小さな幸せの見つけ方

差し入れは「気持ち」を受け取るもの

2018.06.04 公式 小さな幸せの見つけ方 第21回
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表面を支えるもの

日常生活において、ときおり、差し入れというものを頂くことがあると思います。私自身は、勤務している職場でお客さんから差し入れをいただくことがあります。小さな職場で社員もさほど多くはいませんが、みんなが食べられるようにと人数分のお菓子などを用意して下さる方が多く、とても有難く頂いています。

たいていは、誰から頂いたものか置きメモが貼られ、お茶ができる共有スペースに置かれます。みんな各々のタイミングで休憩時にお茶と差し入れのお菓子を食べます。私の職場の同僚はみんな甘党ということもあって、嬉しそうに糖分補給をしながら、その日の差し入れの評価をします。絶賛する人、特に何も言わない人、辛口の酷評をする人、好き勝手言う人、さまざまです。

実は、私はこの場面を目にするたびに、何か腑に落ちない思いを持っていました。しかし、おばあちゃんからのみかんのおかげで、それがなぜなのか思い出すことができました。

それは、私もついつい差し入れの「物」に目が奪われてしまい、よく忘れてしまうのですが、まず差し入れを目の前にしてすべきことは、差し入れをした方はどんな気持ちで持ってきて下さったのかを考えることだったのです。きっと、「喜んでもらいたい」「日頃お世話になっているので、せめて何か言葉ではないものでお礼を伝えたい」など、いろいろな気持ちをもっておられることでしょう。

ただ一つ言えることは、受け取る側の方のことに好意を持っていなければ差し入れをすることはないということです。自分が差し入れをする立場になった場合を考えて下さい。大切な自分のお金を使ってまで何かを購入するのですから、それ相応の気持ちがなければ買わないはずです。このことを理解すれば、何よりも最初に湧き上がる思いは、感謝の気持ちのはずです。

頂いたものに対して好き勝手言う人もいますが、そういう方は本当の意味で差し入れをしたことがないのではないでしょうか。だから、差し入れをする人の気持ちがわかりにくいのです。大事なのは、受け取った「物」ではなく、差し入れをして下さった人の気持ちを受け取ることなのです。

おばあちゃんのみかんに、改めて表面的なものではなく、その裏にある想いを汲み取ることが大切であることを思い出させてもらいました。

表面的なものではなく、その表面を支える想いに気がつけるということは、人の優しさの温もりに目覚めた生活へと導いてくれます。そのためには、物事に対して好き勝手口にする前に、相手の気持ち考える習慣を身に付けることが必要になるでしょう。きっとあなたの言動は自ずと変化してくるでしょう。

 

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

1982年、山口県生まれ。僧侶でありながら講演や執筆、通訳や仏教家関係の書物の翻訳なども手掛け、活動の場を幅広く持つ僧侶。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。

ビジネスマンの悩みを仏教の観点から解決に導く著書『端楽(はたらく)』や、英語に訳せない日本語の奥深さを解いた『訳せない日本語』(ともにアルファポリス)が好評のほか、国内外を問わず仏教伝道活動を広く実践している。

著書

小さな幸せの見つけ方

「日常の中にある、普段は気づきにくい“幸せ”を再発見すること」をテーマとした、著者自身の実体験による24話のエッセイ。人間にとって本当の“幸せ”...

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