ビジネス駆け込み寺

自分で出した指示を忘れ、二度手間になってしまう先輩に困っています

2016.02.15 公式 ビジネス駆け込み寺 第10回

自分で出した指示を忘れ、二度手間になってしまう先輩に困っています。

私は飲食店で働く、まだ1人前とはいえない人間です。

まだまだ覚えなくてはいけないことはたくさんありますし、1人前になるまで文句など言う気はなく働いているのですが、困ったことが1つだけあります。

今の私は自分の仕事をしながら、先輩から突然指示が飛んでくることが多々ある状況です。

もちろんそれは当たり前のことですが、忙しいせいかその先輩は、自分で私に出した指示を忘れてしまうのです。

頼まれたことをきちんとメモを取ってその通りに私がやっても、その先輩は「そんなこと言っていないよ」と言います。

メモを見返して説明しても、「そんなの状況を見て自分で判断しろよ」と言います。

つまり、ムダなやり直しが多々発生するのです。先輩が自分で出した指示を忘れ(本当は覚えているのかもしれませんが)、その結果私がムダな時間を費やして「二度手間」になってしまうサイクルに困っています。

この状況を何とかしたいのですが、私はどう行動するべきでしょうか?

飲食店勤務 / 24歳 / 男性

まずは相手をよく理解することから

飲食店で日々頑張って働かれているとのこと、本当にご苦労さまです。私はいつも飲食店で食事を頂くとき、ウエイターさんをはじめ、厨房で料理を作って下さっている方が、一度にいろんなことに対応し、且つスムーズに対処されている光景を目にしては頭が下がる思いで一杯です。

普段、私が見ることができるのは、当たり前のように注文した料理が自分の目の前に届き、それを食べるという表面という名の一側面でしかありません。しかし、その側面には料理を美味しく食べてもらうための心遣いや工夫が散りばめられており、それらを維持するために、裏側というもう1つの側面では、あなたを含め多くの方が必死に働かれているのだと思うと、本当に感謝の念に堪えません。
いつもありがとうございます。

さて、あなたのお悩みを読んでみると、どうも問題は仕事の辛さというよりは、先輩との人間関係にあるようですね。きっと先輩から矛盾したことを言われたり、理不尽な態度をとられたり、歯を食い縛って頑張っていらっしゃるのではないでしょうか。気を病むこともあると思います。どうか肩の力を抜いて、私の声に耳を傾けて頂ければ幸いです。

極論を言うと、これは時間をかけて先輩とのコミュニケーションを改善し、上手に意思疎通が取れるようにすることが重要になると思います。仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切って行動することができれば、こんな楽なことはないのですが、現実として人の気持ちや行動はそう単純ではありませんよね。

あなたも先輩も、さまざまな感情を持つ人間です。ときとして機嫌がよければ、悪いことだってあります。それによっては、矛盾したことを口にしたり、酷い態度を取ってしまうこともごく自然なことです。
しかし、その相手が自分の仲間意識の中にいる人であったら、理解してあげようという思いも起こるはずです。だからこそ必要なのが、日頃からのコミュニケーションなのです。

最初に自分から変わってみましょう

今回、私があなたにご紹介したい言葉は「和顔愛語(わげんあいご)」というものです。これは漢字の通り、和やかな顔と愛のある優しい言葉を意味します。これを先輩に実践し続けてみて下さい。

人というのはおもしろいもので、大抵の場合、優しくされたら相手に優しさを返すものです。もちろん、すぐには効果が表れないかもしれませんが、あなたが根気よく「和顔愛語」を実践することで、少しずつですが先輩も変化してくると思います。

そうする中で先輩との心の距離を少しずつ詰めていって下さい。例えば、雑談したり、ご飯を食べに行ったり、飲みに行ったり。そうすれば、最終的にあなたは先輩が何も言わなくても、先輩が仕事現場で今何を求めているのか分かったり、先輩の言うことに臨機応変に対応できるようになると思います。おそらく先輩もあなたと同じ道を歩んで来られたはずです。つまり、先輩のさらに先輩にあたる方からさまざまな指導をされたことだと思います。そのような苦労話を聞けるような機会などあると、あなたの仕事のモチベーションもさらに向上すると思います。

しかし、まずは「和顔愛語」の実践です。正直、これは漢字のイメージから受取れるほど、柔らかく優しくはない道ではありますが、これがあなたの現状を改善する第一歩だと思います。状況を変えるためには、まず自分が動かなければ何も変化は生まれません。どうかあなたが飲食店で一人前と呼ばれるようになるための糧だと思って、頑張ってみて下さい。

あなたによって、美味しい料理をこれからも多くのお客さまに届けられることを、心より願っております。

協力:寺子屋ブッダ

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プロフィール

大來尚順
大來尚順

浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家/翻訳家

1982年、山口市(徳地)生まれ。龍谷大学卒業後に渡米。米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演・メディアなどの活動の場を幅広く持つ。2019年、龍谷大学 龍谷奨励賞を受賞。著書に『あなたは、あなた。』(アルファポリス)『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社) 『小さな幸せの見つけ方』(アルファポリス)など多数。

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