人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

会社で「暇」を感じているなら、あなたは「リストラ対象」である

相手が望むことを具体的に語れる人は強い

具体的なエピソードを簡潔に語れるスキルは、いろいろな場面で役に立ちます。

例えば、人事の場合、面接の際に「こんなエピソードがありました」とか「こんな面白い人がいてね」と、会社の様子をありありと伝えられる採用担当者は強いです。

具体的なエピソードは、会社の様子がイメージしやすいので、応募者にも会社の魅力がシンプルに伝わり、新卒の内定辞退も少なくなったりします。

それは求職者も同じです。私はクライアント企業の「社長の近くで働く人を募集」という採用活動のお手伝いをしているのですが、自分の経験を具体的なエピソードとして話せる応募者は、自身の魅力が相手に伝わりやすく、経営者のウケもいいです。

逆に、抽象論しか語れない人は、どんなに立派なことを語ったとしても、風景がまったく見えてこないので、だいたい面接で落ちます。

会社で暇な時間が多くなってしまっている人は、リストラに備え、転職についても考えておいたほうがいいでしょう。自身の経験やスキルを端的に伝えることができるエピソードをまとめておけば、転職活動でも活かすことができます。

Getty Images

キャリアの振り返りは、今の会社でも定年後でも役に立つ

キャリアの振り返りは、今の会社でも定年後でも役に立ちます。小ネタのモジュール作りは、キャリアの棚卸しになります。「あ、自分の強みってこういうところだったんだ」と改めて気づくことができるはずです。

自分の強みを仕事で活かすことができれば、成果が上がり、活躍の場も広がったりします。暇ではなくなり、会社にとって必要な人材になれます。

書くだけではなく、口頭で伝えてもいいでしょう。この連載の第15回で 「年を取ってやっちゃいけないのは、説教と昔話と自慢話」とお伝えしましたが、1分で簡潔に話すことができるのなら、昔話もありかもしれません。

「昔はこうだった」という中高年の昔語りも、具体的なエピソードとして簡潔に話すことができれば、若い世代にも興味深く聞いてもらえるのではないでしょうか。

具体的な小ネタは聞いている方も面白いですし、仕事に活かせるネタであれば、後進や会社の役に立てます。

私たちの世代は、60歳や65歳で定年退職しても、その後も何かの仕事をしていく可能性が高いです。「自身の経験値を具体的に話せる」「1分で簡潔に相手に伝えられる」、こうしたスキルは、定年後の仕事探しにも活かせます。

暇になっている人だけに限りません。空いた時間を有効活用して、小ネタのモジュールを書いてみましょう。いろんな場面で、あなたの役に立つはずです。

次回につづく

 

ご感想はこちら

プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

著書

人事はあなたのココを見ている!

人事はあなたのココを見ている!

西尾 太 /
空前のリストラ時代、ビジネスマン人生の明暗を分けるのは、人事の評価である。...
人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準

西尾 太 /
「頑張っている」はもはや無意味。「成果」こそが揺るぎない価値になるこの時代...
出版をご希望の方へ

公式連載