ストレスに強く、自己肯定感が高くなる おばけメンタル

あなたが幸せを感じられないたった一つのワケ

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はじめに

幸せというのは非常に相対的だ。特にメンタルの安定は、人間が感じる幸せの大きさを大きく左右する。
常にメンタルが安定していれば、きっと世の中の無用な争いも消えるだろう。
恋人同士の喧嘩、夫婦の言い争い、同僚との諍い、お局論争、上司の八つ当たり、世界の戦争……。
その無用な争いのほとんどは、個人の社会的役割や思想、大義に由来するのではなく、当事者の虫の居所、つまりメンタルを原因としているのではないだろうか。

これを止められるなら、私はNPO法人でも作って平和のために戦ってやろうかとも思う。もはやマザー・テレサもびっくりの社会貢献活動、現代のナイチンゲールである。

決して終わることのない、その無用な争いを引き起こすメンタルの不安定を、個人で満たすためにはどうすればいいのか?
このお悩みを、今回は解決してみよう。

そもそも、不安と欲求の構造をあなたは知っているか?

前述したお悩みを持つ方々からDMをいただく機会が増えた。最近では、20代~30代の若い人が多い傾向にある。

彼らの言い分はとてもシンプルで、
「何か、幸せなんだが満たされてない気がする」
「自分の今の幸せには、何かが抜けているのではないか」
「同じことをして幸せを味わっているのに、毎回同様の幸せを感じない。飽きているわけではないのだが、なぜか分からない」
などである。

これを聞いて最初に浮かぶのは、「おお!若いね!イイね!」みたいなオジサンとしての感想ではなく、「幸せを阻害する『不安』『欲求』を無視して『幸せ』を求めてしまっている」という違和感。

世に言う「幸せ」というものは、神羅万象すべてを癒す魔法として語られることが多く、「世の中で言う、『幸せ』とはこれだ!」とは断言してくれるが、「幸せを受け止める準備はできているか?」「その『幸せ』は今の自分に対して有効か?」などの深堀った論点にまでは答えをくれない。今の若者たちが悩むこの状況は、チープで簡単な答えが跋扈(ばっこ)するこの情報社会の弊害かもしれない。

ちなみに、私はこの悩みにあたって苦しんでいる人々を、「幸せ迷子」「幸せゾンビ」「幸せを知らないニーチェ」などと呼んでいる。ごめんニーチェ。

しかし、落ち着いて考えてみると、彼らは「幸せ」なのだ。なのに、なぜか空虚。そして不幸せだと感じる。一見矛盾しているようだが、この理由は非常に簡単である。
それを伝えるため、以下に「マズローの欲求5段階説(マズローの法則)」の図を用意した。

ご存じの方も多いと思うが、この図は、アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908~1970)が考案したものである。
念のため初見の方のためにメチャクチャ簡単に解説すると、マズローの法則によれば、人間の欲求には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階があるらしい。

生理的欲求とは、マズローの5段階説の中で最下層(第1段階)の欲求だ。この階層は、食事や睡眠のような人間が生きていくための本能的な欲求を示した階層だが、この欲求を満たしたとしても、人間としては最低限の生命が維持できる程度の幸福であり、何ら幸せではないだろう。
次に安全の欲求。これは身の危険を感じるような状況から脱したいという欲求。心身共に健康、かつ経済的にも安定した環境で、安心して暮らしたいという、人間としてまだまだ当然の域を超えない欲求を指す。
3段階目は、社会的欲求。こちらは集団に所属したり、仲間を得たいという欲求。
4段階目は承認欲求。ここからはかなり現代的だ。他者や社会に対して「所属している集団の中で認められたい」「他者から尊敬されたい」と考えるようになる。文字にすると下世話だが、安全が確保された上で他者とのかかわりが容易になった現代では、最も身近に感じる欲求かもしれない。
最後に自己実現の欲求。これは、自分の人生観・価値観などに基づいて「自分らしく生きていきたい」と願う欲求。これは言わずもがな、現代でも実現できている人は少ない、非常に高貴かつ実現が難しい欲求。

これらはピラミッド構造になっており、下の階層の欲求が満たされることによって、一つ上の段階の欲求を持つようになるという。

そんな話を図にしたのがこれである。

確かに、三日三晩一度も食事できていない状況で、「あ~~~誰かに尊敬されてぇな~」などと俗っぽいことは思わない。まずは飯である。
つまりこの場合、1段階目の「生理的欲求」が満たされていないのにもかかわらず、4段階目の「承認欲求」は先立ってこない。

また、極寒の雪山で野犬に囲まれている緊急事態を目の前にして、隣の恋人から「愛してる」と愛を囁かれても「いや!後にしろや!!」以外の結論はないだろう。目の前でそんな洋画的な感動シーンが入ったら、野犬側も日本語で同じことを言うだろう。野犬側がこの図を持ち出してきそうな勢いである。
このパターンでは、2段階目の「安全の欲求」が満たされていない状況で、4段階目の「承認欲求」のことは考えられないのである。

要はメンタルは、この図における、下の欲求からしか満たせないのである。
同時に、下の不安を差し置いて、上の欲求を満たしても人は幸せにならない。

ここで、冒頭のお悩みに戻ってみる。

実は、それぞれのお悩みの内容をよくよく聞いてみると、大体の人に
「実は、私メチャクチャSNSでは人気者なんですが、借金1000万あるんですよね……」
「私、承認欲求を満たすために美容に精を出していて、二日間絶食しています」
のような、「あなたが満たすべき欲求は、そこからじゃないだろ現象」が起きていた。

この手の人たちに、私は常にこの図を送り、こう伝えることにしている。

「あなたのメンタルが満たされないのは、穴の開いたバケツに水を入れているから。まずは下の穴を塞げ。この図はトイレに貼れ、待ち受け画面にしろ、唱えて眠れ、布教しろ、マズローはマズローさんと呼べ」

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プロフィール

おばけ3号
おばけ3号

作家・コラムニスト&インフルエンサー。1990年生まれ。
X(旧Twitter)にて、フォロワー数10万人超のインフルエンサーとして日常の愉快な話や、人々や社会とのコミュニケーションの関わり合いの手法を発信。聡明かつ鋭い視点と分析力に富んだ意見で、多くの企業・メディア・働く若年男女層の評価を得ている。
その実像は都内のコンサルティング会社に勤務する、現役のコンサルタント。
大手上場企業に対するSNS活用コンサルティングサービスの提供や、SNS活用セミナー登壇など多くの実績を擁する。
2020年より、タウンワークマガジン(リクルート社)へのコラム掲載や、株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーションとのコラボレーション商品の開発販売等を実現し、自著『「お話上手さん」が考えていること 会話ストレスがなくなる10のコツ』をKADOKAWA社より発売。

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