多摩美術大学の同期で、旧友でもあります。その実花ちゃんから「CUEちゃんはたくさん作品を創ってきてるんだから、ポートフォリオにまとめて応募してみたらいいよ! ちなみに私はこんな感じで創ってる。参考までに。絶対、出したほうがいいからね!」とプッシュされました。

彼女からの強烈な押しとアドバイスを受けて、「おっしゃ~~~、やるぞ!」と奮起した僕。この頃はずーっと創作ばかりしていて、それらをまとめたりはしていなかったので、いい機会だと思いました。

ポートフォリオの提出期限は夏です。ちょうどその春に初の個展を開いたばかりだったので、作品のラインナップも充実していて、一次審査に通ったらこのラインナップの一部を『ひとつぼ展』に出展しようと考えました。

というわけでまずはポートフォリオ作りから。全体を貫くコンセプトを考え、そのテーマにもとづいて、それまで制作してきた作品群を1つの作品集としてまとめていきます。撮影された作品をただ並べるのではなく、全体で1つの作品となるような趣きを持たせたい、大切にしたい、そう思いました。

ミュージシャンがアルバムの曲の順番を考えるように、あ~でもない、こ~でもないとレイアウトページネーションを何度も練り直して、自分なりのポートフォリオを作っていきます。そしてなんとか無事に完成。できあがったポートフォリオは、銀座にあるガーディアン・ガーデンに直接届けに行き、事務局の皆さんにご挨拶をして提出しました。

通常のコンペティションスタイルとは違い、今まで制作してきた作品すべてを審査員に見せるというプレゼンテーションスタイル。なんだか、全裸になって自分をさらけ出したような気分です。はじめは気恥ずかしさもあったものの、最終的には開き直って、「僕を見てくれ!」という情熱❤でいっぱいになりました。

ふ~。こうしてひとまず、ポートフォリオの提出は完了です。一次審査では、集まったポートフォリオを浅葉克己さんはじめ著名な審査員の方々が審査します。できるだけのことはやった。あとは吉報★を待つのみ……

真夏の吉報★★★

それからしばらく経ち――猛暑の8月夏休み。自宅で休んでいると、「ガーディアン・ガーデンから電話よ」と母の声が。一気にテンションMAX!

「もしもし成田ですが」「あ、成田久さんですか? おめでとうございます。一次審査を通過されましたので、『ひとつぼ展』に参加していただきます。説明会にて詳細をお伝えいたしますから、後日ガーディアン・ガーデンまでお越しいただけますか? よろしくお願いいたします」

吉報! 嬉しい! その場でガッツポーズ! 初参戦でしたが、見事に一次審査通過です。つまり、チャリティー展に参加できる! 嬉しい! めちゃくちゃHAPPY★LUCKYな大学3年のサマーバケーションでした。

そして指定された日時に、ガーディアン・ガーデンを訪ねます。現在は電通通り沿いの地下にあるのですが、当時は銀座8丁目「金春湯」向かいの、地下1・2階にあるガラス張りの空間でした。そこには、僕を除く12名の審査通過者が勢ぞろいしていました。

「このたびは、第6回グラフィックアート部門・一次審査通過、まことにおめでとうございます。では皆様揃われましたので、『ひとつぼ展』についてご説明申しあげます。このイベントでは皆様に、それぞれ1.82m×1.82mのスペース内でご自身の作品を展示・発表していただきます。展示や発表といっても決まりや制限はなく、このスペースの中であれば、基本的にどんなスタイルで行なっていただいても構いません。なお、『ひとつぼ展』の開催期間中に、一般のオーディエンスがいる中で審査員の方々におひとりずつプレゼンしていただく『公開審査会』もございます。1年後に開催される展覧会の展示プランもプレゼンしていただき、ぜひグランプリ受賞を目指していただきたいと思います」

1.82m×1.82m、つまり一坪です。たった一坪、されど一坪……これ以上ないほど限られた空間の中で自分の作品をいかに見せるか、そう考えると、胸がドキドキワクワク燃えてきました。

ちょっと動揺、くらくら。どうしよう?

この説明のあと、ガーディアン・ガーデンの方から、参加者13名それぞれに紙が手渡されました。そこには、各人の作品数や概要などを事前にチェックした審査員全員からのコメントが書かれていたのです。僕が受け取った紙には、「展示作品数が少ない」との記載がありました。僕は先日の個展で発表した力作から3点を出展すると決めていたので、このコメントを見てひどく動揺してしまいました。

「3点じゃ少ない? 一坪なんて、この3作でかんたんに埋まってしまうと思うけど。一次審査を通過したっていうのに、何でこんなこと言われなきゃならないんだ~!」そう思い、コメントが書かれた紙をその場でゴミ箱にぽいっと投げ捨てたのを今でも覚えています。思わず「むかつく~」と叫んでいたはずです。ガーディアン・ガーデンの方々も「いろんなこと書かれていますからね~」と笑っておられました。

説明会が終了し解散したあとも、僕の頭と❤はヒートアップしたまま。あの3作品は自信を持って出展すると決めたはずなのに、審査員のひと言で動揺するなんて……あ~むかむかする。どうしようか。他の作品を出展するか? 新作を創るか? それとも? と、灼熱の太陽がふりそそぐ銀座の街を、憤慨しながら歩き続けたのでした。

まさか……まさか……まさか……

やがて夏休みは終わり、大学の授業がスタートします。僕が『ひとつぼ展』に参加することは、すでに周囲の知人たちには知れ渡っていました。ですがこの頃まだ、どの作品でいくべきか、僕は迷っていたのです。そして考えに考えた結果、当初のコンセプトは変えずに、初志貫徹して「例の3作品」で勝負しようと決めました。

そんなある日、ガーディアン・ガーデンから連絡が。「もしもし成田さんですか?」「はい。『ひとつぼ展』ではよろしくお願いいたします」「実はそのことで1つ問題がありまして」「何でしょうか?」「ええ、その、成田さんの作品なのですが、3点出展となると……額装分の数センチがスペースからはみ出てしまうんです。この場合、展覧会規約違反で『グランプリ棄権』になってしまうので、出展作品を考え直していただけませんか? 何とぞよろしくお願いします」

え? 数センチはみ出しちゃうのか。じゃあ3作品のはずが、2つしか出展できないってこと? マジで? 審査員からは「3点でも少ない」って言われているのに、2点しか発表できないなんて。……も~ダメじゃん。グランプリ受賞なんて絶対無理じゃん。」そういう思いが頭をよぎり、自暴自棄状態になってしまいました。グランプリGET→来年見事に個展で作品発表、という夢の扉がバンバンバンバンと音を立てて閉まっていきます。あ~も~いいや。どうにでもなれ~~~。

こうして、ふてくされながら2作品だけでの出展を決めました。今から新作を創る時間なんてないし、仮に創れたとしても完成度はたかが知れているし、焦ったところでいいことないし……「たった2作品だけど、クオリティはいいのだから」とポジティブにポジティブに自分へ言い聞かせて、❤をクールダウンしていきます。でも「BESTではないよな」とはもちろん感じていました。

ご感想はこちら

プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

出版をご希望の方へ