ちゃんと働いているのに、なぜかずっとしんどい

「どうせ無駄」「言っても変わらない」――職場で昔ほど怒らなくなった人の心に蓄積される深刻な影

小さな主導権を取り戻す

学習性無力については、その後、研究が進んでいます。
2016年には、マイヤーとセリグマン自身が従来の説明を修正しました。
大事なのは単に「無力感をなくすこと」ではなく、「自分の行動で状況を変えられる」というコントロールの経験だというのです。

これを知ると、少し救いがあります。
だからといって、
もっと前向きに考えよう。
勇気を出して声を上げよう。
とは思いません。
言っても変わらない会社は、本当にあります。
変えられない上司もいます。

どうしようもない顧客も、普通にいます。
ならば、変えられないものを無理に変えようとしなくていい。
代わりに、「この中で、自分が動かせるものは何だろう」と探してみる。

会社の方針は変えられなくても、自分のチームのやり方は一つ変えられるかもしれない。
上司の性格は変えられなくても、伝えるタイミングや相手は変えられる。
顧客が無理を言うことは止められなくても、どこまで引き受けるかは決められるかもしれません。

誰に相談するか。
何を記録しておくか。
どこまでは引き受け、どこからは断るか。

それでもどうにもならないなら、距離を置く、異動する、場所を変えるという選択もあります。
大きく状況をひっくり返す必要はありません。
「どうせ何をしても変わらない」という感覚の中に、
ここは自分で決められる。
そんな場所を一つ取り戻す。
たぶん、それくらいでいい。
大人になると、怒らなくなります。
正確には、怒っても仕方がないことが分かるようになる。
それは経験から身につけた、大事な力です。
全部に反応していたら、仕事なんて続きません。

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ただ。「まあ、いいか」のあとに、妙な重さが残るなら。
本当は割り切れているのではなく、
「どうせ何をしても変わらない」
の方へ少し近づいているのかもしれません。

そんなとき、大きな何かを変えなくてもいい。
今日の仕事の中で、まだ自分で決められることは何だろう。
そこが一つ見つかるだけでも、
「どうせ」の中に、少し隙間ができる気がします。

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プロフィール

三宮孝太
三宮孝太

作業療法士・修士。北海道の急性期病院で23年、のべ5万人の「働く人」のリハビリに関わってきた。働きながら身体を壊した人、心が動かなくなった人、彼らの人生に何度も伴走するうちに、なぜ真面目に働いている人ほどしんどさを抱え込んでしまうのかという問いに直面する。それをきっかけとして2026年、株式会社DIALOGを設立。企業の健康経営支援と、個人のコンディションを整えるウェルネス事業を通じて、「働きながら、自分を取り戻せる社会」を目指す。noteでは「3ちゃん|ごきげんナビゲーター」名義で、「しんどさ」をほどく言葉を日々綴っている。

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