リーダーは“空気”をつくれ!

「安心感」を作り出すリーダーのチームは成功し続ける

2017.08.04 公式 リーダーは“空気”をつくれ! 第4回
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チームの成功パターンとして見出された「心理的安全性」

皆さんは「心理的安全性」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。もともとは心理学用語ですが、米IT大手のグーグルが、より生産性を高める働き方をデータ分析から見つけ出そうという取り組みを行い、成功するチームの共通項として見つけ出したことで話題になりました。

この「心理的安全性」とは、「他者への心遣いや同情、配慮や共感」などを指し、成功するチームにはメンタルな要素が重要であることを示しています。私がここから思い出すのは、二人のあるリーダーのことです。性格も行動も正反対の二人でしたが、それぞれのチームを常に成功に導いており、そこに「心理的安全性」があったことは間違いありません。今回はこの二人の例から、リーダーとしてチーム作りをしていくうえで、とても大切なことをお伝えしたいと思います。

丸投げしないトップダウンのリーダーが作り出す安心感

一人目のリーダー・Aさんは、いかにもリーダー的な雰囲気を持ち、何事にも積極的な明るいタイプの人です。チームのまとまりを重視しており、ミーティングをよく行います。その基本的な進め方は、メンバーが今の仕事の進み具合や問題点などを報告し、それに対してAさんが指示を出す形です。メンバーからの意見は聞きますが、最終的に判断して決めるのはAさんです。典型的なトップダウンのスタイルです。

Aさんは、実際に仕事をしているメンバーの様子をよく観察しており、何か気になることがあれば、メンバーにすぐ声をかけます。仕事の進め方で行き詰まっていれば状況を聞いてアドバイスをし、体調が悪そうな人や疲れていそうな人がいれば、早く帰らせたり業務調整をしたりします。

もちろんメンバーのレベルによってかかわり方は変わるので、任される範囲が広い人から、手取り足取り指示される人までいます。しかし、とにかくメンバーに仕事を丸投げせず、自分も一緒にかかわり続けます。また、チームでの食事会や飲み会、レクリエーションのようなイベントもよく実施します。これらはすべて、チームメンバーの距離感を近づけるための取り組みです。

こんなAさんのことをメンバーたちに聞くと「常に仕事ぶりを見ていてくれる」「指示が的確」「何でも相談できる」など、安心感を抱いていることがわかります。いかにもリーダーらしいリーダーが、メンバー一人ひとりに寄り添って細かなマネジメントをすることで、チームはいい形で回っています。

いざという時に問題を解決してくれる「スペシャリストのリーダー」

もう一人のリーダー・Bさんは、寡黙(かもく)でちょっと職人気質なところがある、あまりリーダーらしく見えない人です。威圧感は全くなく、どちらかといえば地味でおとなしい感じの人で、自分から進んで前に出ていくようなタイプではありません。ただし現場の実務には精通しており、かなり専門的なことや技術的なことでも、聞けばわからないことはほとんどありません。まさに「スペシャリスト」といえるリーダーです。

Bさんの基本的な仕事の進め方は、メンバーたちのやりやすいように、それぞれのやり方に任せるというスタイルです。仕事の分担であったり、節目の進捗確認であったり、最低限のマネジメントはしますが、それ以外のことは基本的にメンバーにお任せとなっています。一見すると丸投げ、放任のように見えますが、実際にはそうではありません。リーダーが実務に長けたスペシャリストなので、いちいち細かく見ていなくてもメンバーたちの仕事の状況はしっかり把握しています。

また、普段はメンバーが個々に仕事を進めていることが多いのですが、チームとして何か決めなければいけない時には、必ずみんなで話し合って決めます。Bさんがトップダウンで指示をしたり、一部の関係者だけで決めたりということはしません。常にメンバー全員の意見を聞き、話し合って決めるという合議制をとっているのがBさんの特徴です。

このBさんのリーダーとしての真骨頂は、チームが何かしらのトラブルに見舞われた時に発揮されます。この時に限ってBさんは実務の先頭に立ち、メンバーに指示を送りながら対応を進めます。そして確実に火を消します。おそらくBさんの中ではそういうことが起こり得るという想定があり、もしもの時の準備があるのでしょう。

またBさんは、トラブルやミスがあっても、決してメンバー個人を責めません。話を聞いて指示を出し、一緒に実務作業もします。もちろん反省はしますが、あくまでチームとして将来に活かすということで、やはり個人を責めることはありません。ですから、このチームのメンバーは、自発的にBさんによく報告、相談をします。ミスを隠しても結局Bさんに迷惑をかけるだけで、そうならないためには、早めにいろいろアドバイスをもらっておいた方がよいことを知っているからです。

メンバーにとってこのチームは、仕事を任されることで自分の能力を高めることができ、もし失敗しても許される環境になっているので、それがメンバーの安心感につながっています。

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プロフィール

小笠原隆夫
小笠原隆夫

ユニティ・サポート代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社代表取締役社長

IT企業で開発SE職を務めた後、同社で新卒中途の採用活動、人事制度構築と運用、ほか人事マネージャー職などに従事。二度のM&Aでは責任者として制度や組織統合を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表に。以降、人事コンサルタントとして、組織特性を見据えた人事戦略や人事制度策定、採用支援、CHRO(最高人事責任者)
支援など、人事・組織の課題解決に向けたコンサルティングをさまざまな企業に実施。
2012年3月より「BIP株式会社」にパートナーとして参画し、2013年3月より同社取締役、2017年2月より同社代表取締役社長。

著書

リーダーは“空気”をつくれ!

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