小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

1点の重みをかみしめながら、
交流戦で再び勢いをつけるために

2017シーズンまさかの「96敗」から、昨シーズンセリーグ2位という快進撃を見せたヤクルトスワローズ。ドン底のチームを見事立て直した小川監督は今年、「KEEP ON RISING~躍進~」をスローガンに掲げ、さらなる飛躍を目指す。本連載では2018年シーズンに続き、インタビュアーにスポーツライター長谷川晶一氏を迎え、「躍進」を成せる強いチームをつくるにはどのような采配と決断が必要なのか――小川監督へのタイムリーなインタビューを通じて組織づくりの裏側に迫っていく。

(インタビュアー:長谷川晶一)

泥沼の16連敗の中で、
指揮官が考えていたこと

――5月中旬から6月上旬にかけて、リーグワーストタイ記録となる16連敗を喫しました。開幕直後は単独首位となったり、その後も貯金生活が続いたりしましたが、一転して最下位に沈んでしまいました。

小川 5月20日頃までは連敗が続いていても、何とか貯金のある状態でしたが、その後は投打の歯車がかみ合わず、苦しい日々が続きました。それでも、「故障者が多い中で、みんなよく頑張っているな」という思いもあったのですが……。連敗当初に不安に感じたのは「負け方が悪いな」という思いが強かったですね。

――「いい負け方」、「悪い負け方」とは具体的にはどんなことなのですか?

小川 打線が打てずに点数が取れなくて負ける試合というのは、まだ気持ちを切り替えることができるんです。やはり、いい投手が相手のときには、そう簡単に点数を取ることは難しいですから。でも、ある程度打線が点を取っているのに負ける試合が続くと、それは問題ですし、「悪い負け方」だと思いますね。

――確かに,連敗がスタートした5月14日は4対9、15日は7対9、あるいは18日は6点を奪ったものの敗戦。8対10で負けた試合(26日・中日戦)も、7対8で敗れた試合(28日・広島戦)もありました。

小川 点が取れなくて負けるケースは、選手を入れ替えたり、足を絡めた作戦を考えたり、まだ手の打ちようがあるんです。でも、いくら点をとっても、それ以上に点数を取られるような試合が続くと、手の打ちようがなくなります。また、点を取られるときは最少失点で切り抜けたいところなんですけど、つい大量失点を喫するケースも多くありました。一度打たれ出すと歯止めが利かなくなるケースが目立ちました。

――それはどのように対策を立てればいいのでしょう?

小川 僕も含めて、バッテリーの考えとして、「1点を惜しんで複数失点を喫することだけは避けよう」と考えることが大切になってくるのかな、という気がしています。現状、先発投手が早々に降板する試合が続いて、中継ぎ陣の登板過多が問題となっていますけど、基本は「何としてでも、一人ひとり打ち取っていく」ということしかないんだと思います。

――確実に「一つ一つのアウトを重ねていく」となると、継投の重要性が、より増してきますね。

小川 先発投手陣には少しでも長いイニングを投げてほしいというのが本音です。でも、本音はそうでも、実際の試合においては、必ずしもその通りにはならないものです。クオリティスタート(QS・先発投手が6イニング以上を投げて自責点3以内に抑えること)も大切だけれど、「6回投げてくれるのならば、4失点でも仕方ない」という心の余裕が必要になってくるんじゃないかと考えています。

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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