小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

チームの世代交代と新陳代謝、
指揮官が村上選手に願うこと

レギュラーポジションは
与えられるのではなく、自らつかむもの

――以前、関根さんにお話を伺ったときも、「当時は三振を恐れて、選手が自分のスタイルを見失ってしまうことが嫌だった」と言っていましたが、その点は小川監督も同様なのですね。一方、関根監督の後を受けた野村克也監督は「三振を減らして、バットに当てさえすれば、たとえ凡打であっても、ヒットになる可能性も高くなる」と、「三振を減らせ」という指導も徹底されていました。

小川 やっぱり、選手にはそれぞれ段階があるのだと思います。村上は今年2年目ですけど、昨年は「ファームでじっくり鍛える」という方針だったので、彼にとって実質的には今季が1年目みたいなものです。この段階で、いろいろなことを注意、指摘して小さくまとまることは避けなければならないと、僕は考えます。その上で、彼がもっと経験を積んだ後に、野村監督の言われることを意識すればいいと思いますね。

――選手のキャリア、能力に応じて、接し方を変える必要があり、今の村上選手に対しては「小さくまとまること」こそ、避けねばならないということですね。

小川 ちょっと古い話になりますが、関根監督が就任する前は土橋(正幸)さんが監督を務めていました。土橋さんは三振をものすごく嫌う方で、僕も経験がありますが、三振をすると厳しく叱責されました。メンタルの強い選手ならそれでも平気なのでしょうけど、僕の場合は、それによって萎縮する部分もありました。挙句の果てには、三振を怖がるあまり、ストライクを平然と見逃したり、ボール球に手を出して空振りしたりして、結局、三振が多くなってしまったという経験がありました。僕はそういう弱いところがあったので、上に行くことができなかった。村上はそんな性格ではないので、少々のことを言っても大丈夫だとは思いますけど、今はまだ結果を気にせずにのびのびとプレーしてほしいと思っています。甘い考えかもしれないですが。

――一方、昨年も今年も「開幕スタメン」を勝ち取った廣岡大志選手については、どのような考え方で接しているのですか?

小川 プロ4年目を迎えた廣岡に対しては、当然村上とは異なる接し方が必要だと思います。とはいえ、まだまだ廣岡に高いレベルを期待するのも、彼には酷なことかもしれません。西浦が故障したことで、期せずして廣岡にチャンスが巡ってきたけど、彼はそのチャンスを自分の手でしっかりとつかんだとは言えません。レギュラーは与えられるものではなく、自分でつかむもの。そういう点では、もっともっと廣岡は頑張らなければいけないと思います。

ご感想はこちら

プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

出版をご希望の方へ

公式連載