人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

実は中高年の「頑張り」が会社を救う時代が来た!!

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40〜50代が価値を出さなければ、今の日本は立ち行かない

「50代=波平さん」のイメージなのだとしたら、確かに今後の成長を期待するのは難しいかもしれません。波平さんがExcelやPowerPointを使いこなしたり、ZoomやSlackで部下とコミュニケーションをしたりしている姿は想像できませんよね。スマホさえ使えるのか怪しいものです。

でも実際の50代は、そうではありません。時代に適応し、成長している人も多くいます。ましてや40〜50代は、日本の人口の最大のボリュームゾーンです。
生産年齢人口(生産活動の中心にいる人口層のこと。15歳以上65歳未満の人口がこれに該当します)も多く、平均年齢(ほぼ50歳)ど真ん中の世代でもあります。

早期退職・希望退職を実施している企業は、会社の若返りを図っています。人気企業・有名企業は、新卒の応募もたくさんありますから、優秀な若手を選べます。中高年をリストラして、若返りを実現することは十分可能でしょう。

ですが、普通の中小・中堅企業は、若手の採用が難しくなっています。そもそも少子高齢化によって若者自体が激減しているのですから、「若手で若返りをしましょう」というのは、今の日本では非現実的なのです。

若手が少ないのなら、人口のボリュームゾーンである40〜50代が価値を出していかないと、日本の社会は立ち行かなくなります。この人たちを本当にリストラしてしまっていいのか、私は非常に疑問です。

実際の50代は、波平さんではありません。人生100年時代と考えれば、50代なんて、まだ若造です。まだまだ成長を期待できる世代なのです。

給与とパフォーマンスが見合わないのであれば、リストラをする前に、まずは「年収1000万円分の仕事をしてもらうためにはどうしてほしいのか」を正面切って話し合うべきです。年収1000万円の人に1000万円以上の仕事をしてもらえれば、本人だけでなく、会社も上司も後輩も、みんながハッピーなのです。

50代の認識を改め、30代後半の意識を持つ

ただ、それはそれとして、50代になったことで「人生の終わり」のような気分になって枯れてしまっている人がいるのも事実です。

あなたが50代で、なおかつ「50代=波平さん」のような昔のイメージを引きずってしまっているのなら、その認識をアップデートしなくてはいけません。

2021年7月に厚生労働省が発表した2020年の平均寿命は、男性は81.64歳、女性は87.74歳。『サザエさん』の原作が始まった75年前よりも約30年、アニメが始まった50年前より10年くらい伸びています。

平均寿命が伸びているということは、今の50代は元気なのです。定年制度も伸びているのですから、自分たちが20代、30代だった頃の50代とは全然違うのです。50代になったからといって、枯れている場合ではありません。

私たちは70歳まで、あと20年は働くことになるでしょう。「会社にぶら下がろう」「このまま無事に定年を迎えよう」というスイッチの入れ方をしていると危険です。

企業も生き残るのに必死です。60歳の定年までは働けたとしても、65歳、70歳まではいられないように、必ず何らかの手を打ってきます。

「自分たちが頑張らないと、日本はダメになる、衰退してしまう。だから自分たちは、頑張らなきゃいけない世代なんだ」

そんな認識を持って、昔の50代のイメージをリセットしましょう。今の50代は、昔の30代後半。そのくらいの気持ちじゃないと、これからの時代は生き抜いていけません。波平さんのようになるのは、あと20年、30年先の話です。私たちが変化することによって、50代のイメージも変わるはずです。

次回に続く

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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