人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

50代が「リストラ分岐点」となる現代ビジネスパーソンの実態

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定年は延長しても、働く意識は変わっていない

この20〜30年間、定年はどんどん延長されています。私は1965年に生まれ、1988年に大学を卒業し、自動車メーカーに入社し労務部門に配属されました。当時の定年は、55歳でした。50代の方々は、定年まであとわずかでしたから、後進に道を譲り、朝から晩まで新聞を読んだりして、のんびりと過ごされていました。

50代は、人生の終わり。引退までカウントダウン状態。当時はそんな認識が当たり前でしたが、時代は変わりました。私は現在、56歳です。自分が社会人になった頃の定年の年齢を過ぎましたが、その頃と変わらず、今も忙殺されるように毎日を過ごしています。これは60歳になっても変わらないでしょう。

今の50代は、いつまで経っても定年になれない世代です。ずっと定年が延びていますし、年金がもらえる年齢もどんどん上がっています。私たちが70歳になる頃には、75歳になっているかもしれません。

50代といえば、昔は引退する年齢でしたが、今は働き続けなくてはいけない世代に変わっているのです。

しかし、時代は令和になり、定年は延長しても、50代に対する世の中の見方も、50代の人たち自身の意識も、実は変わっていないのではないでしょうか?

生き残り戦略は、キャリアの棚卸しから始まる

50代は、人生の終わり。引退までカウントダウン状態。あなたはそんな認識を持っていませんか? 「もう無理」とか「今さら」などと考えていませんか?

50代になったことで、枯れてしまい、定年まで「逃げ切る」モードに入ってしまう。今もそんな中高年が多く見られます。若い世代は、そういう姿をこう見ています。

「あの人たち、もう変わらないよね」
「だったら早く辞めてもらったほうがいいよね」
「70歳までいてもらっても困るよね」

大きな声では語られませんが、これが黒字リストラの裏側にある企業の本音です。退職金を積んでもいいから、早く会社を辞めてもらったほうがお得。そう判断しているからこそ、早期退職・希望退職という名のリストラが増えているのです。

50代は、人によって大きく差が開いている世代です。経営者や役員、部長など、組織のトップに立ち、高い価値を生み出している人は、リストラの対象になることはないでしょう。

しかし、組織のトップに立っていない人、部下のいない管理職、あるいは部長などの要職であっても成果を出していない人は、危険です。黒字リストラのターゲットは、ハッキリしています。それは「パフォーマンスより給与が高くなっている人」です。

あなたは、高い給与に見合ったパフォーマンスを発揮できていますか?
今でも成長しようと努力を続けていますか?

会社は、「成果」と「成長」を常に求めています。たとえ定年が70歳まで延びても、それができない人に居場所はないのです。

この連載では、黒字リストラ時代に50代のビジネスパーソンがどう生き残っていけばいいのか、これをテーマに具体的なノウハウをお伝えしていきます。

50代は、人生の終わりではありません。新たなスタートを切るべき時期です。まずはキャリアの棚卸しをして、現在の立ち位置を確認してみてください。50代は既に30年という職務経験があるのです。これはすごいことであり、今後の武器にもなるはずです。生き残り戦略は、そこから始まります。

次回に続く

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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