ストレスに強く、自己肯定感が高くなる おばけメンタル

「いつも悩んでいる人」と「一切悩まない人」の決定的な違い

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はじめに

メンタルが安定しない人は、いつも悩んでいる。頭を抱え、膝を抱え、不安を抱え、ありったけの物事を抱えてしまう。
そしてその抱えた物事が爆発するまで、ずっとうつむき、ずっと葛藤し、ずっとメンタルをすり減らしている。
ストレス社会と称される現代では、このような悩みを持つ人々が大多数だろう。

今日は、そんなストレスを祓い、これを読んでくれている皆さんのメンタルを救うべく、とっておきの話をしたい。

アフリカの子どもに学ぶ、不安に立ち向かう術

突然だが、ここで私の旅行のエピソードをお話しさせてほしい。

まだ学生だった頃の話だ。当時、若さゆえに血気盛んで、同時に将来や現在への不安もてんこ盛りだった私は、海外のとある国へ旅に行った。

きっかけは、当時同じ大学に通っていた友人が、突然インドに行く計画を立てたことから始まる。
居酒屋で友人は、「ちょっと俺、自分を探しにインド行ってくる」と謎の遠い目で、インドに馳せた思いを私に語った。
私としては、「なんで日本で生まれて日本で見つからない『お前』が、インドにいるねん!!」と関西人ばりのツッコミを入れたい気持ちをグッと抑えて、友人がインド旅行へ出発するのを見送った。

後日、帰ってきた友人は「インドに自分はいなかった。いたのはゾウ、そしてインド人」と、当たり前のことを私に語った。当然である。落ち度もないのにガッカリされたゾウとインド人に謝ってほしい。
同時に「観光地じゃダメだ。観光地に本当の俺はいない」と、やはり「自分」は海外にいる説だけを提唱し続けていた。

そんな彼の影響を受け、観光地への旅行にマイナスのイメージを持った私は、まったく観光地でない南アフリカ共和国へ旅に行った。
もちろん、観光をしに行ったわけではなく、その国の日常を見に行ったのだ。観光という特別より、生活という日常を見るのが目的だった。理由はない、ただ見たいだけ。そんな学生らしい短絡的な興味先行の旅だった。

空港から乗り合いバスや謎の個人タクシー(バイクで2人乗り)を乗り継ぎ、都市部を抜ける。目的地は、海外NPO法人の一員として新興国でゴミ処理技術を教えている友人の家だった。
その道すがら、郊外に差しかからんとするところで、突然道路の舗装がなくなり、「The 土!」と言わんばかりのデコボコだらけの道になった。
日本のような道路上の白い線などもそこには見当たらず、あったのは南アフリカの広くて赤い大地と遮蔽物のない大きな空だけだった。開放的というよりも、子どもが描いたイラストのような、単純でシンプルな世界に圧倒されながら私は笑い、同時に車酔いに悩みつつアフリカの洗礼を受けた。

そんな道のりを抜け友人宅にたどり着くと、地域の街並みを見て回るため散歩を始めた。
そこでとある少年に出会った。
年の頃は、15ぐらいだろうか。発育は良く既に170㎝はあるが顔は幼く、身体はやせ細っている。
そんな彼は、私が手に持っていたカメラをまじまじと見つめ、友人が少年に「カメラは初めて見るのか?」と話しかけたことから会話は始まった。

当時のアフリカは、一部の地域を除いて、私たちの想像よりもずっとIT化が進んでおり、少年は「馬鹿にするな」と笑いながら答えた。
聞けば、少年は近場のゴミ捨て場に転がるスクラップを集めて鉄くずとして工場に売り、その金で生活しているという。
他にもいくつか現代的な仕事もしたことがあるというが、近場で一番金になる仕事がそれだから、それをやっているという。15歳にして勤続3年。社会人経験は私よりも上だった。

そんな少年に、私は友人の通訳を介してぼんやりと尋ねた。
「将来に不安はないのか?」
少年は、2秒ほど目を丸くしたが、はにかんだような顔でこう答えた。
「あるよ」
私は続けた。
「不安に思う気持ちをどう処理している?」
少年は少し困ったようにまた数秒の間を置いたが、今度は自信を持った笑顔で私に答えた。
「18歳まではこの職業をやるって決めたんだ。だからもう、18歳まで将来を考えることはない。毎日どう鉄くずを集めるかしか考えていない。それ以外は、考えない。決めたんだ。不安など入る余地はない。なぜなら、決めたからだ」
最後、何度も彼は繰り返すように自身の決意を私に伝えた。私に衝撃をもたらしたのは、その言葉もそうだが、何より彼の目だった。
その目にあったのは、圧倒的な強度の、不安に立ち向かう決意だった。

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プロフィール

おばけ3号
おばけ3号

作家・コラムニスト&インフルエンサー。1990年生まれ。
X(旧Twitter)にて、フォロワー数10万人超のインフルエンサーとして日常の愉快な話や、人々や社会とのコミュニケーションの関わり合いの手法を発信。聡明かつ鋭い視点と分析力に富んだ意見で、多くの企業・メディア・働く若年男女層の評価を得ている。
その実像は都内のコンサルティング会社に勤務する、現役のコンサルタント。
大手上場企業に対するSNS活用コンサルティングサービスの提供や、SNS活用セミナー登壇など多くの実績を擁する。
2020年より、タウンワークマガジン(リクルート社)へのコラム掲載や、株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーションとのコラボレーション商品の開発販売等を実現し、自著『「お話上手さん」が考えていること 会話ストレスがなくなる10のコツ』をKADOKAWA社より発売。

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