リーダーは“空気”をつくれ!

リーダーが目指すべき
「雰囲気のよさ」の本質

2017.09.01 公式 リーダーは“空気”をつくれ! 第6回
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「雰囲気がいい」のに業績が上がらないチーム

自分たちの会社やチームのことを、「雰囲気がいい」と表現することがあります。例えば、社員採用の面接で会社の志望動機を質問すると、「会社の雰囲気がいいから」という答えは意外に多いですし、会社やチームの長所のアピールとして「雰囲気がいい」「仲がいい」という言い方もします。どんな人でも、「雰囲気がいい」と言われる中で仕事をしたいのは当然ですから、こういう話が多く出ること自体は納得できるものです。

ただ、この「雰囲気のよさ」には、いろいろな意味が混ざっています。そもそも「雰囲気のよさ」というのは個人の主観であって、その捉え方は人によって違います。また、そのチームが置かれた状態によって、同じようなことであっても、ある場面ではチーム力を上げ、ある場面では逆効果になってしまう場合もあります。今回はある会社での例を通じて、リーダーが意識しなければならない、「雰囲気のよさ」の本質についてお伝えします。

ある会社の営業チームでのことです。会社全体で挙げられたいくつかの経営課題の状況把握のため、私は社内各署のチームリーダーにヒアリングをおこなっていました。その時にこの営業チームのリーダーがチームの様子を評した言葉は、「うちのチームはみんな仲がよくて雰囲気もいいんです」というものでした。一見確かにその通りで、メンバーはみんな明るく会話をしており、暗い感じやギスギスした感じはまったくありません。

そこで、もう少し細かく聞いてみると、このリーダーはメンバー同士が「話しやすい」という雰囲気が大事だと思っており、「お互いができるだけフラットな関係で、何でも言い合える雰囲気を意識して作っている」と言います。同じことをメンバーに聞いても、「仲がいい」「話しやすい」という言葉が出てきます。このリーダーが意識して作った雰囲気は、確かにチームに浸透しているようです。

ただ、この営業チームの業績をみると、あまりいい状況ではありません。会社全体としては、厳しい環境の中で少しずつ業績を伸ばしてきていますが、このチームだけは目標の未達成が何年か続いており、売上や利益もほとんど停滞しています。スポーツで言えば、ずっと負けが込んでいるようなチーム状態で、普通はそれでチームの雰囲気がいいはずはないのですが、このチームはリーダーからもメンバーからも、そんな様子はうかがえません。いつも「明るく」「仲よく」「フラット」な感じを醸し出しています。

観察して見えた「雰囲気のよさ」の勘違い

明らかにこの営業チームの「雰囲気」と「結果」には大きなギャップがあり、その理由をつかむために、私はしばらくの間このチームの仕事ぶりを観察させてもらうことにしました。そこから徐々に見えてきたのは、こんなことでした。

まず、一見した雰囲気は確かに明るく、話しやすく、お互い仲がよさそうで、ギスギスした感じはまったくありません。そこでメンバー同士の会話の内容を聞いていると、仕事に関わる会話の頻度が明らかに少ないのです。私から見ると、どうでもいいような雑談のたぐいが多く、その手の話をいつまでもダラダラと続けながら、その合間に何となく仕事をしているように見えました。

また、リーダーをはじめとして、その様子を周りの誰かが注意することも、私が見ている中では一度もありませんでした。私の目から見ると、「明るさ」「話しやすさ」というよりも、「軽さ」や「ルーズさ」、悪い意味での「子どもっぽさ」、そして何より「ゆるんだ空気」といったものを強く感じました。これは仕事をする場の雰囲気としては、好ましいものではありません。

このことをリーダーに直接伝えると、実はリーダー自身もそう感じていたことがわかりました。しかし、リーダーは今どきのチームの雰囲気というのはこういうものだと思い、それを壊すことは好ましくないと考えて、今のような振る舞いを許していたそうです。メンバーから反発されて、チームがまとめにくくなるのを恐れていた部分もありました。

そこで、まずこのチームに対して私が実施したのは、毎日定例で実施していた業務ミーティングのやり方を変えることでした。今までは、日常のゆるい雰囲気を引きずって、ミーティングの最中でも雑談めいた話をしたり、業務上の情報交換がおざなりになっていることがありました。また、リーダー自身もそれを指摘したり注意したりは、ほとんどしていませんでした。

私はそこを改め、この定例ミーティング中は業務に関する情報交換に集中することを宣言し、必要な指示命令や場合によっては厳しい指摘といったことも、この中でまとめておこなうようにしました。その代わり、日常業務中の雰囲気にはあえて口出しをしないようにしたのです。

この取り組みを始めた当初は不満を漏らすメンバーもいましたが、そういう声はすぐになくなっていきました。業務中の日常会話を制限すれば、それには必ず反発が出るでしょう。しかし、会議という公式の場で、目的に沿った議論だけに徹するというのは当然のことで、それくらいはメンバーもわかっています。そこに反論の余地はありません。そして、一日に一度「仕事に徹しなければならない引き締めの場を作った」ことで、日常的な雰囲気も徐々にですが、当初感じられていた「ゆるさ」は薄れ始めてきました。

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プロフィール

小笠原隆夫
小笠原隆夫

ユニティ・サポート代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社代表取締役社長

IT企業で開発SE職を務めた後、同社で新卒中途の採用活動、人事制度構築と運用、ほか人事マネージャー職などに従事。二度のM&Aでは責任者として制度や組織統合を担当。
2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表に。以降、人事コンサルタントとして、組織特性を見据えた人事戦略や人事制度策定、採用支援、CHRO(最高人事責任者)
支援など、人事・組織の課題解決に向けたコンサルティングをさまざまな企業に実施。
2012年3月より「BIP株式会社」にパートナーとして参画し、2013年3月より同社取締役、2017年2月より同社代表取締役社長。

著書

リーダーは“空気”をつくれ!

人気ビジネスWeb連載からの書籍化。リーダーにとって一番大切な“チームの空気”のつくり方を、22のリアルな実例を交えて紹介するリーダーシップ本の...
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