学習性無力については、その後、研究が進んでいます。
2016年には、マイヤーとセリグマン自身が従来の説明を修正しました。
大事なのは単に「無力感をなくすこと」ではなく、「自分の行動で状況を変えられる」というコントロールの経験だというのです。
これを知ると、少し救いがあります。
だからといって、
もっと前向きに考えよう。
勇気を出して声を上げよう。
とは思いません。
言っても変わらない会社は、本当にあります。
変えられない上司もいます。
どうしようもない顧客も、普通にいます。
ならば、変えられないものを無理に変えようとしなくていい。
代わりに、「この中で、自分が動かせるものは何だろう」と探してみる。
会社の方針は変えられなくても、自分のチームのやり方は一つ変えられるかもしれない。
上司の性格は変えられなくても、伝えるタイミングや相手は変えられる。
顧客が無理を言うことは止められなくても、どこまで引き受けるかは決められるかもしれません。
誰に相談するか。
何を記録しておくか。
どこまでは引き受け、どこからは断るか。
それでもどうにもならないなら、距離を置く、異動する、場所を変えるという選択もあります。
大きく状況をひっくり返す必要はありません。
「どうせ何をしても変わらない」という感覚の中に、
ここは自分で決められる。
そんな場所を一つ取り戻す。
たぶん、それくらいでいい。
大人になると、怒らなくなります。
正確には、怒っても仕方がないことが分かるようになる。
それは経験から身につけた、大事な力です。
全部に反応していたら、仕事なんて続きません。
ただ。「まあ、いいか」のあとに、妙な重さが残るなら。
本当は割り切れているのではなく、
「どうせ何をしても変わらない」
の方へ少し近づいているのかもしれません。
そんなとき、大きな何かを変えなくてもいい。
今日の仕事の中で、まだ自分で決められることは何だろう。
そこが一つ見つかるだけでも、
「どうせ」の中に、少し隙間ができる気がします。